テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
百済るくあ【colorful】
207
#執着
猫とろ
191
臣桜
47,489
3
案内された部屋は、予想以上に広かった。
大きな窓。ふかふかのソファ。落ち着いた間接照明。そして――。
(……ベッド、大きすぎないか!?)
キングサイズのベッドが、圧倒的存在感で威圧してくる。
対して彼女は、そんな僕の動揺など気にも留めず、窓際へ駆け寄った。
「ねえ、見て! 景色きれい!」
「う、うん……」
景色どころじゃなかった。ベッドが視界に入るたび、CPU使用率が急上昇していく。この空間、色々と負荷が高すぎる。
「ねえ、陽一さん」
「……なに?」
振り向いた途端。
彼女の腕がそっと絡みついた。ふわりと甘い香りが近づく。
少し照れたみたいに笑った彼女が、耳元で囁いた。
「今日は、いっぱいイチャイチャしたいな♡」
「…………っ!?」
***
荷物を置いて、まず向かったのは、ホテル内のメインダイニングだった。
開放的な窓の向こうには、陽の光を反射してきらめく海が広がっている。高級感のある空間なのに、聞こえてくるのは食器の音と、賑やかな話し声。
思ったよりずっと、肩の力を抜ける場所だった。ブッフェ形式なのが救いだ。
「ゆず、待って待って!」
テーブルのパンへ小さな手が伸びる。ひよりさんが慌てて止め、僕は落ちたスプーンを拾う。
「はい、あーん。おいしいね〜」
ベビーチェアに座ったゆずは、慣れない空間をきょろきょろ見回しながら、離乳食を頬張っていた。ぐずれば抱っこして席を立つ。食べこぼしをナプキンで拭き取る。
数分後には、皿の料理はすっかり冷めていた。
(……うん。ラグジュアリーな空間だけど、やってることはいつもと変わらないな)
やがて、ゆずが僕の腕の中で小さな寝息を立て始めた。
「寝た?」
「うん。完全にスリープモードに入った」
僕たちは、そのまま二十四時間対応のナーサリーへ向かった。
ベテランらしいスタッフさんが、慣れた手つきでゆずを受け取る。
「お預かりしますね」
「……よろしくお願いします」
彼女が、眠るゆずの頭をそっと撫でた。
コメント
1件
おお、番外編で恋人デート回か…!キングサイズのベッドに動揺する陽一さんの心情描写が可愛すぎるw でも結局ゆずちゃんのお世話でいつもと変わらない感じになるんだよな。僕の腕の中で寝息を立てるゆずちゃん、それを見守る二人の姿にほっこりした。ラグジュアリーな空間でも家族の日常は変わらないっていう温かさが素敵だったよ!