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もうどうでもいい。消えてしまいたい。
そんな考えが私の頭の中で巡っていました。でも夜中になれば少し自分に猶予を貰えた気がして自販機で缶コーヒーを買って近くの公園でそれを飲みながら夜の匂いを感じるのが唯一心が安らぐ日課でした。
「こんな夜中に何してるんですか?」
ジャージを着た髪の長い青年が声をかけてきたんです。私は一人の時間がよかったのでその場を立ち去ろうとしましたが喋りかけられても逃げるように去るのもなぁ…。と思い話してみることにしました。
「いや楽になれる時間が欲しくて。日課なんです。」
私はそう答えました。
「へー。そうなんですね。奇遇だ。俺もです。」
同じ人がいるのかと安堵しつつ私は疑問に思っていました。
「あなた。学生じゃないんですか?見た感じで申し訳ないけど、高校生くらいに見えちゃって。」
そういうと青年は笑顔で答えました。
「学生”でしたよ”。」
青年はそう答えて私が座っているベンチの横に腰かけました。”でしたよ”。私は妙な引っ掛かりを覚えました。
「あったばかりで申し訳ないけれど学生”でしたよ”ってどういうことです?」
青年は優しい顔で淡々と話しました。
「俺、鬱なんです。今も。まだ学校にいた頃、自分で自分のこと殺そうとしたんです。それで未遂で病院連れてかれて。親と相談して学校をやめたんです。」
優しい顔でかなり重い話をされた私は驚きつつも申し訳なさで押しつぶされそうになりました。私よりも辛い人なんて山ほどいるんだなってこの時初めて思いました。
「ごめんなさい。そんな辛いこと思い出させてしまって。デリカシーなかったですよね。ほんとうに申し訳ない。」
「いえ。もう落ち着いてますから。そりゃ気になりますよ。こんな時間にこんな奴が出歩いてるなんて。」
なんて優しい青年なんだろう。この優しい顔の後ろで彼を追い詰めているものはなんなんだろう。私は切実にそう思いました。優しくて辛い人ほど馬鹿を見る世の中なのかと。思い知らされました。そう考えていると青年は私に聞いてきたんです。
「そちらもお仕事とかあるんじゃないんですか?」
「あー…笑。もちろん仕事はありますよ。でもしんどくて。あなたほど辛くは無いと思いますがね。」
すると突然青年の優しい顔から一変して険しい顔を私に向けてきました。
「しんどいの基準なんて人それぞれですよ。どんなことでも自分と人を比べちゃダメです。そんな些細なことでも大きなことの火種になったりしますから。」
何故か私は恩師からの言葉を受け取っているかのようにスっと納得しました。どこか寂しそうな声で言われたのでほんとに辛いことを経験したんだと再認識しました。
「そうですよね。ありがとうございます。」
私はただそれしか彼には言えませんでした。多分それが答えだったのだと思います。
「じゃあ俺戻りますね。あまりご無理なさらず。自分のペースで。どうかご自愛ください。」
「あ、ありがとうございます。」
私は空の缶コーヒの缶を片手にお礼を言いました。学生とは思えない丁寧な言葉遣いに内心驚きながら私も戻り、床に就くことにしました。