コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
――
ボーダー入隊試験にて、私は順調に進んでいた。学力テストと体力テスト、面接も難なく通過し、トリオン量の計測に移る。
水晶に手をかざし少し待つと数字が浮かんだ。
「ト、トリオン量31 !!」
「31 !?」
そんなにやばいのかと思い聞いてみると、トリオン量の平均が4 らしい。
え、もしかして私もうやらかした?
そう、私はボーダーに来る前になるべく目立たずに強くなろうと思っていたのである。その方が『あの計画』をやるのに都合がいいと考えたから。……でもその結果がこれ。どうしよう…
ひとまず試験が終わり、帰りたくもない自宅に一旦帰宅する。1週間くらい待つと試験合格の報せが届いた。確か合格かどうかはトリオン量でほぼ決めているらしい。その点、私は沢山トリオンがあるから合格は決まっていたようだった。
入隊式の日になりまたボーダーへ向かう。
時間になり始まるとボーダー本部長の忍田さんの話を聞き、ポジションことに分かれる。とりあえず私は攻撃手を志望しようかな。姉の記憶を頼るとトリオンが多い人は射手になった方がいいらしいけど、何故か知らないけど直感で攻撃手がいいと感じた。
係の人について行くと、どうやったら正隊員になれるかの説明とポイントの解説を聞く。
手の甲にあるポイントを4000にあげたら正隊員になれるらしい。自分の手の甲を見ると3400と書いてある。……トリオン量が多いからかな?
その後対近界民戦闘訓練をすることになった。
確かにアニメでもすぐに戦ってたし新ボーダー設立すぐだとしても変わらないのかな。
とりあえず、部屋に入って弧月を握り目を瞑る。……何故だか分からないけど、しっくりくる。
「3号室用意。……始め!」
出てきた大型近界民を真っ二つに斬る。
「……れ、0.4秒!?」
……あぁ、ここが私の居場所だ。
目を開け、高揚したように口角を上げる。やっぱり、私には弧月がすごい重いようだ。身長小さいし、小回りも利くし機動性もあるから、おいおい開発されるだろうグラスホッパーとスコーピオンを使った俊敏型にしようかな。それにトリオンもあるしメテオラとかも使ってみたいかも…!
他の訓練も難なくこなし、少しポイントが手に入ったが全然稼げない。……やっぱり空閑遊真みたいにランク戦で手っ取り早く稼ぐ方がいいかな。でも目立ちたくないし… そうだ、早くB級に上がってから弱い振りをすればいいか。振りは得意だし。
片っ端からポイント多い順に挑んで、戦っている時に思うこのしっくり感をもっと感じていたくて、戦って戦って戦いまくる。そうすればいつの間にか4000点溜まってて、やることなくなり帰ることにする。私の新しい部屋は本部の中にある一室。親から追い出されたことを上層部に報告し、それなら本部に住んでいいと了承を得て荷を置いている。
さて、これからどうしようか。原作が始まるまでまだ4年あるし、時間は沢山残っている。そういえば、B級に上がったならトリガーセット変えられるはず。でも、ボーダーも出来たばっかりだし攻撃手用トリガーは弧月しかない。とりあえずトリガーセットは今度やるとして、今後の方針を決めるとしよう。
第1に私個人が強くなること。レプリカを助けるなら、アフトクラトルの人型近界民を2人相手しないといけなくなる。せめて足止めくらいはできるように強くならなくては。
第2に私の強さを周囲に知らせてはいけないこと。ただ単純に動きずらくなるし、能ある鷹は爪を隠すって言うしどこかで役立つかもしれないから。
第3に色んな人と仲良くなること。きっと近い未来、私にもそうだけど主人公達の役に立つかもしれないし。それに……もうみんなに嫌われたくない。
以上の3つに従って行動しよう。…となると、ランク戦で訓練は出来ないな… ランク戦は映像に残るし、何よりロビーで他の人に見られる可能性大だから。どうしようかな……あっそうだ、訓練ブースなら映像も残らないし、一人一部屋だから他の人に見られることもない。ただ、相手はモールモッドとバムスターだけになっちゃうんだよね。一気に沢山出したらいい訓練になるかな…?まぁ、それで訓練するとして、隊員が増えてきたら他の人の記録見て色んなことを身につけていこう。
――
それから毎日訓練ブースに篭ってモールモッドを斬って斬って斬りまくっていたある日。
「おっ、入隊式ん時に0.4秒で倒した子じゃん!」
「……はい?」
突然後ろから聞こえた声に振り返る。
「なぁなぁ、今暇?俺とランク戦しねぇ?」
「あの、どちら様ですか?」
「あっわりぃ。俺は太刀川慶、よろしくな!」
なんと、あの攻撃手1位の太刀川さんだった。…まだ1位じゃないか。
「私は、大軽 美彩です。よろしくお願いします。」
「おう。…で、今暇?」
「すみません、今からの用事があるので失礼します。」
…嘘だけどね。
「マジか……仕方ねぇ、また今度誘うわ。」
「はい、よろしくお願いします。…それでは失礼します」
「じゃあな〜」
また誘われても上手くかわそう。太刀川さん相手ならわざと手を抜いてること見抜きそうだし。
――
私がボーダーに入って半年過ぎた頃には私が弱いことがもう周知されていた。太刀川さんの誘いを断った後日に他の人からランク戦の誘いが来て負けた。それを皮切りにそれ以外の人とも何回かやったけど全敗。それから私は弱いって言われるようになった。
まぁ、外野は言うだけ言っとけばいいよ。私の実力は私さえ知っていればいい。
それで、今日は入隊日で新しくC級が入ってきた。原作キャラの中で誰が入ってきたか分からないから、C級のランク戦ロビーにやってきた。ら、
「はぁ!?」
って驚いた様な声がまたしても後ろから聞こえた。
「お、おまえ…なんでここにいんの!?」
振り返るとそこには目を見開いた出水公平がいた。とりあえず、私を指さすのやめてほしい。目立ちたくないんだけど。
「えっと、私がボーダー隊員だからですかね?」
「!笑って…」
いつも通り、笑って対応するとまた驚いた様に目を見開く。そうだった、前は全然笑ってなかったんだった。
「いや、それよりおまえ、いつ入ったんだよ…なんでおれに教えなかったんだ」
「あー、ちょっと場所変えませんか?」
「なんで、っあ……」
周りからの視線が痛くて場所を変えることを提案すれば、最初は気づいてない様子だった出水先輩だが周りを見る私を見て気づき、気まずそうにしていた。
「とりあえず、誰もいないところ…隊室って言っても私入ってないし……あー、出水先輩私の部屋来ますか?」
「はっ、部屋!?」
「ちょ、出水先輩!声大きいです!!」
「それより、さっきから出水先輩ってなんだよ!前みたいに呼べよ…」
拗ねたような態度をとる出水先輩は少ししゅんとしている。
「え、じゃあ、公くん?」
「っあぁ!」
「あの、それでどうします?私の部屋来ますか?」
「お、おれはいいけど、遠くね?」
「あぁ、私今本部で暮らしているので大丈夫です」
「はぁ?おばさん達が了承したのかよ!」
「…まぁ、それも含めて話すので、とりあえず行きましょう」
少し含みのある言い方をすると奇怪そうな顔をしる公くん。
「わかった」
ボーダーの長い廊下を2人並んで歩く。
「なぁ」
「なんですか?」
「…敬語やめね?おまえ、昔はタメだったのに今更敬語って遅くねぇか?」
「あー……うん、分かった。」
正直いうと、ちょっと渋った。いや だって、彼といると目立つ。これでもかってくらい。近い未来に射手2位になる彼は顔もかっこいいし、性格もいい。そんなの、モテないわけないじゃないか。公くんの隣にいると女性陣(主にC級)の圧が怖い。まぁそんなデメリットより、彼と仲がいいとこれから色んな人と関われそうだし、ここは敬語を外すことが最適だと思われる。
「あ、もうすぐ着くよ」
「おー、意外と近いのな」
「うん……ここが私の部屋。あんまり家具とか置いてないけど、ゆっくりしていって」
「りょーかい」
ドアの前に立ち、鍵を開けて公くんを招き入れる。
「お邪魔します」
「うん、そこ座ってて」
「おう」
備え付けのキッチンにある冷蔵庫を開けて、適当に飲み物を注ぐ。
「おまたせ、オレンジジュース注いできたけどいい?」
「全然大丈夫!ありがとな!」
「うん……それで本題なんだけど」
そう切り出すと公くんは聞く体勢に入ってくれる。
「えっと、いつ入ったかだったっけ?」
「おう、おまえの家行ったけどいなかったし…もしかしてそんときにはもう入ってた?」
「いつのことか分からないけど、私がここに入ったのは、半年ちょっと前かな。ちょうど隊員募集の話が出たすぐ」
「そっか、おばさん達に反対されなかったのかよ」
「あの人たちが勝手に応募したんだよ。それで、入ることが決まったら少しの荷物持たせて追い出された」
「……は?いや、だっておばさん達…そんなことするような人じゃないじゃん……」
「まぁ、お姉ちゃんとほかの人たちの前じゃ皮かぶってたしね〜」
「……なんかおまえ、愛彩に似てきたな。」
「私が?そんなことないって。私なんかと比べちゃだめだよ」
「なんか、笑い方とかよく喋るところとかも。」
「……それは」
___私が意図的にそうするようにしているから。
「…お姉ちゃん見たいになりたくて、少し意識してるからかな?」
「……そうか?」
「うん、そうだよ」
これ以上は聞かれたくないから、曖昧な笑みを浮かべておく。
「公くんはもうどのポジションやろうか決めたの?」
「あー、射手やりやすいし、とりまこれでやるよ」
やっぱり予想していたけれど、公くんは射手に行くか。逆にやってもらわないと合成弾が使えないからこっちが困る。早く彼が合成弾を生み出してくれるのを祈ろう…… …そういえば、私は実践では合成弾使えないんだった…!まぁ、いつかの為に練習しておく価値はあるかな。なんなら明日から練習しよう、そうしよう!
「いいと思う、公くんなら絶対上に行けるよ!」
「えっ!ま、まぁな!おれ、射手の素質ありそうだし?」
「うん!私、弾丸トリガー気になっててさ、良かったらその時教えて欲しいな…」
「もちろん。そんぐらい、いつでも付き合ってやるよ!」
「ほんとに!?ありがとう、嬉しい!」
そう言って私は笑みを浮かべる。そうすると、目の前の彼もニカッと笑顔になる。
……あぁ、まぶしいなぁ。
――
「遅くまでありがとな、また来るわ!」
「うん!…あ、来る時は連絡ちょうだいね?」
「りょーかい!じゃ、またな!」
「またね〜!」
歩きながら手を振る公くんに向かって私も手を振り返す。
まだ、計画は始まったばっかりだ。
彼の姿が見えなくなったのを確認して、ランク戦ロビーに足を進める。5分もかからないうちに着いたロビーはB級自体人数が少ないということもあってほぼスカスカだった。とりあえずブースに入って、対戦のお誘いが来るまで待つ。
「あ…」
すぐに弧月使いの人から申請が来た。相手の名前も見ずに了承してしまったのが後に仇となることを知らずに……
転送された先にいたのは__
「よっ!いや〜前回はダメだったからな、今回はタイミングが合ってよかったぜ大軽!」
「なっ、た…たちかわさん……」
太刀川さんだった。
さ、さいあくだ……どうして、よりにもよって太刀川さんなのか…!それより、なんであの時名前見なかったの過去の私……!!
すでに、過去の自分に怒り心頭だがそんなの後だ。このまずい状況をどうにか打破する方法を考えなくては…
「ん?なんでそんなに驚いてんだ?」
「えぇっと、その…相手を確認せずに申請通しちゃったので、まさか太刀川さんだとは思わず……」
「なんだ、そうだったのか。まぁいいから早くやろうぜ!」
おぉっとぉ〜、つんだ。
「…………はい」
お互い弧月を抜いて構える。
どうする、生半可に手を抜いてもこの人相手にはバレてしまう… ……よし、最後の1本だけ取ろう。今の太刀川さんはボーダーに入ったばっかり(それを言うと私もだけど)だから、原作の時よりまだ弱いはず。それにまだ、月見さんや忍田本部長に弟子入りしていないはずだし。
「おいおい、戦闘中に考え事か?ほら、せっかくの戦闘だぞ、存分に楽しもうぜ!!」
彼の挑発に私も一瞬乗ってしまったけれど、何とか抑えた。『殺りたい』『自分の実力を証明したい』『本気で戦いたい』……なんて思いは私には不要だ。これからの計画の邪魔になる。
そんなこと分かってるはずなのに。目の前で楽しそうに笑っている太刀川さんを見ていると、私も全力を出したくなる。
くるしいよ、わたしもやりたい。
なんて、自分で決めたルールが自分の首を絞めている。ほんとに自業自得だな。
それでも思わずにはいられない。
「……いいなぁ」
そんなふうに楽しそうに戦えて。
ぼそっと呟くように言った声は太刀川さんには聞こえていなかったみたいだ。
___さぁ、どう躱そうか。