──────ノイズ視点──────
夢とは?──────夢とは想像の塊。結晶。無限の可能性がある。しかし、その無限とはプラス方面だけではない。もちろんマイナスにいくこともある。悪夢や明晰夢、瑞夢、吉夢──────それ以外にも夢幻、夢中、夢想。ありとあらゆる悪いことやいいことが夢、という言葉で1括りされている。ひとえに、それは無限に力を持つからだ。
時に、夢は力を与え、時に、罰を与える。しかし、生きている限り、その夢という罰と解放は影のように付きまとう。俺が、果たしていえにとって希望なのか、絶望の象徴なのか。俺は一生理解できないだろう。
俺はそんなことを言いながら精神空間へと戻る。安心して欲しいのは既にいえの体は寝ている。誰にも心配はかけないだろう。
精神空間に潜り込む。その空間は──────まさに、地獄と天国の狭間であった。
いえは宙に浮いている。が、それに気づいてないかのように足を抱え、そこに顔を埋めこんでいる。そのまわりに罵詈雑言を浴びせる黒い集団が永遠にまとわりついている。しかし、そのいえの腕や頭、手にまとわりついているのは白い光。白い光はいえが小さく縮こまっているのを見て、困ったように撫でたり、励ましの言葉を送ろうとしているが、それは罵詈雑言の嵐に上書きされてしまう。
いえは、何も言わない。ただ、ひたすらに耳を、顔を塞ぎ、何も感じないように、閉じこもる。全てを否定するかのように。もしかしたら俺が他の奴らと修行している間…ずっと?
───面倒くさいやつだ。この世界はあくまで夢なのだ。自分の想像が、強い感情こそが、この世界を上書きするために必要なことなのだ。それをせずに、ただ、ただ、現実を突き放し、直視しない。向き合おうとしない。笑ってしまうほどに馬鹿だ、そう思った。…まあ、俺がやらないといけないのはいえのメンタルケアだ。面倒くさいが、俺が希望を見せなければならない。
俺は無言で剣を取り出す。そして、静かに絶望を斬る。斬るたびに、ノイズが俺の耳に届く。
「無能力者が何をしても意味が無い」「お前が見殺しにした」「お前が犠牲になれば…!!仲間は助かったんだぞ!?」「死ね」「役に立たない」「お荷物」「弱すぎる」「人間ごときが」
そんな、数えきれない罵詈雑言がこの世界にこだまする。こんな、戯言に耳をかしていたのか、と思うと馬鹿げてると思う。所詮、この評価も自己肯定感の低さから来ているのだろう。魔族を滅ぼしている時点で化け物じみていることを自覚していないらしい。どうやら、メンタルを鍛えた方がいいな、なんで改めて考える。俺は白い光に導かれるがままに、いえの目の前にたどり着く。
「起きろ。いつまで逃げてる?」
俺がそう声をかけるとビクッと肩を跳ねさせた後、掠れた声が聞こえた。
「ごめん…なさい…ごめん……なさい」
そう謝罪を繰り返しているが、正直そんなものいらない。さっさと立ち直ってメンタルを鍛えて、魔法も、剣の扱いも、銃の扱いも覚えてもらわないといけないのだ。こんなところでくじかれてしまっては困るのだ。
「謝罪はいらない。結果でみせろ。何もせずに終わるなら全力ぶつけてから散れよ。だっさいな。」
そう、煽る。しかし、いえはまだ弱気で。
「失敗して…足を引っ張るなら…俺は、何もせずに終わる。」
変なところで意思固いな、こいつ。そう思いながら俺はさらに煽るように言葉で畳み掛ける。
「お前の弱さでの失敗なら強者がその失敗を埋める。変な配慮をするな。」
そう言い切ってやれば、なにかが吹っ切れたかのように乾いた笑いを浮かべて顔を上げる。
「ハハッそうだよな…っ!俺くらいの失敗は誰にも気付かれずに処理されるんだよな…っっ!!いないも同然だもんな…ははっ!」
そう狂ったような笑いをうかべるその顔は本当に夢での出来事なのか疑うほどに酷かった。目に濃い隈を刻み、青白い唇はガタガタと震え、汗をダラダラと流し、顔は生者とは思えないほど青白かった。それに加え、汗でグッチョリとした髪は、生気を失ったかのようにだらりと垂れているだけだった。
非常にまずかった。どうやら地雷を踏んだらしい。心を軽くするどころか、さらに重い枷をつけてしまったらしい。…ここにいるのが俺じゃなかったら慰められたのだろうか?俺は、人の慰め方なんて、優しくする方法なんて知らなかった。
だから、こんな方法しか俺にはできなかった。
「…剣をとれ。いえもん。」
俺と同じ名前を呼ぶ。そして、いえのほうに剣を投げつける。いえは表情を削ぎ落とし、その剣を取る。それはただの鉄剣だった。
「かかってこい。お前の力を。存在を。…俺に証明しろよ。」
「…別に。俺が負けて終わるだけだ。やる意味は無い。」
「なぜ諦める?」
いえの一方的な決めつけ。それには名ばかりである勇者の俺が許せなかった。諦める。その言葉は俺がいちばん嫌いな言葉のひとつだった。
「その諦めはどう決めた?俺の強さか?それともお前の弱さからか?ふざけるな。人間が唯一人外に勝てるのは知能でも、頭脳でも力でも、悪意でもない──────感情だ。人間は人生が短い。だからこそ、その間で人外の一生の感情の起伏をその短い期間で経験する。」
目の前に相対するそいつは訳が分からない、そんな表情をする。そして、俺は無言で剣を構える。そして、一瞬で距離を詰める。最初な戸惑っていたいえはその気迫に圧倒されたのか、しかし、しっかりと守りの姿勢を取る。
俺は、戦いでしか、相手を慰める方法を知らなかった。
ここで切ります!おーひさしぶりです皆さん!待ち望んでいたのかはたまたまなんも思われていないのかは不明ですがとりあえずできましたー!よかったよかった!うん()
190話達成しました!てことで記念イラスト↓↓↓
画質悪いな…今回はレイラーさんとみぞれさんですね!一言で表すなら《幻想》ですかね!意味や考察はお任せします!
それでは!おつはる!
コメント
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…戦争前なんだろうなぁ…なんか悲しく感じますわ…
今日は早く見れた!(1時間遅れ)