夜の城はどこか不気味。
でも彼がいると何も感じない。怖くもないし寂しくもない。
やがて1階に続く長い階段に差し掛かった。
「じゃ、行きますよ。」
彼はヒョイと私をお姫様抱っこして長く続く階段の手すりに飛び乗り滑り出した。
ひゃあああ!
何事かと頭が状況を理解出来ていない。
「アムアの髪が当たって前が見えないです!」
そう言ってきゃいきゃいしている彼。
かわいい。この笑顔、守りたい。
私の髪が風になびき彼の顔にかかる。
嫌な顔ひとつせず、
彼の顔はとても楽しそうで、小さい子供のようだった。
王家の者がこんなことしていいの?怒られるんじゃないか。
いや、違う、怒られるからやるんだ。今ここにいるのも怒られること。だったら、今は何もかも忘れて いけないこと をしたい。
彼は トンッ と両足で降りる。
フフっと彼は笑い
「このまま一緒に行ってもいいですか?」
このまま、とはお姫様抱っこのまま。ということ。
このままだと近すぎてどうにも私の頭がついていけない。と思いつつ、はい、このままでお願いしますと言いたい。
それからは彼の慣れた手つきで器用に鍵を開け外に出た。
表の扉は門番がいるため、裏口から。
彼が私を下ろしたのは、昼間きた花畑だった。
でも、ここは本当に昼間の花畑?月のあかりに照らされてキラキラ光っていた。
黄色の花が金色に見える。
なんて綺麗なの,,,
全ての意識が奪われ全身から力が抜けるようだった。
「夜に来ると全く違うでしょう?」
コクッ(* . .))
「噴水はもっと綺麗ですよ」
これより綺麗なの?もう全てが溶けてしまいそう。
キィ とドアを開けドームの中に入る。
そこは妖精の住む世界のようだった。
この世の全ての美しく綺麗なものが集まったような、神秘的だった。
昼間足をつけた水は瑠璃色に透き通り光る。
彼の目のようだった。
彼は水に足をつける私の隣に座り、
「ここへ来たのは、話したいことがあったからです。」
そう言い、こちらを見た。
「唐突ですが、僕はあなたのなんなのかご存知ですか?」
彼が、私の?言葉遣いからしてお供とか、そばで守る人かと思っていた。
私が左右に首を振ると、
「ですよね。僕は、あなたのー。」
ドガアァアアン!!
ものすごい音と共にドームの窓の外がピカっと光った。それと同時に「うわぁ!」と彼が跳ねた。
彼の最後の言葉に重なり、聞こえなかった。
私と彼は顔を見合せ、彼は アハハッ と笑った。
「びっくりした〜。大丈夫ですか?」
(*’ ‘)*, ,)
「フフッ 逆に僕の方がビビってましたね笑」
「不覚です、女性の前でしかもアムアの前であんなに叫んでしまって,,,」
彼は心底恥ずかしそうに顔を赤らめた。
クスッ
私は思わず小さく笑ってしまった。
口元に手を当て彼を見ると、
彼は口をぽかんと開けて私を見ていた。
あれ、なんか、、、あ、笑ったから怒ったのかな
どうしたのかと私は彼に顔を近づけた。
「ムリデス,,,」
え、、?
言葉が小さすぎて聞き取れなかった。
「なんでもないです。そろそろ戻りましょう。見回りの者が来る時間です。」
彼は急に冷静になり立ち上がった。
それに合わせて私も立ち上がる。
あ、私、まだ歩くの慣れてなかっー。
考えるより先にふらっとよろめき噴水の中にドボンしそうになる。
あっ
私は咄嗟に目を瞑った。
しかし、彼がすぐに私の腕を握り噴水とは反対の方向に離した。その拍子に彼は噴水にドボン。
バシャ!と顔を出し、びしょ濡れになって呆気に取られる彼。
「うわぁ、またやってしまった。大丈夫ですか?」
私の心配はいいから!そのままいると風邪をひいてしまう!
わたしはすぐに噴水の縁をつかみ彼の手を握り引き上げた。
彼のサラリとしたマッシュ寄りの髪が濡れ、頬に張り付いている。そこから滴る水すら美しい。
水も滴るというのはこのことか。
見とれている場合ではない。すぐに部屋に戻らないと。
歩くのはまだ不自然になるが、直立で立ち止まることは出来る。
座ったままの彼を立たせようとすると、彼は私をすぐ側へ引き寄せた。
!?
彼の濡れた手が私の頬へ伸び、生ぬるく暖かい感触が伝わる。
彼の目は愛しいものを見るようにとろけていた。
そのまま吸い込まれそうだった。
「これが望まれたことなら,,,」
彼は確かにそう呟いた。なんのことか全く分からなかったが、静かに硬直する私に気づいた彼はようやく理性を取り戻したかのようにハッとして
「すっすみません!俺、何してるんだろ!お顔を濡らしてしまって!本当にすみません!すぐ拭きます!」
そんなに謝ることだろうか。あまりにもありえない出来事すぎて硬直はしていたが。
「すぎた真似を致しました ! 王家の姫の意図なく触れるなど、、、!」
彼が私に頭を下げると、とても不愉快でならない。頭を下げる必要なんてない。
スッ…
私は彼の頭へ手を伸ばし優しく撫でた。
「,,,え?」
彼は半分理解出来ていない顔だった。
(大丈夫)
私は口パクで言い、微笑んだ。
彼はすぐに察してくれた。
「あ、ありがとうございます。取り乱してしまいました。ふぅ、」
深呼吸して
「行きましょう。」
差し出された手を今度はしっかりと握り返した。
〜
部屋に戻った私はすぐに眠りに落ちた。
【♥が100行けば次だします。】
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