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花言葉って大切だと改めて思った。
だって、_________から!
お盆の初日。高校2年の俺、音関理夢(おんせきりいゆ)は最高に気分が悪い。理由は、此処最近続いている気温上昇と、楽しいはずの夏休みがぼっちで終わる事だ。
「ああ…最悪」
俺は、そう呟きながら机の上に置いてある、一輪の花をぼーっと眺める。確か名前は…“アツモリソウ”だっけ。
亡き母が残してくれた花で、母は数年前に病気で亡くなった。
いつのまにか、“アツモリソウ”を持っていて、俺にそれを渡したかと思えば、母はそのまま逝ってしまった。
「…今日からお盆かぁ…」
そう言って、俺は埃を被った箪笥から、黒いフードのついた上着を薄いTシャツの上に着て、玄関の扉を開いた。
「こんな服着てくるんじゃなかった…」
暑いとは分かっていたが、どうも俺の身体が黒いフード付きの上着じゃないと落ち着かないと言っていて、着るしか無かったのである。結果、後悔している。
お墓に行く途中、花屋へ寄る。お墓の周りに置く、花を選ぶのだ。
花屋に入ると、お盆なのに人が居なかった。コミュ障の俺にはこれが丁度良いのだが。
「…どの花が良いかな…」
花屋には、何百、何千と沢山の花がずらりと並んでいる。母はどんな花でも気に入り、絶対に飾っていた。だからこそ、花が選びにくいのだ。
「紫色のバラとか…?いや…でも…」
悩む事20分。未だに決まらない。俺がもう一度全体を見ようと、足を一歩前へ踏み出そうとした時。
「ねぇ、君の名前は?」
そう、尋ねられた。
小学生の、低学年くらいで、白い髪と、赤と水色のラインが入ったパーカーが特徴的だ。
多分、答えてはいけない奴だが、俺は反射的に、答えてしまった。
「…音関理夢」
「へぇ…!じゃあおんりーで良い?」
お前より俺の方が年上…という事は心に収め、問いに対して許可した。
「僕はおらふ!おんりー!宜しくね!」
いかにも創作らしい名前…というのは心に収め、軽く挨拶をした。
「…おんりーは、何で此処に来たの?」
「お墓に置く花を買う為」
俺は少し危機感を持ちながら、正直に答えていく事にした。
「…じゃあ、その人の第一印象は?」
「第一印象…」
パッと浮かんだのは、“優しい”という事。ありすぎて、逆にそれくらいしか思い浮かばなかった。
「“優しい”事?」
俺がそう言うと、「じゃあ…」と言って、何処かへ駆けて行った。そして、茎が長い黄色い花を持ち、帰ってきた。
「これが良いんじゃない?」
「…なんて言う花?」
「ハハコグサ!」
確かに綺麗だった。けれど、定番の“チューリップ”とかでは無く、何故“ハハコグサ”だったのだろうか。その訳を尋ねてみた。
「あ、何故か?理由はね、ハハコグサの“花言葉”が「優しい」と「忘れない」なんだ!」
“花言葉”
その名前を初めて聞いた。
「花言葉?」
俺がそう尋ねると、おらふは笑顔で答えた。
「そう!花には、花言葉が絶対付いてるんだ!」
話によると、おらふは大体の花言葉を覚えているらしい。
「…じゃあこの花買うか」
「じゃあ僕もお墓まで一緒に行こうかな!」
俺はハハコグサを買い、おらふと一緒にお墓まで行く事にした。
「…おらふくん、親は?」
少し気になった。
「…居ないよ!」
「…じゃあ孤児院とか行かないのか?」
「行かない!けど、おんりーの家に行きたい!」
おらふは謎の欲望を抱く。
「俺の家には絶対に連れて…」
「行きたい…!」
俺は何回も拒否するが、おらふは駄々を捏ねる。
「行くっ!」
「行かせない」
2人で言い争いしていると、いつの間にか墓場へ着いていた。墓場の前には、花畑が広がっていて、チューリップや、ヒヤシンスなどが立ち並んでいる。
「…綺麗だね」
おらふが呟く。
俺はおらふの呟きには応えず、黙々と墓の周りに花を置いた。
「__良し!出来た!」
「…帰ろう」
おらふが呆れたように言う。
「何でそんな言い方なんだよw」
俺が笑う。
「だって…おんりーの家に…」
未だ、俺の家に入りたいらしい。
「もう分かったって、、」
俺がそう言うと、「やったぁ!!」と歓声を上げて俺に抱きつく。
「早くおんりーの家、行きたい!」
「分かったって…」
俺は呆れながらゆっくりと家の方へ向かった。