テラーノベル
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第9話
私が柑橘の香りの紅茶を注いでいると裏の部屋から魔導電話が鳴った。
私は、ポットを置いてカップとソーサーをお客さんの前に置いてから魔導電話を取った。
「リナ。聞こえる?」
その声はマリーさんだった。
「はい」
「そう。少し交渉が進まなくてね……もうちょっとかかるわ」
「そうなんですね。今、ニルスさんを待ってる人が来たんですけど心当たりはありますか?」
「え? ニルスが……何か言ってたような気もするけど……」
マリーさんって少し抜けてるんだよね……
「そうですか……というか、ニルスさんが帰ってきてないんですけど……そこの話は聞いていますか?」
「いいえ。全く……」
え……ニルスさんが何も言わずに遅れるって……心配だな……
「少し、様子を見に行った方がいいですかね……?」
「えぇ。でも、お客様がいるのでしょう? それなら、接客を優先しなさい」
そうだよね……
「はい。分かりました。失礼します」
私は、お菓子を片手に客室へ戻った。
「ただ今戻りました」
「あぁ。この紅茶いい香りだね。楽しませてもらったよ。ありがとう。」
もう、おかわりは要らないってことかな? 知らんけど。
でも、最後に『おかわりをいただけるかな?』って付け加えなかったから、合ってるよね……
「えぇ。あ、申し遅れました。店番を務めているセリーナです。本日は、ニルスさんにどのようなご要件で、いらしたのですか?」
……多分合ってるはず。分からないよ。
こんな挨拶とかやった事というより、本でも読んだ事も無いし。
「狙われている可能性があるって小耳に挟んでね……君が、拐われた本人かな?」
え? ニルスさんが、その事を……
「はい」
「話を聞きたいのだが……どんな人だったのか覚えているか?」
どんな人って……何だか本来の、姿を隠してたように魔力を固めてたんだよね……
それと、度々声が変わってたような……分からないや。
「袋の中に詰め込まれてたので容姿については分かりません。でも、魔力を見ていたら身に纏っていて中心となるような形をみると、小柄な女性のように見えました」
「小柄な女性……魔力は多かったのか?」
「えぇ。それなりに多かったです」
私が見た中では、トップクラスに多い方。
合った人たちの中って、魔力の見方を教わってからだけどね。
「袋に詰められたって、どんな事が合ったんだ? できる限り教えてほしい」
「はい。分かりました」
そう言って私は分かる範囲の事を全て話した。
「……と言った感じです」
俯いていた顔を上げると、マルティンさんは眉間にシワを寄せて深刻な病気を伝える前の医者みたいな顔をしていた。
「あ、あぁ。そうか」
「私も、ぼんやりしてたので……あはは……」
うん。めっちゃ気まずい。
話を続けようとしても、続けられないその空気を遮るように、二階からニルスさんが降りてきた。ちゃんと、制服から着替えている。
え? いつからいた?
……話に集中してたな。うん。
同じ階にいたとしても、全く気づけなかった。
……泥棒が来ても気づけるように鍛えられたのに……
「マルティン様。長らくお待たせしました。ニルス・ヒメルです。話は……リナから聞いているみたいですね」
「あぁ。思ったより詳しく説明してくれて助かってる」
その一往復した会話だけで、少しこの空気も和らいだ気がする。
「そうだったのですね。リナは……表に戻ってていいんだけど、母さんたちは、どうしたのか知ってるか?」
「あ、もう少しかかりそうって言ってました」
「そうか。ありがとう」
「はい。では、失礼します」
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そう言って私は、扉を上げて表に戻った。
数刻後。
もう、日はすっかり暮れている。
マリーさんも、カールさんも帰ってこないし、マルティンさんと、ニルスさんは大分話し込んでて様子も見れない。
私はとりあえず、お店の扉についている『Open』という看板を『Clause』へひっくり返した。
お釣りの確認と、商品の確認。
何も問題が無い事を確認し終わったらようやく二人が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「あぁ。これから少しニルスと話がしたいのだが……先客がいるみたいだな」
「ニルスさんに?」
私が思わず聞き返すとマリーさんが「少し学校でトラブルがあったみたいだから……」と客室を見つめながら補足してくれた。
トラブル?
温厚そうというか、人と関わるのが面倒思考じゃないの?
学校でも、あまり話さなそうだし。というか、一ヶ月一緒に暮らしてやっと、話せるようになったってのに……そんな事ある?
「あ、ニルスが悪い事をした訳じゃないわ」
ん? 『ニルス《《が》》悪い事をした訳じゃない』って、わざわざ言うかな……
巻き込まれたって遠回しに言ってるけど……何に?
「まぁ、大丈夫だ。とりあえず部屋に戻ってろ。ご飯の時は呼ぶ」
「あ、はい」
そう言って私は、三階にある私の部屋に戻った。
コメント
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第10話読みましたー!リナの焦りとか「分からないよ」って自己ツッコミがすごくリアルで、彼女の不安がひしひし伝わってきた。マリーさんのちょっと抜けてる感じもいい味出してる。ニルスさんのトラブルの真相がすごく気になる…!この不穏な空気感、好きです🌙 続きが楽しみです🤍