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「魔女様、助けてください!」入国早々、私たちはいつものように騒動に巻き込まれていた。娘をさらわれた父親の悲鳴。私は状況も聞かずに飛び出そうとするが、カレンがその襟首をひょいと掴む。
「ちょっと待ってカレン。何か写真ありますか?」
私は呆れ顔で笑いながら、手際よく情報を引き出す。その横顔を見るたび、私は「この人が相棒でよかった」と心の底から思う。
犯人を追い詰め、刃を突きつけられた緊迫の瞬間。私の魔法よりも速く、カレンの箒が犯人の顔面に叩き込まれた。
「世話のかかるやつだぜ、お前は」
そう言って笑うカレン。けれどその直後、気絶したはずの犯人が放った最後の一撃が、カレンの脇腹を深く抉った。骨が砕ける嫌な音が響く。
「カレン!!」
私は泣きじゃくりながら犯人を拘束し、牢に放り込んだ。すぐさま駆け戻ると、カレンは血に汚れた服を払いながら、何事もなかったかのように立ち上がっていた。魔女の自己再生能力――。どんな傷も「チリのような掠り傷」に変えてしまう、呪いのような祝福。
その夜、私たちは古びた宿の一室で、温かいスープを囲んでいた。
「……痛かったでしょう、カレン」
「あ? 忘れたよ、あんなの。もう治ってるしな」
カレンは乱暴にスープを啜るが、私は知っている。彼女が私を守るために、どれだけの痛みを「なかったこと」にしてきたか。
不老不死の魔女。愛した人は先に逝き、私たちは置いていかれる。この数百年、どれほど多くの「さよなら」を繰り返してきただろう。けれど。
「ちょっと、変かもしれないけど」
「ん?」
「愛してる、カレン。……ずっと、隣にいて」
カレンは一瞬、スプーンを止めた。その瞳に、複雑な光が宿る。けれどすぐに、彼女は最高に優しい顔で笑った。
「……愛してるよ、セレン。お前がその気になるまで、私はどこへも行かないさ」
窓の外には、終わりのない夜空が広がっている。けれど、このスープの温かさと、カレンの体温がある限り、この旅は永遠に続く。続いてほしい。そう願わずにはいられなかった。