テラーノベル
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外に出ると、頬に冷たい風が触れた。吐く息が白く浮かび上がる。
咲はマフラーをきゅっと首元に寄せ、悠真の横に立った。
「寒くないか?」
歩きながら、悠真がちらりとこちらを見る。
「……大丈夫です。冬は好きなので」
「へえ。妹ちゃんらしいな」
悠真は少し笑った。
足並みを揃えて歩く。街路樹には小さな電飾がつきはじめていて、夕暮れの色と混ざり合ってきらきらと光っていた。
咲はその景色を見ながら、心の中で何度も同じ言葉を繰り返していた。
(……夢みたいだな。悠真さんと、こうして二人で歩いてるなんて)
ぎこちない沈黙が流れても、不思議と嫌じゃなかった。むしろ、心臓の音だけがやけに大きく響いていた。