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「こちらは〜です。そしてこちらが、、、」
シェフは一つ一つ料理を説明して食べ方等を教える。
言うまでもなく私が食べたことの無いものばかり。
彼はちらりと私を見た。
フォーク?ナイフ?なぜ何本も使うの?お箸じゃダメなの?
そんな心が伝わったのかもしれない。彼はスっと片手にナイフを持ちもう片方にフォークをもってお肉を切り始めた
「ナイフは右で、フォークは左で持つんだよ。」
ナイフ、これかな、あとはフォ、フォー、、、フォーク!これ、かな?
それは思ったよりも難しかった。フォークは刺して、ナイフは切る。なかなか切れない。
あーもう、めんどくさいっ
そう思って私はブスっとお肉にフォークを刺して口に運んだ。マグッと食べたところで気がついた。
これは、私の悪い癖、またやってしまった。
めんどくさい、もうやりたくない、嫌だと思ったことはすぐ鷲掴みにして捨ててしまうタイプ。
こんなところで、しかも彼に見られてしまった。
全く知らない人なのに、彼には醜いところを見られたくないと思えた。過去も、知られたくない。
私は恐る恐る食卓に座るみんなを見た。みんなの顔は、ポカンとしていた。
しばらく続く沈黙、、、
「フッ、ハハハッ」
沈黙を破ったのはまさかの笑い声
「豪快すぎませんか?クスッ」
彼はそう言って口元に手を当て、華奢に笑った。
わ、笑われるのはそれはそれで恥ずかしいー!///
「かわいいですね」
へ?、、
私が可愛い?そんなの初めて言われた。
頬が熱い。これはきっと、ご飯を食べて温まったからかな、、
カァアア//
私の顔は火を噴くように熱く真っ赤。
彼は私の顔を見て。
「顔が真っ赤ですよ。熱でもあるんでしょうか」
焦った声でそう言った。
熱じゃない、火照ってるだけ。なんて言えない。
こんな獣みたいなところ見られてしまったのだ。熱はいつまでも引かない。
「失礼します。」
彼はそう言って私のおでこに自分のおでこをつけた。
「熱い、熱があるのでは、、、」
彼はそう言った。
思考停止中、、、
ちっ、近い、、!彼の顔がほぼゼロ距離!
ひゃああ!さらに暑くなる!
私は咄嗟に彼の胸元を押して除けた。
「あ、す、すみません。姫様の気持ちも考えずに、気持ち悪かったですよね。申し訳ありません。」
彼は深く頭を下げた。
違う、そうじゃない。恥ずかしかっただけ。
彼を勘違いさせて傷つけてしまった。
もう、いやだ。失敗ばかりだ。部屋に戻りたい
(ガタッ
私は椅子を立ち、早足で部屋へ戻った。
バフッ
ベッドに顔からダイブし、さっきのことを考える。
獣のように肉にかぶりつき、彼を傷つけ、場の雰囲気を壊して、何がしたかったのだろう。
私は今日だけに何回失敗したのだろう。みんなを傷つけてしまった。
生まれかわっても。失敗を犯してしまう。
もし、もう一緒に食事をしたくないと言われてしまったら?
出て行けと言われたら?
失望されてしまったら、、、
怖い、怖い、イヤだ。
私は強く布団をつかみ頭まで被った。
コンコン
ふと、ドアがノックされた。
私は入ってきて欲しくないので、返事(居るよアピール)はせず布団に潜ったままだった。
「入ってもよろしいですか?」
えっ、、、
私はまさかの発言にどうしようと焦った。
「失礼します」
彼は入ってきた。
どうしよう。なんと言われるのだろう。
彼の足音が近づいてくる。
グッと敷布団に重みがかかり、彼が私のそばに座った。
「アムア」
毛布に手を添え、彼は優しくつぶやく。
「ほんとうに申し訳ない。目が覚めたばかりで状況も読み込めていないのに、僕が急がせてしまった為に。」
,,,
ここで、否定が出来たら、
「顔をお出していただけませんか?」
,,,
私は静かに顔を出した。
きっと情けない顔をしている。
でも彼の言葉はそうさせてしまう力があるように引き寄せられる。
彼は私の頭を撫でた。
撫でられるだけでこんなにも落ち着くのだ。
猫であればゴロゴロと喉を鳴らしているだろう。
「あの、少し時間頂けますか?」
彼はそう言い私を見た。
コクッ(* . .))
と頷き、私は布団から出た。
彼の差し出した手を握ると。
「悪いことは好きですか?」
とイタズラ好きの子供のようにふにゃっと笑った。
へ、、、?
*
私は小さい頃からそんなことしたことない。全て決まりにしたがい言われたことをするのみ。
それをしても褒められる訳でもない。
そんな中で育ったため、イタズラというワードには反応してしまう。
時折外から聞こえたはしゃぐ子供たちの声。
羨ましく思ったって私の生活が変わることは無い。
*
彼の言葉に胸がトキメキ、頷いた。
彼は静かに部屋を出て薄暗い廊下を足音を立てないように歩き出した。
何をするのか、キョトンとした私に
「夜の城を抜け出してみましょう」
そう言った。