「ふあぁ~……。うう、頭が痛い」
ルーザーさんと宿屋に帰ってきて次の日。目を覚ますと自室だった。彼とは昔の話をすることはなかった。
ルーザーさんは過去について話すことはないんだろう。僕なんかに話しても仕方ないと思っているともいえるけど。
「ムラタさん。昨日はご機嫌だったね~」
「あ、ははは」
支度をして部屋を出るとルルさんが朝食の準備をしてくれていた。この宿屋は彼女の料理で繁盛してる。食事だけで帰る人もいるくらいだ。
「今日も美味しいですルルさん」
「ははは、ありがとね」
ルルさんの食事を楽しんですぐに冒険者ギルドに行く。
冒険者ギルドに向かう途中、村スキルからの声が聞こえてくる。
『小麦がなりました。マスター、ありがとうございます』
小麦畑が見事な金色色になっている。一日二日でなる小麦か、凄いな。
『小麦をパンにするには粉にしなくてはいけません。風車を作ってはくれませんか?』
続いてお願いの声が聞こえてくる。風車で粉にしてパンにするか。これは聞かないわけにはいかないお願いだな。すぐに了承して風車が村にできあがる。
「ムラタ!」
「あ、ルーザーさん。どうしたんですか?」
冒険者ギルドの前に着くとルーザーさんが手を振ってくる。一度お酒を飲んだだけで少しだけ心を開いてくれたみたい。
「ははは、気持ち悪い。男同士で」
ギルドの前で話しているとエクスがわざわざ体をぶつけてギルドへと入っていく。まったく、素直じゃない男だな。
「は、はは。ムラタじゃあな」
「え? 中にはいらないんですか?」
「ああ、エクスがいるからな。今日はやめておく」
顔を青ざめさせるルーザーさんは路地に消えて行ってしまった。エクスに嫌われてるのがわかっているから自分から離れてるんだな。本当は好かれているのに。
「エクス」
僕は居てもたっても居られずに彼に声をかける。依頼を見ていた彼は声で振り向くとフンッと鼻息を荒くさせる。
「呼び捨てか新人?」
「あ、ごめん。ってそうじゃなくてさ。もっと素直に」
「あ? 俺が素直じゃないってか? 寄生虫に寄生虫って言って何が悪いんだ?」
僕の言葉に腹を立てるエクスは僕の胸ぐらを掴んでくる。僕は作り笑いで答えることしか出来なくて言葉をなくす。
「ちぃ。ゴブリンもまともに倒せないような雑魚のくせに。なんでルーザーはこんなやつに……」
「エクス?」
「フン。声かけんな。俺はお前の友達じゃねえぞ」
エクスはいら立ちを見せて適当な依頼を手に取ると冒険者ギルドを出て行った。
彼を見送ると僕も依頼を手に取る。お金はそこそこあるけど、毎日働かないとね。
「今日も薬草の依頼にするんですか?」
「はい。ついでにゴブリンがいたらやるつもりです」
「そうですか。助かります。ゴブリンを狩ってくれる冒険者は貴重ですからね。なんせ報酬が少ないので」
クリスさんが声をかけてくる。
ゴブリンの報酬って少ないのか。かなりありがたいんだけどな。
もっと危ない魔物を狩るよりはいいしね。
「ふう、冒険者ギルドに依頼だ」
「え? ドールスさん?」
冒険者ギルドの扉が勢いよく開く。大量の依頼書をもって衛兵のドールスさんが入ってくる。
「王都への街道に魔物が大量に生まれたようだ。少しでもいいから間引いてくれと声がかかった」
「王都への街道ですか? 兵士が巡回してるはずですけど?」
「ああ、そのはずなんだがな。あの群れの襲撃から5年だろ? 少し甘くなっているようでな。サボっていたみたいだ」
ドールスさんはそう言って掲示板に依頼を張っていく。クリスさんはため息をついて一緒に張り出す。
「ゴブリン、トロール、オーク、ウルフ、コボルト……。多種多様ですね」
「ああ、あの悪夢の再来といった様相だ。この町、【オルクス】にもくるかもしれない。警戒を強めないとな」
依頼書を見て呟くとドールスさんが険しい顔で呟く。
依頼書を張り終わると彼は冒険者ギルドを後にする。最後まで険しい表情だった。それだけ大変な状況ってことか。
「この依頼受けるぞ」
「俺はこっちだ」
「はい。ありがとうございます」
冒険者達が張られた依頼を次々に取っていく。朝から気合の入った様子でみんな外へと出ていく。
「僕も……。って無理か。分相応、僕は薬草とゴブリンで精いっぱいだな」
僕は無理せず森へと旅立つ。
『赤い夜がやってきました。防衛者を雇ってください。【赤い騎士ジャネット 100ラリ】【青い剣士ジャン 100ラリ】』
森に入ると赤い夜が始まる。僕はジャネットとジャンを雇って戦わせる。
横目で彼らの戦いを見ながら薬草を探す。すると薬草は簡単に見つかりホッと一息つく。
『赤い夜に勝利しました。報酬が得られます』
ジャネットもジャンも簡単にゴブリンを倒す。敵の数は25匹、村人の数と一緒だ。
20人から増える数が少なくなったな。そんなに甘くないと言ったところかな。
報酬は【2500ラリ】と【銅の剣】か……。折角買ったのにまた手に入ってしまった。僕自身の運の問題かな。日本にいた時も運は良くなかったからな。うまくいかない時もあるもんだ。
「はぁ~、質はもらった方がよさそうだ。まあ、予備として二本持っておくのもいいかな。親切に鞘もついているしね」
腰のベルトに剣を差してみる。見た目はなかなかカッコいいように見える。剣ってやっぱりいいな。
「よし、帰るかな。ん? なんだこの揺れ」
薬草も持ったし、一度帰ろうと思って振り返る。すると小さな揺れを感じた。地震ではない、これは何か大きなものが地面に落ちた時のような揺れだ。木々が揺れ、葉が落ちてくる。
『マスターの危険を感知。助けを呼びますか? 【赤い騎士ジャネット 100ラリ】【青い剣士ジャン 100ラリ】』
「やっぱり何か来たのか。じゃあ今回はジャンで」
嫌な予感がしているとスキルの声が聞こえてくる。僕は迷わずジャンを呼び出す。
綺麗な青い瞳と青い髪の剣士が現れて僕にお辞儀をしてくる。
「おい! ムラタ! ……ってそいつは?」
ジャンが剣を抜いて音の方向へ振り返ると、町の方からルーザーさんが息を切らせて現れた。
ジャンを見て固まる彼は驚き戸惑ってる。まるで幽霊を見ているようなそんな様子。
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