──────ノイズ視点──────
キンッカキンッキィィンッッ
金属同士がぶつかり合う音が夢の中をこだまする。どちらもお互いを殺す気は無い。ただ、俺は、戦いで気持ちを変えさせたいのだ。真っ当な慰め方は、真っ当な奴にしかできない。血だらけの俺には血で教えるしかないのだ。
「───ッッ!!?」
俺はいえの一瞬の隙をつきその肉体に傷を入れる。しかし、そこは頬で、なおかつ掠めた程度であった。夢だからか、出血はしない。痛みもない。けれど、”当たった”という感覚はあるようで、その表情を歪ませる。
「…次は腕。死ぬ気で守れ。」
俺がそう宣言すると同時に白い光が俺の両手に、両足にまとわりつき、拘束させられる。そして、その拘束したまま、宙へとうかされる。
「…ッッ!!!」
「───は?何…これ?」
俺はこの拘束の強さに衝撃を受けたが、いえも何故か衝撃を受けている。その間にも、俺は拘束を外そうとするが、なかなか破ることは出来ない。
「…っ───は…っ!」
いえは好機と見たらしく、その剣を俺の心臓へと突き立て──────そして貫通させる。勝負はあっさりとついた。───と、同時に俺は白い光から解き放たれ、そのまま地面に叩き落とされる。
「…ッッ」
俺は心臓を貫かれたというのに痛みはなく、それに、出血もしなかった。また、叩き落とされたと言うのに、全身に痛みが走ることもなかった。
「───ほら、諦めなければ…勝てただろ?」
しかし、俺が負けたというのは良い誤算だった。そうすればいえは俺に勝ったということで誇れるし、何より自信がつくだろう。───と、思ったがそうでは無いらしい。その表情は苦痛に歪んでいた。そして、激昂した様子で俺に感情をぶつける。
「───ッッざけんなッッ!!!!手加減しておいて…ッッ何がッ何が勝てただよッッ!!!!結局はお前も信じてないじゃないかッッッ!!!!」
その大声に反して、声も、足も、体も。全身が震えていた。こんなにも、こんなにも感情を表に出すいえを俺は、俺は見た事がなかった。
弁明しなければならない。そう思って、いえの誤解を解こうと試みる。
「違う。俺は本気だった。紛れもないお前の実力で───」
「じゃああの拘束はなんだよ!!!わざとらしすぎるんだよ……ッッ!!なんで…そんな俺を惨めにするんだよ…?」
最初は怒号のように荒々しい声が最後には掠れた声で弱々しく呟いていた。俺も、あの拘束は分からなかった。俺がやったものでは無いのに、それを証明する方法を俺は持ち合わせていなかった。
──────その瞬間、その謎の白い光がいえの周りを浮遊する。
「な、なんだよ…ほら、やっぱりおま───」
その瞬間、その白い光は手の形になり、いえの頭を撫で始める。
「んぇ……?」
いえが、思わず声が出た、みたいななんて言い表せばいいか分からない言葉を発する。
「な、なんだよ…これ…?おい!ノイズ…!!これな」
その白い光は手から腕になり、体が作られ、そして顔がつくられる。それは狐のような耳を生やし、Sのピンが付いていた。
「れいま…りさん…?」
その次に形が変わり、今度はロングヘアで顔を覆い隠すように布をまとったものが現れる。その光はいえのほっぺをつねったり、もんだりして遊ぶ。
「え…?どういう……?」
ここまで見て、俺は納得した。ここはあくまで夢の世界。いえの深層心理が反映されている。それはこんなにも感情を露わにするし、影のようなものがまとわりつくこともあるが。しかし、それでも希望を見せるように望んだ夢を見ることも出来るのだ。
これは、いえが心の中で望んだ、なって欲しかった、叶うことの無い現実。
───誰かに自分の存在が認められて、そしてみんなに褒められたかった。
可愛らしく、そして子供らしい望みだった。
そう考えればぜんさんに血を上げていた理由がわかる。あれは親切心なのではない。おそらく、誰かを救えるというその感情を得たかったのだろう。
俺は、白い光に可愛がられ、褒められているいえの近くに行く。涙をポロポロと流し、訳が分からない、といった様子だが、どこか、嬉しそうな顔をうかべる。
俺はようやく、自分のやるべきことを理解する。
俺は、そのまま無言でいえの頭を撫でる。いえはパッと顔を上げ、俺の顔を覗く。俺は、一体どんな表情を浮かべたのだろうか?いえは驚いたように目を見開いて俺を見つめる。俺は、本当に、本当に小さな声で、誰にも届かないような声で
「お前は、頑張ってるよ。」
そう、ぽつりと呟く。その言葉が聞こえたのか、はたまた聞こえていないのか分からないがいえは涙を浮かべながら微笑んだ。
「ありがとう…。」
そう泣きながら笑うその表情は子供同然だった。
そうだ、彼は、まだ子供なのだ。暗い過去を救われた恩人には人殺しの術を学ばされて、それでも、頑張ってもめめ村の誰にも勝てなくて。そんな、どうしようもない最弱は。子供は。愛を、存在を求めていたんだ。けれど、誰も自分を見てくれないという錯覚。
俺と、よく似た子供。不器用なりに、俺は。誰かを理解出来たのだろうか?
ここで切ります!今回はいえもんさんの弱い部分について書いてみました!思い出して欲しいんです。いえもんさんは唯一この物語に出てくる子供なんです(人外目線)!こういうのは弱みがあるからこそ美しいんですよね。なんか最近精神的ダメージを書いてる気がする…。
そろそろ天界に突撃します!次くらいに行きましょうかね〜
それでは!おつはる!
コメント
8件
…あそうじゃんいえもんさんこのストーリーのメインとして出てくる唯一のヒトの子じゃん…(最初の方の事だったので忘れていた)
ねぇ普通に泣くって