バスルームから、激しめのシャワーの音がする。
私はさっき京香から送られてきた写真とコメントをじっくり見返した。
どちらから誘ったのかはわからないけれど、間違いなく今夜、2人は親密な時間を過ごしたのだろう。
それにしても、私にこんな写真を送りつけてくる意図がわからない。
隠そうとしないどころか、自分からバラそうとしている。
雅史の様子だと、雅史にはきっとこの写真を私に送りつけたことは話していないだろう。
_____私に何がしたいのだろうか?
正妻への挑戦状?
このままでは苛立つだけで、何もわからない。
見えすいたアリバイ工作にも、腹が立つ。
「あのさぁ……」
バスルームのドア越しに雅史に声をかける。
「ん?なに?」
とりあえず、アリバイを潰しておく。
「佐々木さんと別れたのは何時くらい?」
雅史はなんて答えるだろうか。
舞花の話では、佐々木は雅史とバッタリ会って居酒屋で飲んで10時過ぎに帰ってきたと言っていた。
「何時だったかなぁ?12時半くらい?酔ってたからごめん、わからないや」
やっぱりね、口裏合わせができてないらしい。
「さっき、舞花ちゃんから連絡があったの、10時過ぎには佐々木さん、家に帰ってたらしいよ」
「え……」
答えに詰まる雅史、浮気確定。
それがまさか舞花の友達だったとは、驚いたけれど。
女は若い方がいいと思ってるんだとしたら、雅史のことを“そんな男”としてしか見られなくなってしまう。
勘だけど、前回の香水の時の女とは違う。
写真なんか送りつけてこなかったし。
_____ん、待てよ
写真だけでは浮気の証拠にはならないか。
雅史のことだから、問い詰めたらあっさり白状しそうだけど。
舞花と佐々木のことも気になる。
_____新婚なのにまさか浮気してたり?
もう深夜だったけれど、舞花にLINEをしておいた。
〈今週末、ご主人と一緒にうちに来れないかな?〉
すぐに返事があった。
《はい、私もそうしようかと思ってました。隼人君の言うことが信じられなくなってしまったので》
〈だよね?うちも確認したいことがあるから〉
シャワーの音がまだしている。
私が起きている限り、シャワーを終わらないつもりだろうか?
脱衣所からドア越しに声をかけた。
「ねぇ!」
「……」
聞こえないのか聞こえないフリなのか。
「今週末、佐々木さんご夫婦がうちに来るから、予定を空けておいてね」
「……」
無視?
こんな夜中に騒ぐわけにもいかないので、LINEで送っておいた。
〈今週末、佐々木さんご夫婦がうちに来ます。確かめたいことがあるって。予定を空けておいてね〉
夫の浮気が発覚したというのに、思ったほど動揺してないことが、自分のことなのに不思議だった。
_____そっか……
圭太の寝顔と、アルバイトのフラッシュメモリが、私を落ち着かせているのだ。
_____なにも離婚を切り出されたわけじゃない
ことと次第によっては、それもまったく可能性がないわけではないけれど。
今夜の雅史の様子からは、家族を捨ててまで浮気相手のところに行こうとしてるとは思えなかった。
_____とにかく、仲道京香の真意が知りたい
それから、どうするか考えよう。
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