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〈登場人物〉
水無瀬 音
服飾デザイン科2年生。1年生の頃から陽詩と付き合っている。見た目の割に口が悪い。
風月 陽詩
服飾デザイン科2年生。1年生の頃から音と付き合っている。養護施設育ち。
『続いてのニュースです。3日前に東京渋谷区で起きた車両炎上事故について、きょう未明、警視庁が新たに運転していた20代男性が死亡したと発表しました。これにより、死傷者は3人となり―』
ブツッと、強引にテレビを切る。光の入ってこない部屋で、天井を仰いだ。
――3日前の夜、音は死んだ。暴走した車から子供を庇ったのだ。
まるで漫画のような死に方じゃないか。しかも、子供は足の骨折だけで済んだらしい。笑ってやりたかったけど、笑えない。
葬式の時は、泣きすぎて逆に涙は出なかった。棺に入れられた音を、ただ眺めているだけだった。死化粧をした彼は傷なんて一つもなくて、眠っているだけなんじゃないかと思うほどだった。
事件から3日たった今でも何もやる気は起きず、食事すらとっていない。そろそろ精神的にもきつくなってきた。瞼が自然に下りていく。
(俺…死ぬのかな…。でも、どーせ生きてはいけないしな……)
すぅっと意識が遠のいていく。最後に思いだしたのは、俺に笑いかける音の笑顔だった。
「――…た、…なた、ひーなーた。起きろって、陽詩!」
「ん″ん…」
もう少しだけ、と小さく呟く。しかし、今度は強く体を揺さぶられた。
「おい、起きろ陽詩!!」
「あ~わぁかったわかっ…………は?」
諦めて体を起こし、目を開いたところで固まる。
―死んだはずの音が、横にいたのだ。