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今夜は満月だ。
ぼくは境内に、外用のテーブルを準備する。
夏祭りでも使った、椅子とテーブルが一体になっているものだ。
美子が拭いている間に梨を切ってぶどうを洗い、お皿に並べる。
「おーい、お酒買って来たぞ」
護が帰って来た。
「美子ちゃんも準備終わってたみたいだ」
「そうかい、ありがとう」
ぼくは受け取った日本酒を冷蔵庫に入れた。
「少し休んだら手伝ってくれ」
「あぁ、いいけど…後、何をするんだ?」
「…うぅーん…もうないなぁ…」
護はおかしそうに笑う。
「まぁ、とにかく外に出よう」
「あぁ、そうだな」
外に出ると、美子が椅子に座って待っていた。
「あー、コマ兄、護兄ちゃん、遅いよー」
「ごめんごめん」
椅子を見て思った。
「座布団も準備するか」
しばらくすると、女神様が帰って来た。
「ごめん、遅くなったね」
今日は神様たちの定例会議だった。
「来月、誰が出雲に行くか話し合い長引いたのよ」
昔はみんな行ってたらしいが、最近は町内から大体4〜5名といったところなのだ。
「みんな結構行きたがるのよね」
私は断ったけど、と女神様は説明を締めくくるのだった。午後6時。
みんなで集まって、静かに乾杯。
「季節の果物ってすごく美味しい」
女神様はとても喜んでくれている。
「このお酒もいいお酒ね」
美子はぶどうを食べながら聞いた。
「皮って食べられないのかな?」
「食べようと思えば…まぁ…」
「じゃあ、まぁいいや」
そういうと皮を捨てた。
「見え始めたぞ」
護が東の空を指差して言った。
大きくて丸い月が見える。8時を過ぎると辺りはすっかり真っ暗だ。
月はずいぶん高く登り、虫の声が聞こえる。
「きれいねぇ」
女神様がうっとりと言う。
静かに、美しく秋の夜は更けていく。