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「車両1、バイク2! まだ遠い!」
「ナイン! 後ろの小窓も開きますんで、そこから頼みます!」
凄い勢いで爆走する車両の中、後ろの席……というかバイクが積んであるから、荷台? で背後を警戒していた9Kが声を上げると。
これまたアクセルを踏み抜いた555が、街中をこれまで以上の勢いでかっ飛ばし始めた。
なんかもう、アレ。
映画のカーアクションって言うより、ラリーカーの試合みたいになってる。
この人の運転技術、頭おかしいってレベルだよ絶対。
事故らないのが、本当に不思議になって来る勢いで。
そんな事をやりながらも、言われた通り小窓を開いた9Kが狙撃ライフルの先端を外に出してから。
「車両を片付ける」
ズドンッ、と一発だけ発砲したかと思えば。
相手の車のフロントガラス……ではなく、何か車の先端の方に当たった様な?
あ、あれ? もしかして、珍しく外した?
なんて、後ろを覗き込んでいた私の心配を他所に。
追って来た車はボンネットから煙が噴き出し始めて、そのままどんどん離れていくではないか。
うん、もう私は変な心配はしない方が良いのだろう。
9Kが片付けるって言ったら、多分それはもう決定事項だと思った方が良いみたいだ。
「シックス、後ろのバイクを頼めるか!? 前からも来た! セブン、前を付き合え!」
「イエッサ~! バリケードと歩兵かくに~ん、ってね!」
4cardとsevenは、窓から身体を乗り出して前方に向かって発砲。
こっちは後ろを頼まれてしまったので、慌てて天窓を開いて身体を出してから……。
「当たれ!」
ズドンズドンと、ショットガンを二発連射。
本当にギリギリ! って感じではあったけど、何とか片方のライダーにヒット。
キルは取れなかったけど、バランスを崩したバイクはその場で転んで火花を上げている。
「っ!」
身体を引っ込めてからリロード……なんて思ったのだが、もう相手が随分と近い。
しかも、手に持っているのは小さなマシンガン。
それを此方に向けて来て引き金を引くが……どうやら、左腕で撃っている影響と、運転中だから?
弾をバラ撒いているだけで、あんまりこっちに当たる気配がない。
だったら!
「ふっ!」
身を乗り出したまま銃身を折って排莢、そのまま腰のベルトから再び二発のショットシェルを引き抜いた。
相手から視線を外さない様にしながらも、ここ最近で覚えた手癖の要領で弾を補充していく。
それが終われば、ガシャンッと銃を戻して再び銃を向けてすぐさま発砲。
「よしっ!」
「シックス! 戻れ! 前からも撃たれてるぞ!」
残る一台のバイクもやっつけ、やったぜ! とか思っていたら9Kに怒られたので慌てて車両の中へ。
そうだ、敵は後ろだけじゃないんだった。
正面に居る人達は、それこそちゃんと地面に立って射撃している状態。
だったらずっと身を乗り出して立っていたら、相手からすれば良い的になってしまうではないか。
という事で、車両に身を潜めながらも再び弾補充。
などとやっている間にも正面から弾丸の雨が降って来て、そこら中からキンキンキン! って凄い音がしているけど。
「もう良いっすよ! この辺で予定ルートに戻らないとなんで、あとは突っ込みます! フォーとセブンも中へ! ナインは出発準備を!」
「「「了解っ!」」」
撃ち合いをしていた二人が車両に戻り、荷台に居た9Kはライフルを背負ってからバイクに跨った。
そして、555が何やらスイッチを操作すると。
「わぁ……」
ハッチバック……って言うんだっけ?
車の後ろが勝手にパカッて開いたかと思えば、バイクが下りる為の足場がこれまた勝手に伸びて行き、地面に先っぽを擦りながら火花を上げている。
は、派手だぁ……。
「それじゃ、行って来る」
「頼んだ、ナイン。場所は追って指示を出す」
「いってら~」
なんか凄く気軽い感じで皆が挨拶を済ませたかと思ったら、9Kが乗ったバイクはそのまま後ろへ。
え、え、え? そのまま降りちゃって、平気なの?
一回車止めた方が危なくないんじゃ……など一人だけ慌てていたのだが。
後輪が地面に触れた瞬間、ちょっとだけフラ付いたけど。
しばらくは前輪を車に乗せたまま、後ろのタイヤだけ地面に設置した状態でブゥンブゥンとエンジンを吹かしていく。
その後。
「ファイブ、閉めて良いぞ」
「がってん!」
パッと、左手のレバーを離したかと思えば。
バイクの前輪がグイッと上がり……ウイリー? の状態でそのまま後ろに下がって行った。
その後ズドンッと前輪を振り下ろせば、そのまま普通に走りだす9K。
な、なんだ今の!? 凄く格好良い! アクション映画みたい!
とか何とか思っている内に扉が閉まり、此方の車両はプレイヤーとバリケードの中へと突っ込んだ。
物凄い衝撃が走り、身体が吹っ飛びそうになったが。
どうにか4cardに支えられ、ダメージ判定は無し。
それどころか。
『オマケだ、取っておけ』
後ろから追走して来た9Kの声が無線から聞えたと同時に、手榴弾をバラ撒いたらしく。
バイクが通過した後ろで、派手な爆発が起きたではないか。
「うっひゃぁ~、今回ナインも派手だねぇ?」
『本番だからな。コレくらいやらないと、俺は本気で空気扱いされる。というか既に若干空気だ、賞金首の人気投票最下位を記録したらしい』
に、人気投票とかあったんですか。
そんな話、お兄ちゃんからは聞いていないけど……私は何位だったんだろ。
いや、聞かないでよそう。
むしろ聞くのが、良い意味でも悪い意味でも怖い。
「まぁ、お陰で追跡を振り切ったな。皆、まだ警戒を解くなよ?」
「このままポイントBまで突っ走って様子を見るっすよー? 相手はプレイヤー、どんな手段で来るか想像がつきませんからねぇ~」
なんか、なんか思っていた本番と違うというか……いやホント、皆格好良いぞ!?
どうしよう、今回私は本当に空気になるかもしれない。
が、頑張らないと……。
◆
「了解、すぐに現場に向かいます! あー、君達! 今回はもう良いけど、帰りは三人乗りするんじゃないぞ!? 車両は押して帰りなさい!」
「「「すいませんでしたー」」」
俺達を捕まえたNPCポリスが、緊急通信を受けながら慌ててパトカーに乗り込んで行った。
どうやら、他の場所で戦闘が始まったらしい。
もしくはイベント中だから逮捕まで行かなかった?
よく分からないけど、俺等は路上脇に残されたまま去っていくパトカーのサイレンを聞いていた。
「……どうする? 歩く?」
「いや、流石に間に合わないだろ。もっかい三人乗りだなぁー」
「野郎ども、乗れ! 唸れ、ユニコーン!」
「「うるっさい」」
そんな訳で、再び三人揃ってトロトロと移動開始。
運転手と、無駄にテンションの高いロングコート以外は暇だったのか。
グレーは一番後ろに座りながら端末をポチポチ。
「やっぱ賞金首の居場所とかの情報は、運営の方でコメントが弾かれてるみたいだなぁ……参加者には見られねぇや」
「ま、そうだよねぇ。もうこうなったら、本当に最後のラッキーパンチ狙いだ」
「そっちは予定通り、てかそれしかねぇ。てかぁ……賞金首だけじゃなくて、参加者の様子も放映されてるっぽい……俺等もガッツリ映ってるみたいだぞ」
え、マジかい。
だとすると……今の俺等は。
「完全にネタ枠扱いだわ……皆派手に動いてるのに、一般人映ってるぞって笑われてる」
「うわぁ……か、格好悪ぃ。いや、本気で情けないよ!? コレ!」
「笑いたい奴には笑わせておけば良い! むしろ俺はそうありたい! 皆ニッコニコ、ウム! 良きかな良きかな!」
「「お前だけにしてくれ、マジで」」
格好良い所を見せないと、なんて思っていた筈なのに。
今は、どうか白川さんが映像を見ていない事を祈るばかり。
ゲーム内でもそこら中で映像が流れてる上に、ログインしなくても生配信されてるんですけどね……あぁ、終わった。
「もう、アレか? そこら辺の車とか奪っちゃう?」
「そんな事して、マジでポリスメンに逮捕されたらどうするの……ていうか、車の運転出来るの?」
「ふはははっ! 出来る筈がない! レースゲーでも、俺は最下位以外取った事のない男だからな!」
お前には聞いてないよ出っ歯、あとコート邪魔。
はためいているせいで、ミラーにコートの裾しか映ってない。
「グレー、端末見てるところで、そのままナビしてもらって良い? 裏道とか脇道、公園とか私有地すら突っ切ってゴール地点目指そう。多分これじゃ、本当に間に合わないから」
「りょうかーい。とりあえずクロは運転に集中してくれい、事故ったらマジで足がなくなるからなぁ~」
「進め進めぇい! 面舵いっぱぁぁい!」
方角が逆だよ馬鹿、出っ歯だけココに下ろしていこうかな。
そんな訳で俺達三人は、これまた非常にスローペースで移動していくのであった。
おかしいなぁ、コレ……賞金首イベントなんだけど。
バイクに三人乗りして、速度的には安全運転するだけのゲームになってしまった。
ちょっとヤンチャしたい年頃の高校生みたいな事しているけど……絶対、俺等参加するべきじゃ無かったよね。
代わりに自分を参加させろって、今頃罵倒の嵐になっている予感しかしないんですが。
とにかくどうにか、どうにか……せめて、戦闘には参加したいなぁ……。