side:オスカー
フーゴ「兄貴ー!」
昼の12時過ぎ頃、ノエルと話していた俺の元に弟であるフーゴが走ってやってきた。
オスカー「どうした、フーゴ?」
フーゴ「映画観に行こーぜ、映画!」
フーゴにしては珍しい提案で、思わず目を丸める。フーゴは長時間座っていたり、じっとすることが嫌いだから、余裕で1時間は座ってないといけない映画は嫌いだと思っていた。
オスカー「映画?何か観たいものでもあるのか?」
ではそんなフーゴが映画に行きたいという理由は何なのか。恐らく観たい映画があるからだと思うが、その観たい映画が何なのか分からない。思わず問いかけると、フーゴは嬉しそうにこう答えた。
フーゴ「あぁ!悪魔が主役の映画なんだけどな…!」
カロン「呼んだか?」
フーゴ「呼んでねーよ!」
フーゴの映画のあらすじ説明が早々に切られて腹が立ったのでとりあえずカロンは1発殴っておいた。その後すぐフーゴに向き返って、
オスカー「分かった。その映画、観に行こう」
と言った。幼少期はフーゴの願いを殆ど叶えられなかったが、今は違う。最大限の力を使って、出来る限りフーゴの願いは叶えているつもりだ。今回もこれは、フーゴの願いだ。兄である俺が、フーゴを幸せにしないと。こんな使命感があった。
フーゴ「サンキュー、兄貴!」
フーゴ「んじゃ早速行こーぜ!」
オスカー「あぁ」
フーゴに手を握られる。それに応えるように、俺もフーゴの手を握り返す。やはり、フーゴの手はとても暖かくて、優しい。
フーゴ「てことでノエル!行ってくるなー!」
ノエル「はーい、気をつけてくださいましー」
ガチャリとトビラを開けて、1歩を踏み出した。
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side:フーゴ
兄貴のバイクに乗って、中々来る機会のない映画館にやってきた。やってきたはいいものの、観たい映画の上演時間はまだまだ先なので、とりあえずポップコーンとジュースを買って、映画楽しみだな、なんて会話してた。
オスカー「そろそろ時間だな。席に行こう」
フーゴ「分かった」
結論から言うと映画は面白かった。今回は珍しく俺も最後までしっかりと映画を見ることができ、満足感に浸る。兄貴の方を見ると、兄貴もしっかり映画を楽しんだようで、満足そうな顔をしてた。
オスカー「今回は最後まで見れたか?」
映画館から出て、さぁバイクに乗るぞというタイミングで、ふと思い出したかのように兄貴がそう問いかけてくる。
フーゴ「あぁ、珍しくな!」
勿論自信満々に答えてやった。
オスカー「そうか、良かったな」
何か軽く流されたような気がするがとりあえず気にしないことにした。
オスカー「また機会があったら、一緒に映画観に来ような」
フーゴ「おう、覚えてたらな」
オスカー「俺がずっと覚えてるから安心しろ」
俺は一睡でもしたら約束なんて忘れてしまうだろうが、兄貴はずっと忘れやしないだろう。幼い頃、ずっと夢に見てた、2人の約束だから。結局、その約束が叶うことはなかったけど。
でも、今なら、叶えられる気がした。
オスカー「そろそろ帰るぞ、フーゴ」
いつの間にかバイクに乗っていた兄貴が、こちらに手を差し出している。俺は勿論、迷いなくその手を取った。
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side:ノエル
ガチャリ
ノエル「おかえりなさいまし。デートは楽しめましたか?」
フーゴ「デートじゃねぇよ、バカ!」
ノエル「ふふ、ちょっとからかっただけですわよ」
パイソン「夕食はもう出来ている。早く手を洗ってきてくれ。トードとスラッグ、あとカロンとノエル嬢は手伝ってくれ」
パイソンにそう声をかけられ、壁にかかっている時計を見上げる。確かに、もう夕食の時間だった。2人が洗面台に向かったのを見て、ソファから立ち上がり、パイソンやトード達のいるキッチンへ向かう。
パイソン「トードは机を拭いてきてくれ。スラッグは箸の準備で…ノエル嬢とカロンは食器運び。分かったか?」
パイソンがそれぞれの役割を話したところで、スラッグが声をあげる。
スラッグ「ねぇねぇ、箸ってどこ?」
ノエル「食洗機の中にあると思いますわよ?」
スラッグ「えぇ、ないけどなぁ…」
パイソン「箸はこっちで探しておくよ。スラッグは…そうだな、トードの手伝いに行っておくれ」
スラッグ「分かった」
トード「おースラッグ!丁度いい、ふきんしまってこい!」
スラッグ「えぇ…!?自分でやってよ、もぉ…」
文句は言いながらもちゃんと片付けてくれるスラッグの優しさに感心しながら、カロンと共に食器を運んでいく。
流石にこれだけの人数のサラダやお米を運ぶのは大変で、半分以上はカロンにやってもらった。
次第に皆集まってきて、全員が席に着いた。
いただきますの合図で、皆一斉に食べ始めた。しかし、どれだけ経っても、オスカーが全く食事に手を付けていないことに気がついた。
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side:オスカー
ノエル「オスカー、ご飯食べないんですの?」
ノエルに声をかけられ、はっとする。 何故かは分からないが、最近、妙にぼんやりすることが多くなった。実を言うと、映画を観ている最中もぼんやりしていて、内容なんて全く頭に入ってこなかった。こんなの寝ていたとほぼ同等だ。でも、フーゴにはバレないように、それとなく話を映画の内容から逸らしていた。
オスカー「…いや、食べる」
フーゴ「…しっかり食えよ、病弱野郎」
そう。フーゴが言った通り、俺はまだ病に弱い身体であることに変わりはない。月に1回は発熱するし、季節の変わり目にはさらに酷い風邪を引く。本当にこの身体は治したいが、どうしても治せないので、とにかく生活リズムを崩さないように心掛けている。まぁ心掛けても無意味だったわけだが。
とりあえず食べよう。そう思い手を動かそうとした。
…そう、動かそうとしたが、何故か動かせなかった。それどころか、視界が傾いている。フーゴにでも小突かれたのだろうか。そんな呑気なことを考えていたら、
いつの間にか、意識を手放していた。
(多分)続く
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何か事故であとがきありませんでした☆保存し忘れただけです。
こっからはあとがきなので、興味無い方は飛ばしてもらって大丈夫です!
被虐のノエル、数年ぶりに再熱来ました。数年前は誰推しだったか分かんないんですけど今は圧倒的ドレッセル兄弟です。無理、可愛い。最高。
とりあえず何が言いたいかというと、
ドレッセル兄弟はいいぞ。
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