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何回か試合をした後、明日香は晃河のチームと当たる。晃河が見えた明日香が手を振ると、晃河も少し恥ずかしそうに手を振った。
試合が始まりしばらくして、明日香がサーブの番になる。明日香がサーブを打つと、晃河の方へボールが飛んでいく。だけど、晃河はボーッとしていて、ボールに気づかない。
(まずい…このままだとボールが…)
明日香は晃河に向かって叫ぶ。
「晃河!危ない!」
晃河はその呼び掛けに気づいたが、反応が遅れたようで、ボールが晃河の顔に直撃する。晃河はそのまま後ろに倒れた。
「晃河!」
仲間たちが晃河の方へ行く中、明日香も晃河の元へ走っていく。
「晃河、大丈夫か?」
クラスメイトにそう聞かれた晃河は小声で何か言う。後ろの方で見ていた晃河には喋ったということしか分からなかった。
すると、クラスメイトが振り向いて明日香を見て言う。
「明日香だって」
「俺?」
(ボール当てちゃったからかな?)
明日香はクラスメイトがどいたところに座り、晃河の顔を覗き込む。
「晃河?俺だよ」
「…明日香」
そう言って晃河は黙り込んでいる。そこに事態に気づいた先生がこっちへ来る。
「どうした?」
クラスメイトが先生に説明すると、先生は晃河の傍による。
「御影、大丈夫か?」
先生がそう言うと、晃河はゆっくり起き上がる。
「…大丈夫です」
「ボール当たったとこ赤くなってるから、保健室行ってこい。誰か…」
そこで言葉を止めて、先生は明日香の方を見る。
「明日香、お前のボールが当たったんだろ?保健室連れてってやれ」
「あ、はい。分かりました」
先生に促されて明日香は晃河を保健室に連れていく。保健室に入り辺りを見回すが、先生の姿が見当たらない。
「…先生いないから、とりあえずイス座ってて」
「…うん」
晃河が椅子に座ったのを確認した後、俺は棚を見る。
(勝手に漁るのは良くないか…)
そう思った明日香は晃河の横の椅子に座る。
「晃河。なんでボーッとしてたの?」
「えっ…ちょっと考え事してて」
「考え事?何?」
「それは…」
晃河はそこで言葉を止めて、黙り込む。
「なに?言いずらいこと?」
「…うん…まぁ…」
「ふ〜ん。晃河もエッチなこととか考えるんだ」
明日香がからかってそう言うと、晃河は慌てた様子で言う。
「違うよ!俺は明日香のこと…」
晃河はそこで言葉を止め、頬を赤くして目をそらす。
「なに?俺の事考えてたの?」
「その…明日香のジャージ、懐かしい匂いがしたから、昔のこと思い出してて…」
恥ずかしそうにそう言う晃河に俺はクスッと笑う。
「そうなんだ。実は俺もさっき、昔のこと思い出してたんだよね」
「そうなの?」
「うん。ちっちゃい頃も晃河に上着貸してあげたなって」
「覚えてたんだ」
「覚えてるよ。晃河との大切な思い出だし」
「そ、そっか」
明日香はそう言う晃河の頬に手を伸ばした。
「さっきより赤くなってる」
「えっ?」
明日香は晃河のボールが当たった所をじっと見る。そんな明日香を見て晃河はボソッと呟く。
「…近い」
それを聞いた明日香はサッと晃河から体を離す。
「あ、ごめん。嫌だった?」
「いや…その…なんか恥ずかしくて」
目を逸らしながらそう言う晃河に明日香は好奇心が湧く。
(晃河、こんな顔するんだ…なんかもっとみんなが知らない晃河が知りたい)
「…晃河って、可愛いよね」
明日香がそう言うと、晃河の頬が真っ赤に染まる。
「な、何言ってんの。そんなの初めて言われたし…」
「普段の晃河はかっこいいもんね」
「ま、まぁ…」
そう言う晃河に明日香はふふっと笑う。
「自分で認めるんだ」
「まぁ…みんな言ってるし…」
「そうだね」
明日香はそう言った後、晃河の顔を覗き込みながら言う。
「可愛い晃河を知ってるのは俺だけだね」
「なっ…」
少し沈黙が走った後、晃河は明日香の体を両手で押し戻しながら言う。
「…そういうこと言わないでよ」
「なんで?」
「なんでって…」
再び沈黙が走り、晃河が口を開けた途端、ドアがガラガラッと開く。明日香と晃河はドアの方を見た。保健室の先生だ。
「あら、あなた達どうしたの?」
「あ、晃河の顔にボールが当たっちゃって」
明日香が立ち上がってそう言うと、先生は晃河に近寄り、顔を覗き込む。
「赤くなってるね。冷やそっか」
そう言って先生は保冷剤を用意し、晃河に渡す。
「それで冷やしとけばとりあえず大丈夫だから。氷溶けたらまた持ってきて。替えてあげる」
「ありがとうございます」
晃河はそう言って立ち上がる。そしてそのままドアへ向かっていった。明日香も晃河に続いてドアに向かう。
「失礼しました」
「はーい、お大事に」
保健室から出てしばらく歩く。明日香はふとさっきのことを思い出して晃河に問う。
「なぁ晃河、さっきなんて言おうとしてたの?」
「さっき?」
「そう。俺がなんで?って聞いた後」
「あぁ…」
少し沈黙が走った後、晃河が言う。
「…なんだっけ。忘れちゃった」
「え〜。気になるじゃん。また思い出したら教えてよ?」
「あ…うん。わかった」
そう言って晃河はぎこちなく笑う。
(また言いづらいこと…?)
明日香は歩きながら考える。
″ 可愛い晃河を知ってるのは俺だけだね″
(…あんなこと言われたら嫌だよな)
「ごめん。さっきは変なこと言って」
「いいよ。でも、もうやめてね。あぁいうの」
「そうだよね。ごめん。もうしないから」
「ありがとう」
何となく気まづい空気になりながら、2人は体育の授業に戻った。
あの日から数日が経った頃。明日香は放課後、忘れ物を取りに教室に戻る。教室に入ろうとした時、中から女子の声がした。
「晃河くんが好きです!付き合ってください!」