テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
姿見の前で自身の姿を再確認。
制服は少し、いやかなり高級そうな見た目。装飾がよく目立つ。値段は——考えないでおこう。まあ、この学園はお金持ちが多いからな。
色は青色。色は使用魔法によって変わる。赤・黄・青・緑の4種類だ。例えば炎魔法は赤、風魔法なら緑といった具合だ。私の魔法は――無属性。基礎中の基礎を極めた結果だ。別に恥ずかしいとは思っていないが。
髪型は、好きなアニメキャラクターの髪型を参考に編み出した。このヘアアレンジ、すごく時間がかかる。
そこにカチューシャをつけて、完成だ。
「遅い!」
自室から出た瞬間、伊吹ちゃんに怒鳴られる。
伊吹ちゃんは、この国では珍しい茶髪と金の目を持つ。腰あたりまで伸びた髪は顔の左側でまとめられ、黄色の制服もよく似合う。勝ち気なツッコミ役の、私のルームメイトだ。
「入学式早々遅刻なんて、やだからね!そういうのはギャグマンガだ
けで十分なの!」
朝から伊吹ちゃんのツッコミ(?)が激しい。けれども少し身支度に時間がかかってしまったのは事実。入学式に遅れるわけにもいかない。急いで準備しよう。
今日、ついに入学式である。
揚羽寮3号棟を出てすぐのところに、八重桜の木がある。その下で待っている2人に呼びかける。
「ごめん!お待たせ、2人共!」
「かずの身支度、めっちゃ時間かかってさ。」
こ、この野郎!ちゃっかり私のせいにしてる!いや、実際そうなんだけどね。
「遅かったねぇ」
ニコニコしながら胡桃ちゃんが言う。ミディアムヘアをハーフアップにした、可愛い系の女子だ。制服は黄色で、いつも笑顔。でも今日の笑顔は目が笑っていないので、今は怒っているのだろう。私が遅れたのが悪いが、その怒り方が1番怖い。
「ほんっとごめん!」
「まあ、その髪型だからね。大変そうよね。」
淡々とした声で、葉月ちゃんが言う。ロングヘアのクールな美女だ。制服はクールな彼女によく似合う、青。
「ほんっと、ごめんなさい!」
紫雲学園と寮は、少し離れている。揚羽寮からは、学園まで電車で10分ほどだ。
電車の中には、同じ制服を着た同い年くらいの女子達がちらほら。みんな緊張している。
ちなみに男子寮である「竜胆寮」は学園をはさんで反対側なので、この電車に男子生徒は(リア充以外)いない。
そしてついに、学園が見えてくる。手が震えてくる。恐怖や不安による震えではない。武者震いってやつだ。
この感覚を、忘れないように心に刻む。初心忘れるべからず、だ。
学園に着くと、先輩方が出迎えてくれた。そして学園の大ホールに案内される。ここで入学式を行うそうだ。体育館じゃないんだ。
まだ席に座っていないひとがちらほら。でもだいたいはそろっているようだ。
席は学籍番号順。私の学籍番号は20240075。だいたい真ん中あたり。だから座席もホール1階席のの中央近く。目立ちにくいので、この席は100点!
「学園長、式辞」
入学式で1番のイベントは、なんといっても校長先生のお話。この話が長いか短いかは、新入生の気分(と眠気)を大きく左右する。この学園は多分、話が長いのだろうな。歴史ある学園だし。
現れたのは、艶々の黒髪を肩まで伸ばした若い女性。だいたい20代後半から30代前半くらいだろう。シンプルでありながらも上品なスーツもよく似合う。この人が、学園長なのか……。
「新入生の皆さん、保護者の皆様、本日はご入学、誠におめでとうございます。この特別な日に、こうして皆さんとお会いできたことを、心から嬉しく思います。」
テンプレの挨拶から始まった式辞。なんだか長くなりそうな予感。
「今年は、私たちの学園にとって特別な年です。何故なら、この学園は、今年で創立400周年を迎えるからです。歴史あるこの学園が、時の流れを超えて今日まで続いていること。それは、多くの先人たちの力と努力の賜物です。そして、皆さんもその新たな一歩を踏み出す大切な世代として、この歴史の一部となったことを自覚していただければと思います。」
これは絶対長くなるやつだ!
「この学園で学ぶのは、単なる呪文や技術だけではありません。魔法使いとしての倫理や、古代魔法の歴史に深く根ざした知識、さらにはそれらをどのように現代に活かしていくかという視点も学ばなければなりません。——」
うう。眠い。
「それでは、創立者たちがどのような思いでこの学園を創設し、私たちにどんな教えを残してくれたのかを振り返り、その教えを皆さんにも知っていただきたいと思います。まず、春夏冬 実 氏について。——」
時計の針が5分、10分と進んでいく。入学式なのに、苦痛でしかない。
20分くらい経ったようだ。体感では1時間以上聞いた気分だが。
「改めて、皆さんのご入学をお祝い申し上げます。そして、皆さん一人一人が、魔法使いとしての真の力を発揮し、社会に貢献できるような素晴らしい未来を築いていくことを心より願っています。」
やっと学園長のお話が終わり、会場は安堵に包まれた。
そこからはとてつもないスピードで入学式が進んだ。
そして入学式が終わった。
入学式が終わった後は、クラス発表だ。
この学園には、各学年5つのクラスがある。クラスは成績で決まる。上から順に、「シリウス」「カノープス」「アークトゥルス」「ベガ」「カペラ」である。私としては、カノープスに入れたらいいなと思っている。
アリーナの1階に掲示板がある。ここにクラスが貼り出されている。私の名前を表から探し出す。
カノープスクラスの表をまず見た。芦田、足立、……斎藤、鈴木、園田。カノープスクラスではないらしい。
他のクラスの表も見る。そして私の名前を見つけた。私のクラスは、
——シリウスクラス。1番上の成績を誇る、エリートクラスだ。
――え?
紫雲学園の東の端にあたる校舎「日出館(ひいずかん)」。日出館の2階に、1年生の教室はある。私はシリウスクラスの教室を目指して日出館へ。
「かずっ!」
不意に聞き覚えのある声で呼ばれる。振り向くと、やはり伊吹ちゃんがいた。葉月ちゃんや胡桃ちゃんもいる。
「あ、伊吹ちゃん!」
「シリウスクラスでしょ?私達もシリウスだったよ~」
「マジで⁉」
「うん。確認してなかったの?」
「自分がシリウスクラスに選ばれたので驚きすぎて……」
苦笑する3人。だって、仕方なくない?
「まあいいや。一緒に行こ!」
3人と共に教室に入る。まだ来ていない人も多い。
座席表を確認する。まさかの、ちょうど真ん中だった。伊吹ちゃんは1番端っこ。なんと近くには葉月ちゃんや胡桃ちゃんもいる!
他の名前を見ると、珍しい名字がたくさんあった。
「『たかはし』だって。ひらがななんだね。」
「『十二月三十一日』とか、なんて読むの?」
「これ?『ひづめ』って読むんだよ!」
聞き覚えのない声に、驚いて振り向く。そこにいたのは、2人の男子。
どちらも髪にゆるくパーマをかけている。顔立ちも髪型もよく似ている。双子だろうか。制服は片方が青色、片方が緑色。青色の制服の男子は右に、緑色の制服の男子は左に泣きぼくろがある。髪色はこげ茶に近い黒で、白色のメッシュが入っている。
「十二月三十一日、つまり大晦日は、1年の最後の日で年末で日が詰まっているでしょ?だから『日詰(ひづめ)』って読むんだって。」
青色の制服の男子が言う。声は凄く子供っぽい。
「はじめまして!俺は神吉 空斗(かんき そらと)です。」
「俺は神吉 海斗(かんき かいと)。空斗の双子の弟です。よろしく。」
青色の制服の空斗が自己紹介すると、緑色の制服の海斗が続けて自己紹介をした。海斗は凄く大人っぽい声。空斗の方が兄なんだ……。
お互いに自己紹介してから、席につく。辺りを見回すと、とにかく色々な人がいる。見た感じ、男女比率は1:1。みんな美男美女だな……。
キャーキャーと外から声が聞こえた。他のクラスの女子のようだ。うるさいな。彼女たちの視線の先には、男子の2人組。可愛い系の男子と、クール系なイケメン。というか、あのクール系、寮に引っ越しするときに、電車で隣の席だった人だ!同い年であった、しかもクラスメイトであったことに衝撃を受ける。
伊吹ちゃんは、隣の席の男子と話していた。その男子も顔立ちがいいため、絵になる。
ぎぎ……と椅子を引きずる音がして、隣を見る。2人の男子がちょうど来たところだった。
「あ、あ、えっと……はじめまして。」
一瞬気まずい空気が流れたので、あいさつしておく。
「あ、うん。はじめまして!」
私の隣に片方の男子が座り、あいさつ。ふわっとした感じの、可愛い系だ。
「速水 碧葉(はやみ あおば)です。」
「皇 一咲です。」
「俺の前に座ってるのは、いとこの勅使河原 湊(てしがわら みなと)です。」
「勅使河原です。」
いとこなんだ。一緒に来るなんて、仲良いな。
勅使河原くんは、マッシュヘアで、ミステリアスな感じ。
言わずもがな、2人も美形。なぜこのクラスはこんなにも美形だらけなのだろう。いじめか?
しばらくすると、担任の先生が教室に入ってきた。
女の先生で、髪を低い位置でひとつ結びにしている。歳は20代くらい。おとなしい、温厚な人だと思われる。
「みなさん、静かに!」
声は凛としていてよく通る。
「今日からあなた達のクラス担任になりました、仙石 莉子(せんごく りこ)です。私は皆さんの担任として、一年間全力でサポートしていきます。一緒に最高の一年を作りましょう! よろしくお願いします!」
普通に笑顔がかわいい。
やっぱりこのクラス、美形ばっかり。もうやだ。
初日はすぐに終了。昼前には寮に戻ってきた。
私服に着替え直してから、伊吹ちゃんと葉月ちゃん、胡桃ちゃんと共に食堂へ。
「入学おめでと〜!」
4人で乾杯し、ご飯を食べる。
今日あったことを4人で語る。
「学園長の話、長かった……!」
「それな!てか、担任美人すぎない?」
「ほんとにね。」
結論:これからの学園生活、楽しみすぎる!