「すいません立ち話してて」
「いや、全然ええよ。友達?」
「え、いや…同じ風紀の…人です」
関係性をなんて言ったらいいか分からず口籠る。
「ふーん、なんかめっちゃ仲良さそうに見えたけど」
「え、いや、そんなことは…」
「ええことやん。でもちょっと妬いちゃうなー」
校門を抜け校舎へと歩きながら、2人は並んで歩く。
「何がですか?」
「え?だって雪乃ちゃん俺の名前呼んでくれへんやん」
あー、確かに…。
と思い起こす。
人の名前呼ぶの苦手なんだよな…。
「…善処します」
「何やそれ」
思わぬ返事に笑う鬱先生。
「まぁええわ」と見逃してくれる。
「今日もテレポートで移動すんの?」
「そうしようかと」
「大変やない?」
「全然大丈夫です。とりあえず朝のHR始まるまでお供し…一緒にいます」
言い直せば何だか満足げな顔で雪乃を見る。
「いやーありがたいけど、こんだけ一緒におるとこ見られたら勘違いされてまうかもなぁ」
「彼女さんたちに?」
「俺の彼女たちはそこんところ分かってくれてるから大丈夫や。そうやなくて、周りの鬱陶しい連中にやな…」
「あっれー鬱くんじゃん」
昇降口付近で声をかけられる。
振り向くと、見知らぬ顔がいた。
「おっはー」
「げ、噂をすれば…らっだぁじゃん」
そこにいたのは青いニット帽を被った男子生徒。
「その子だぁれ?彼女?」
「いや、ちゃうけど…」
「えーじゃあ何で一緒にいるの?ナンパ中?」
「ちゃうわ。色々あって今仲を深めとるとこや」
その言い方だと誤解されるのでは?
「やっぱそうじゃん。ほんと手が早いよね鬱くんは」
友達だろうか。絡まれている鬱先生の陰に隠れつつ、少しでも鬱先生に危害を及ぼそうものなら容赦せんぞ、と見張る。
しかしそんな素振りはなく、親しげに話しているだけだった。
「まぁお邪魔したら悪いから行くね」
らっだぁと呼ばれた人物はそう言い残し、去っていった。
「あいつ絶対言いふらすやろな…」
「お友達ですか?」
「んー?んー、まぁそんなとこ」
そんな会話をしながら教室へ向かう。
ふと視線を感じた気がして、雪乃は後ろを振り返る。
「………」
「雪乃ちゃん?」
「…いえ、何でもないです」
気のせいか、と雪乃は歩を進めた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!