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昔書いてた作品を供養がてらあげます。


今のところ更新予定はないです。


作者はワートリにわか。一応単行本最新刊まで読んでる。


なんでもありな方向けの作品です。


以上が大丈夫な方は続きをどうぞ






――

姉の周りはいつも賑やかできらきらしてるとずっと思っていた。姉妹なのに、私とは似ても似つかない賑やかさで、みんなから愛されていて。

『神に愛された子』なんて言うことがあるけど、まさに姉もその中に分類されるだろうなと私は思っている。



姉はいつもにこにこ笑っていて、誰に対しても分け隔てなく接して、困っている人がいたら見過ごせない…そんな優しい人。

そんな姉の妹である私は、まさに正反対。いつも無表情だし無口だしで、大人はみんな姉のことを可愛がっていた。

私の周りにいるみんな、姉と私を比べたがる。ある日は、「なんでこんな簡単な計算もできないの?」__お姉ちゃんは出来てたのに。…ある日は、親戚の集まりでみんなに言われた「姉の方は愛想も良くて可愛いのに、妹の方と言えば……」だとか。……ある日は、幼馴染の男の子と遊んでた時「おまえ、のろいから遊ぶなら愛彩あいの方がいい」なんて言われて傷ついていたけれど、ずっと言われていると自分でも「私はダメなんだ」って自覚する。テストの点が低くても、体育の授業がダメダメでも、表情が乏しくても、気の利いたことが言えなくても、全部全部私が出来損ないだから頑張ってもダメなんだって諦めた。


そんな中でも、一つだけ救いがあった。それは姉の存在だ。いや、こんな状況なら姉のこと恨んでもおかしくないと思うだろうけど、姉はほんとにいい人なのだ。私がこんな状況にある事を姉も幼いながらに分かっていて、そんな中私の手を引いて外へ連れ出してくれたのだ。友達と遊ぶ時も私も混ぜてくれて、いつしか私の周りも賑やかになっていた。それが嬉しくて、姉にお礼を言うと照れくさそうにはにかんで笑って、よかったねって嬉しそうに言うもんだから私も自然に笑みがこぼれる。

そんな姉をどう恨めばいいと言うのだろうか。






姉には好きな人がいる。

いつも笑顔な姉は彼、迅 悠一といる時は乙女の顔で笑うのだ。そんな姉を悠さんはほかの人を見る時とは違う明らかに好意を持っているのが分かる目をして見ているのだ。

誰が見ても相思相愛なのが分かるのに、2人は互いの好意に気づいてない。いわゆる両片想いって言うやつ。

……そんな中、悠さんを好きになってしまった私はどうすればいいのだろう。

姉に言った場合、姉は悠さんのことを諦めて距離を置くだろう。…そんなの私は望んでない。みんな不幸になるくらいなら、この想いを心の内に秘めて私一人が苦しむのがいい。


「お姉ちゃん」

「ん?どうしたの、美彩みあ

「…悠さんの所に行くの?」

「えっ!なんでわかったの!?」

「お姉ちゃん、悠さんに会う時気合い入れておしゃれしてるもん」

「ヘ!?」

「そんなんじゃ、悠さんにバレちゃうよ」

「そ、そんなに分かる……!?」

悠くんにバレたらまずいってぼそぼそ話す姉から目を外して自室にこもる。


「……むねが、くるしい。」










――

ある日、いつものように過ごしていたら街から轟音が聞こえた。姉と一緒に外へ出ると、至る所から上がる煙、崩れ行く多くの建物、街に響き渡るいろんな悲鳴…まさに地獄絵図と化している。

白い大きな怪物が街を破壊して周り多くの命がこの時点で犠牲になっていた。

「っ…こっち!」

私の手を引いて走る姉の背中を必死に追いかけるけれど、私がのろいせいで足がもつれて転けてしまった。後ろを見ると私に迫り来る白い怪物。

「ッ危ない!!!!!!!」

姉の叫び声にも近い声を聞いた後、強い力で押されて少し吹っ飛んだ。私が前いた場所へ視線を向けると、右腕がない姉がそこにいた。そしてわかった。姉が私を庇ったのだと。

「お、ねぇちゃ……」

白い怪物がまた攻撃を仕掛けに来た時に、片手に刀を持ちマントを着た男の人が倒して、こちらにちらっと視線を向けたあと、痛ましげに眉間に皺を寄せる。その後すぐにまた他のところへ去っていった。

「おねぇ、ちゃ」

「み、あ…… ぶ、じ…?」

「あ、っうん、お姉ちゃんのおかげで無事だよ…」

「そっ…ぁ… よぁっ…た」

姉を抱きしめながら涙を流す私。生暖かい液体が服を汚していく。

「また、ね……」

「おねぇちゃん?ねぇ、めあけてよっ…!」

__っおねぇちゃん!!














――

気がついたら、姉の葬式だった。

姉はみんなに愛されていた。その証拠にたくさんの参列者が来た。幼馴染の公くん、友達の桐絵ちゃんに悠さん。他にもいろんな人がお別れに来た。

みんな、私に「代わりに生きて」って言って帰っていく。大人は「なんで妹が残ったの」「あの子が変わりに死ねばよかったのに」なんて言われて。みんなに声をかけられる度、心が重くなっていく。

「……悠さん」

「…………――で」

「えっと……」

「ッなんで愛彩あいが死んでお前が生きてるんだ!!おれは、おれはっ!愛彩に生きていて欲しかったっ!!!」

「っ…」

そう言われた瞬間どくんと心臓が大きく鳴った。他の人の言葉よりもずっしりと重くなる心臓にとても苦しくなる。

「なんで愛彩なんだ!なんでおまえは愛彩を守れなかった!?」

捲し立てられ、ぎゅぅっと心臓を鷲掴みにされるような苦しさで息の仕方を忘れる。

息を取り込もうとはくはく口を動かすけれども、かひゅっと鳴っただけだった。

「かひゅ、ごえ、なさっ…!ひゅ、ごぇんな、かひゅっ…さぃ…!」

騒ぎを聞き付けた桐絵ちゃんと公くんが駆けつけた。桐絵ちゃんが慌てながら悠さんを引き離してくれて、公くんは私に近寄って背中を擦りながら声をかけてくる。

「おい!大丈夫か!!」

「ひゅ、ごぇ…ぁさぃ……!ひゅぅ、ごぇん、かひゅっ、なさぃ……!」

酸素が取り込めなくてもう手足も痺れてきて、意識もふわふわしてきた。

「っこっち見ろ!!おれに合わせて呼吸しろ。吸って…吐いて。」

「ひゅ、ぅ…ひゅー」

「ゆっくりでいいから。ほら吸って、吐いて。」

公くんに合わせて呼吸しているとだんだん落ち着いてくる。今もずっと背中をさすられていると安心してきて、眠たくなってくる。

「ごめ、なさ……」

「お、だいぶ落ち着いてきたな。」

その声を最後に意識が暗闇に沈んで行った。









___いきていて、ごめんなさい









――

出水side

「っごめ…なさ……」

その言葉を最後に体が地面へと吸い込まれる彼女を受け止め、穏やかな寝息をしているのを見て安心し、ほっと息を着いた。美彩を抱きしめ、視線を上げて目の前の男を見る。

「迅!あんた何言ってんの!?美彩だって、愛彩を失って傷ついてるって言うのに…!!」

「……」

「…おれ、あんたのこと知らねぇけど、こいつのこと傷つけるなら……あんたのことぜってぇ許せねぇから。」

「あんたと愛彩がどんな関係だったか知んないけど、あいつのこと守れなかった後悔をこいつにぶつけんのだけはちげぇだろ……!そんなんでこいつのこと傷つけんな!!」

「……おれは、」

「…迅、帰るわよ」

そう言って男を引っ張っていくショートの女の子を見届けて、おれは美彩を抱き上げ彼女の家まで送った。








――

目が覚めると自室のベッドに寝ていた。

時計を見てみるともうすぐ明け方で、とりあえず意識を失う前の記憶を遡ってみる。

あの時、葬式が終わって先に親が帰ったあとに悠さんがきて。それから…悠さんから姉が生きていて欲しかったって言われたんだった。

……あの時の悠さんの言葉一つ一つが私の心に深く刺さってとても苦しかった。彼に何か言われる度深い深い海の底に沈んでいくかのように息がしずらくなって、どんどん目の前が真っ暗になっていく。

__ごめんなさい、姉じゃなくてごめんなさい。


___ごめんなさい、姉を死なせてしまってごめんなさい。


____ごめんなさい、生きていてごめんなさい。


…そんな謝罪が口から溢れ出てくる。過呼吸を起こしても息が詰まっても、止まることを知らずに溢れ出てくる謝罪。

過去に戻れるのなら、姉の代わりに死にたい。









……そんなことできるわけないのにね。







――

大規模侵攻でたくさんの被害が出たけれど、1ヶ月もすれば学校も普通に始まる。

登校すると、先生たちは「可哀想に…」だとか「なんで姉が生き残らなかったの」だとか、それぞれの思いをヒソヒソと話している。

そんな話が聞こえる度胸がずしりと重くなったし、痛くなった。

そんな大人たちの声が聞こえていた他の子供は、私をいじめるようになった。

そういう子供たち皆、口を揃えてこう言う。

「大人が言ってるからいい」……と。

幼い頃は皆大人の言うことに従う。


学校では教科書を破かれたり、机に落書きをされたり、最近では叩かれたり蹴られたりは当たり前になってきた。

そんな時、家では両親から厄介者扱いを受けていた。

さすがにご飯は出さないとまずいから食べれているけれど、私の部屋もなくなったし布団すら貰えない。

「あんたなんか産まなければよかった」

「なんで愛彩が死んでお前が生きてるんだ。」

「無能のくせに」

「愛彩が死んだのに何のうのうと生きてるの!?」

「っこの疫病神!!出ていけ!!」

暴言暴力当たり前の生活。

そんなのが半年続いた頃、私は何も感じなくなっていた。

ある日、いつもと同じように母親から暴言を吐かれる。

「なんであんたが生きて、愛彩が亡くなったの?あんたなんていらない。早くしんで。」

そう言われた瞬間、葬式の時の記憶が蘇る。

公くんも桐絵ちゃんも栞ちゃんもみんな、私に代わりに生きてって言ってた。やっぱりみんなお姉ちゃんに生きていて欲しかったんだなぁ。みんなの願い通り、お姉ちゃんみたいに生きる演じるから。

私がお姉ちゃんの『代わりに生きて』みせるね。








――

それからボーダーが隊員を募集しているのを親が知り、「ボーダーに入ってさっさと死んで」と言い私を家から追い出す準備をしだした。

ここからボーダーは遠いから、最後に今まで行けてなかった姉の墓参りに行きたいと思い、家を飛び出す。

日が沈み出した夕暮れ時。20分くらい走って到着した墓地。姉が眠る墓を探し出し、目の前で手を合わせた。

__お姉ちゃん、私のせいでごめんなさい

そう謝ると、一気に入ってくる情報に目の前がぼやけた。

ボーダー、大規模侵攻、迅悠一、小南桐絵

…………ワールドトリガー。


頭を抑えながら、今の情報を思い出す。

「いま…のは、お姉ちゃんの記憶……?」

痛む頭を何とか回し、整理する。


姉は、前世の記憶があるらしい。

ここの世界とは別の次元の世界に生まれ、学校へ行き、仕事へ打ち込み、そして出会う。ワールドトリガーという物語に。

動画配信サービスを見ている時に見つけた『ワールドトリガー』というアニメ。見てみると、眼鏡をかけている頭がいいだけのC級隊員 三雲修が外の世界『近界ネイバーフッド』からやってきた男の子 空閑遊真と出会うことで起こる物語ストーリー。真新しい主人公が4人もいるという設定に惹かれ一期を見終わると、それはもうのめり込んだ。キャラクター一人一人の掘り下げに、それぞれの思い、絡み合う運命を見ていると本当面白いし続きをもっともっと…と思い、続きも連続してみてしまった。面白かったけど、その代償に貴重な長期休みが終わった。

まぁそれは置いておいて、のめり込んだと言ってもアニメを2, 3回見ただけ。だってその後すぐに死んだし。

それで目が覚めると、大軽おおかる 愛彩あいに転生していた。しかも、そこはワールドトリガーの世界で、胸が踊るような気持ちだった。それからはキャラとの接触を重きにおいて行動し、幼馴染の出水公平と親友の小南桐絵、それに関わっているうちに恋に落ちてしまった迅悠一。最初は悠くんのサイドエフェクトのせいで抱え込んでしまうものを少しでも軽くしたくて、相談に乗ったり慰めたりして。そして、私と違って表情に乏しい妹が周りからよく思われていないのに気づいてからは、妹の手を引いて公くんや桐絵ちゃんと遊んだり、悠くんの所へ一緒に行ったりして過ごしていた。それもこれも、少しでも原作に関われるようにするため。


姉は第二次大規模侵攻の時にレプリカを失ったことをすごく悲しんでいた。そして、それを知る私がいるから何とか阻止して見せたいと…そう思っていた。だけど、私が殺されそうになってるのが見えて、レプリカより私を取った。


…正直言うと嬉しかったし、複雑でもあった。

姉が私を取ってくれたこと、でも姉の願いを叶えられなかったこと。

……いや、まだ始まってすらいないなら、私でも姉の願いが叶えられるはず。

私がやることはひとつ。私はこれからボーダーに入って強くなる。そしてレプリカを救ったあと、私は死にたい。姉の願いを叶えたら、私は楽になってもいいかな……?せめて、人の役に立ってから死にたい。



そんな思いを胸に抱いて、顔に笑みを浮かべながらボーダーへ向かうのだった。


姉の代わりに生きる話

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