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前回のあらすじ。モンスターチルドレンの『心の暴走』を対処していた俺はミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)に媚薬《びやく》入り(?)の飲み物を飲まされ、自我が崩壊《ほうかい》仕掛けていた。(ミサキはモンスターチルドレンではない)
その時、俺の守護天使が俺を助けようとしてくれたが、俺は自分でなんとかすると言った。
「ミサキ、俺は……!」
「どうしたの? ご主人。さあ、早く僕の腕《うで》の中に飛び込んでおいでよ。そして、僕をご主人の愛で満たしておくれよ」
体の中も外も火照《ほて》っている。呼吸をするのさえ、苦しい。
あと少し近づけば、ミサキの腕《うで》の中に飛び込むことができる。
だが、それから後のことをしてしまったら、俺は先生との約束を果たすことができなくなる。
どうすればいい。いったいどうすれば、この危機的状況をどうにかできる?
そんなことを考えていた俺は、なんとなくミサキの名前を呼んでいた。
「……ミサキ」
「なんだい? ご主人」
「お前に……頼みがある」
「頼み?」
「……俺が自我を保《たも》てなくなった、その時は俺を……殺してくれ」
「……えっ? それは、いったいどういう……」
「俺は今まで、あらゆる欲望を抑制してきたんだ。だから、俺が自我を保てなくなるということは、今まで俺が溜《た》め込んでいたものが一気に溢《あふ》れ出して暴走するということを意味するんだ」
「何言ってるの? ご主人。僕は、たとえ命令だったとしても、ご主人を殺すことはできないよ」
「それでも……だ!」
「だーかーら、僕はご主人に死んでほしくないんだよ。それにね、僕はただ、ご主人にリラックスしてほしかっただけなんだよ」
「だけど、お前……俺に媚薬《びやく》入りの飲み物を……飲ませただろ」
「えっ? なんのこと? 僕は媚薬なんて入れてないよ。入れたのは、リラックス効果のある葉っぱだけだよ?」
「は、葉っぱ?」
「そうそう、葉っぱだよ。ご主人の世界で言うところの『ハーブ』だよ」
「じ、じゃあ、俺がこんな状態なのは……」
「多分、というか確実に、そのハーブのせいだね」
「そ、そうか。なら、早くなんとかしてくれ。じゃないと、俺は……!」
「大丈夫だよ、ご主人。僕がご主人の欲望を全部受け止めてあげるから、安心して僕の腕《うで》の中に飛び込んできていいよ」
「ダメだ! そんなことをしたら、お前は!」
「ご主人、僕を信じて」
ミサキのその声に俺の体は反応してしまう。もう、自我を保《たも》つことは……できない。
「……くっ! どうなっても知らないからな!」
俺はとうとうミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)の腕《うで》の中に飛び込んでしまった。
俺はこの時、終わってしまったと思った。男としても、人間としても……。これから幼女を襲《おそ》ってしまうのだから……。
……だが、そんな心配はしなくてよかった。なぜなら。
「ほら、大丈夫だったでしょ? ご主人」
「俺は自我を保《たも》っている……のか?」
「そうみたいだね」
「そうか。けど、これはいったい……」
ミサキは俺の頭を撫(な)でながら、こう言った。
「それはね、僕がご主人の欲望を全部食べたから、ご主人は暴走せずに済んだんだよ」
「え? 食べた? 俺の欲望を?」
「うん、そうだよ。僕は一応、亀だからね」
「そうか。お前は雑食なのか。けど、人の欲望って食えるのか?」
「うん、普通にいけるよ。亀《かめ》だから」
「そ、それでいいのか?」
「これでいいのだ!」
「そ、そうか、なら、良かった。ということは、俺はまだ童貞《どうてい》なんだな」
「ん? まあ、そうだね。けど、今から僕が逆にご主人を襲《おそ》っちゃうかもしれないよ?」
「それだけは勘弁してください」
「もうー、冗談《じょうだん》だよ、冗談。半分くらいは」
「そ、そうなのか?」
「嘘《うそ》だよー」
「おい、俺で遊ぶな」
「ごめんごめん、ご主人が焦《あせ》るところを見たかっただけなんだ」
「……そっか。なら、許《ゆる》す」
「ありがとう、ご主人。大好きだよ」
「か、軽々しくそんなことを言うな」
「あれ? ご主人の体温がちょっと上がった……。もしかして照れてるの?」
「そ、そんなわけ!」
「あっ、また上がった」
「……そ、それより、お前のその能力は何なんだ? 魔法の一種か?」
「話をそらさないでほしかったけど、一応、説明しておくね」
「ああ、頼む」
「まあ、スキンシップをした時に伝わってくる相手の体温と一緒に相手の欲望がどれくらいあるのかも伝わるようにする、というものだよ」
「すごいな。でも、本当にそんなことが可能なのか?」
「もちろんだよ、魔法に限界はないからね」
「マジかよ。すげえな、おい」
「まあね……ねえ、ご主人」
「ん? なんだ?」
「……ううん、やっぱりいい」
「おいおい、そんなこと言わずに話してくれよ」
「……じゃあ、僕のこと、もっと強く抱きしめてくれる?」
「え? お前……まさか」
「そうだよ。僕はご主人に抱きしめてほしくて、たまらなかったんだよ」
「お前なー、そうして欲しいなら、最初からそう言えよー」
「ごめんよ、ご主人。でも、いざ言おうとすると、ちょっと照れくさくなっちゃって」
「そうだったのか……よし、分かった。お前のその願い、俺が叶《かな》えてやるよ」
「本当? 嘘《うそ》じゃない?」
「ああ、嘘《うそ》じゃないよ」
「そっか。じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「ああ、分かった。じゃあ、するぞ?」
俺は、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)の小さな体を今以上にギュッと抱きしめた。すると、ミサキは。
「ありがとう、ご主人」
俺にそんなことを言った。いきなり感謝された理由が分からなかったため、俺はミサキに訊《き》いてみることにした。
「んー? それは何に対してだ?」
すると、ミサキはギュッと抱きしめ返した。
「んー? あー、それはね、僕のお願いを嫌《いや》がらずに、すぐに叶《かな》えてくれたことに対してだよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ……。それじゃあ、僕もご主人に何かしないといけないね」
「えっ? 俺は別にお礼なんていらな……」
「それじゃあ、僕の気が収《おさ》まらないから、ダメだよ」
「いや、だから、俺は別に……」
「僕に何かさせてくれないのなら、このままご主人を押し倒《たお》して、〇〇しちゃうよ? ご主人はそれでもいいの?」
「……わ、分かったよ、今考えるから、少し待ってくれ」
「うん、分かった。ちなみに、逃《に》げようとしたら、ご主人の首筋《くびすじ》に一生消えないキスマークをつけるからね?」
「わ、分かったよ。逃げたりしないから、少し考える時間をくれ」
「うん、分かった」
やれやれ、ミサキはいつからこんな子になってしまったんだろうな。まあ、だいたいは俺のせいなんだろうが。
さて、何をお願いしようかな。あんまり無茶なお願いをさせるわけにはいかないからな。うーん、どうしたものか……。
俺がそんなことを考えていると、俺の背後から何かが飛んできて、俺の後頭部に直撃《ちょくげき》した。
俺がそれを取ろうとしたが、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)がそれを許可《きょか》しなかったため、ミサキにそれを取られてしまった。
紙が擦(こす)れるような音がしたため、【メモのようなもの】が飛んできたことが分かった。
ミサキはそれを読み終えると俺を抱きしめるのをやめた。
それと同時に俺に【その紙】を手渡した。
「なあ、ミサキ。それには、なんて書いてあったんだ?」
「え? うーん、まあ、ご主人が読んだ方が早いから読んでみて」
「分かった」
俺はその紙に書いてあった内容を自分なりに解釈《かいしゃく》し、それを簡単にまとめた。
その紙に書いてあった内容……それは……『早くして! 私たちの番はいつになったら来るの?』というものだった。
誰《だれ》かは知らないが、今のこの状況を好《この》ましく思っていないやつが書いたらしい。
どうやら、ミサキに何をしてほしいのかを早く決めなければいけないらしいな。
それに気づいた俺は瞬時《しゅんじ》に頭の回転を速くして、その答えを導き出した。