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勇斗side
「柔太朗っ!」
面会時間ギリギリに病室へ飛び込むと、柔太朗はベッドに横たわっていた。
点滴、酸素、胸腔ドレーン、心電図モニター…管だらけで痛々しい。
🤍「あ、勇ちゃ…」
「大丈夫か?」
🤍「ごめ…ん…携帯がないと…仕事困るかなって思って…コホコホ」
「無理して喋んなくていい」
🤍「外に出たら誰かにつけられてる気がして…怖くて走ったら息、できなくなって…」
「ばかだな…携帯なんて。いや、ばかは俺か…」
🤍「でもね、見た目よりかは酷くないんだよ」
柔太朗は力こぶを作って笑うが、すぐに痛みで顔をしかめた。
慌てて柔太朗に駆け寄ると、先に背中をさする人物が目に入った。
…誰だ、こいつ。
🤍「あ、こちらは救急車を呼んでくれた恩人で、田中さん」
田中「は、はじめまして…」
「…佐野です」
おどおどしつつ、俺のことをジロジロと見る田中という男。
ぶっきらぼうに応えると柔太朗に睨まれた。
🤍「ごめんね、田中さん。この人見かけによらず人見知りで…」
田中「大丈夫だよ、柔君」
田中が柔太朗の手を握って熱い眼差しで見つめる。
…はぁ?柔君?
だから、なんなんだよそいつは。
距離近すぎんだろ。
田中「…じゃあ僕は失礼します。柔君、早く元気になって」
部屋から出ていく少し猫背な田中の後ろ姿を睨む。
🤍「勇ちゃん?…らしくないよ。失礼じゃん」
「や、なんか…違和感っつーか。
あいつが偶然通りかかって救急車呼んだんだよな?
あの時間帯、あの辺いつも人通りないだろ」
🤍「…あいつじゃなくて、田中さん、な」
「あいつにあんまプライベートなこと、言うなよ」
あの田中って奴、なんか気に食わねぇ…
柔太朗を見る目も近過ぎる距離感も、俺への態度も。
心の中で警鐘が鳴った。
マネージャーの話では田中は毎日決まった時間に面会に来て花の水を入れ替えていたらしい。
見たことない白い大きな花だった。
その後柔太朗は順調に回復して1週間で退院することになった。
退院の日、スケジュールの合間をぬって病院へ行くとまた田中がいた。
柔太朗の手には例の白い花が入った花束かあった。
🤍「田中君もありがとう。面会いっぱい来てくれて…嬉しかった」
田中「いえ…あの、柔君、応援してます」
柔太朗の手を握ろうとする田中の手を横取りして俺が代わりに握手する。
柔太朗が失くしたのと同じリングが左手の薬指に付いていた。
それから不自然なくらい短く切りそろえた爪。
笑った時に見えた歯並びと柔太朗と同じ香水の匂い。
こいつ、やっぱおかしいだろ………
病室を出ると看護師長に呼び止められた。
師長「あの…伝えるかどうか迷ったんですけど…」
俺はその話を聞いて確信した。
薄気味悪いストーカー野郎は田中だって。
退院後柔太朗は新しい家に移った。
俺は別れ際に田中に電話番号を紙に書いてもらうと筆記具ごとマネージャーに渡し、ついでに看護師長の話も伝えた。
あの白い花は『テッセン』って名前だった。
本来病院では生花の持ち込みは断っているらしいのだが、田中がどうしてもと食い下がったらしい。
珍しい花が気になった看護師が花言葉を調べると怖い意味が書かれていた。
ーーーーそれから三日後。
柔太朗の家で田中が捕まったという報告を受けた。
もちろん…ストーカー規制法違反で。
🤍「うそ…」
知らせを聞いた柔太朗は呆然としてたけど、俺は驚かなかった。
立ち尽くす柔太朗の華奢な肩を抱き寄せマネージャーからことの顛末を聞く。
まず、郵送物と田中のDNAが一致したこと。
それから、非通知の電話番号と田中の電話番号が一致したこと。
さらに、ファンクラブの書き込みと田中のIPアドレスが一致したこと。
その証拠をもとに警察が田中の家へ行くと、部屋から大量の柔太朗の私物が出てきた。
部屋の壁には大量のスクラップと盗撮写真が貼られていたらしい。
(ちなみに俺の写真には鼻に画鋲が刺されていたらしい。…あの野郎)
「何も考えるな…」
🤍「…勇ちゃ…」
柔太朗は俺の胸に顔を押し当てながら静かに泣いた。
シャツを握りしめて震える華奢な指に俺の指を重ねると柔太朗が顔を上げる。
頬をつたう涙を指の腹で拭き取ると柔太朗の額に口付けした。
「…これでもう終わりだ」
🤍「…うん」
「これからは俺が守る」
🤍「……っ」
「だから…隠しごと、すんじゃねーぞ…」
柔太朗と見つめ合ってキスしようとしたら唇が触れ合う直前にマネージャーに止められた。
めちゃくちゃいい雰囲気だったのに…
ドラマだったら主題歌が流れ始める場面よ。
あ、やべ。
そういえば、俺ら付き合ってんの言ってなかったわ。
「すいません、マネージャーさん
えー佐野勇斗と山中柔太朗、30と80は
…結婚します」