ようこそ。天逝展《テンゼツテン》へ。
ここはあの世を仮体験できる展覧会です。
撮影、愛玩動物の同行はお控えください。
飲食は休憩場所でのみで可能です。
尚、人によりあの世の風景は変化致します。。
ここでのことは誰かに話さぬようお願いします。
それでは、ごゆっくりどうぞ。
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頭。
自分が見たあの世は。
天体のような灯り、深い色の空が広がって居た。ふんわりと背中を押される様に優しい風が吹いている。自分以外の姿は見えないが発生源不明だが、不思議な力が供給される感覚が絶えない。然し、嫌な気はしない。
頭はふわゝするが、足取りは軽い。
鼻歌を歌い乍でも歩こうか。
太陽らしき物も有るが、直視しても目に刺さる感覚は無く、少々の温もりを感じた。
随分歩いたが、風景が変わることは然程無く、落ち着いた空間のみ続いていた。
ふと、「上に行きたい。」と云う気持ちが溢れた。
飛べば行けるだろうか。
心では無理だとわかっていたが、此処は現実ではない。もしかしたら行けるのでは、と云う好奇心が居た。
足に力を入れ、思いっきり飛んでみる。
すると、体を宙を舞、空を飛んだ。
自分は目を見開いたが、思い切り落ちる事は無かった。
天体の姿をした灯りに乗ればきらゝとした自鳴琴が鳴り響いている。
籠った音の為、発音体は灯りの中に有るのだろう。
展覧会、という割には展示物は少ない。
別の空間が有るのだろうか。
ゆっくりと地面に落ちれば落下のような感じはなく穏やかな着地が出来た。
休憩場が有ると云うのなら、別の展示場のあるだろう。扉は何処だろうか。
深い色が広がり分かり難いがきっと端の方に有るだろう。
壁は何処だろうか。
探しに行こう、と思えば走ってみる。
息が切れることも、足が痛くなることもない。
尚更不思議な空間だ。
これが、あの世なのだろうか。
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続
コメント
1件
すご、文才かよなきそう