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それにしても、何故こんな写真をわざわざ私に送りつけてきたのだろうか。
うっかり既読にしてしまったことを後悔する。
_____私の反応を試しているの?
私はその写真を急いで成美に転送した。
〈こんなのがこの女の子から送られてきた〉
ぴろろろろろ🎶
成美から、電話だ。
「はい、ごめんね、こんな遅くに」
『いいの、苺と双葉はとっくに寝てるし、パパも寝ちゃったから、私は1人で録画のドラマを観てたとこ。ていうか、なに、この写真、いつの?』
「多分、今夜、今?」
『え!雅史さんは?」
「まだ帰ってない、職場の人の送別会で遅くなるって連絡はあったけど」
『まだなの?で、この相手の子知ってるの?』
「薄暗いけど、多分、この前ランチの時にいた……」
『あ、あの子?なんで?前から浮気してたとか?』
雅史の職場のアルバイト、舞花の友達の仲道京香。
『同じ職場のアルバイトかぁ、それにしても若いね。いくつだろ?』
「多分20歳過ぎくらい?お嫁さんと同い年って言ってたから」
『マジか!で、こんな写真を送りつけられるって杏奈この子に何かしたの?』
「……何も思い当たらない」
どんなに考えても、私が何かした記憶はない。
『でも、コレってさ、酔っぱらった女の子がふざけてキスしてるみたいだから、雅史さんにとってはただのハプニングかもよ。表情がほら、びっくりしてる。他にも参加者がいるかもだし。何かの罰ゲームとかで、こんな写真を杏奈に送りつけて、何か反応を見ようとしてるのかも』
「罰ゲームか。あー。そうかも?」
『だとしたら、これくらいのことで大騒ぎしない方がいいよ。雅史さんが帰ったらなにがあったか確かめてみたら?浮気してたら隠そうとしてもバレるだろうし』
そうだなと思う。
こんな子どもみたいな子に、からかわれるのは気分が悪い。
たとえ、浮気だったとしても騒ぐのはやめておこう。
1時少し前、雅史が帰ってきた。
何をどう問い詰めようかと考えていたけど、いきなりあの写真を見せるのはやめておくことにした。
今夜のことを、私にどう説明するか聞いてみたいし。
できるだけ、いつも通りに振る舞う。
「おかえりなさい、遅かったのね」
ソファ越しの雅史の背中が、ビクッとした。
「ただいま。参ったよ、盛り上がってこんな時間になってしまった」
そうよね、いつもより遅い。
私はできるだけ、平静を装って訊く。
「誰と?」
「え?」
雅史の目が泳ぐ。
_____こんなにわかりやすい人だったっけ?
「だ、誰って、職場の人たちだよ。言わなかったっけ?退職する人の送別会だって」
あきらかに声がうわずっているけれど、そこは素知らぬふりをする。
「あ、そうだったね。ほら、そのままだと上着がシワになっちゃうから脱いで」
私は雅史に近づくと、スーツの上着を脱がせようとした。
安っぽい香水のような匂いと、胸元にピンク色のシミを見つけた。
_____香水と口紅?
「なに?コレ」
「え?あー、電車が混んでたからなぁ」
「終電がそんなに混んでたの?びっくりだね」
「あ、いやいや、その、宴会の店まで移動する時にさ」
あきらかに焦っている。
「宴会かぁ、最近そんなこともしてないなぁ私。ね、どんなお店なの?今度私も連れて行ってよ」
「普通の和風居酒屋だよ、ほら、うちの会社がやってるような……」
「ふーん、洋風居酒屋かと思った……ってか、だったら自分とこのお店でやればいいのに」
「えっ、なんで?あ、いや……ほら、賄い飯とかいつも食べてるから、飽きてるし。で、二次会はカラオケ」
慌てる雅史を無視して、話を続ける。
「その後はどこへ行ったの?二次会だけじゃこんな時間にはならないでしょ?」
「えっと、それは……あ、そうそう、二次会終わった時に、偶然佐々木と会ってさ、そのまま近くのスナックに行った」
「佐々木さんと?どうでもいいけど、この安っぽい香水はいただけないね。若い子がつけるやつかな、学生とか」
「香水?」
「この前のは、ちょっと高級な私でも知ってるやつみたいだったけど、今日のコレは好きじゃないな」
前回の時も、私はちゃんと知ってることをアピールしておく。
「そ、そうか、まぁ、香水なんてこっちはどうにもできないしな。俺、風呂入るわ」
香水も口紅も、満員電車だったから仕方ないと言いたげに、そそくさと立ち去ろうとする。
「じゃあ、ズボンもここで脱いで行って、クリーニングに出すから」
「まぁ、仕方ないな」
ベルトを外し、スルリとズボンが落ちた。
「えっ!やだ!どうしたの?なんでパンツが裏返しなの?」
わざと大きな声を出してみた。
「ひっ!!」
慌ててパンツを押さえてバスルームに走る雅史。
_____裏返しになんて、なってなかったのに、バカみたい
カマをかけたら当たったということだ。