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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ほんの少し沈黙が支配した本堂の中にリョウコの静かな呟きが響いた。


「人間が勝手に戒律を犯してしまったからぁ、神様達、皆は人間から離れてしまったのねぇ……」


カサカサッ!


リョウコが手にした柿の種の小袋が不意に音を立て、リョウコの膝に座っていた薄らとしたフンババが振り返り、見ろっ! と言わんばかりに顎をしゃくっていた。


『俺達は離れてはいない、人間達が離れていると勝手に思ってしまっているだけだ』


賞味期限の表示欄からはみ出していたがハッキリとそう表示されていたのであった。

バアルも含めて全員が沈んだムードに包まれる中、光影が絞り出すように言った。


「納得出来ないんだが…… カーリーが純粋なままで永遠の存在になった、そう言ったよな? って事は『馬鹿』にはならないって事じゃないのか? だったら、何で俺の親父は殺されたんだ? 乱暴で凶悪な存在だった時に『アムリタ』を飲ませてしまった、そういう事なのか? なあ、誰か答えてくれっ! 人間を、人々の為に命を賭して戦う聖戦士を容易(たやす)く殺める存在が神なのかっ? 俺は…… 納得いかんぞっ!」


カルラが美しい顔の眉間に皺を寄せて言う。


「光影さん、カーリー様は慈愛に満ち溢れた素晴らしいお方です、貴方のお父さんに手を掛けた等、とても信じられませんが…… もしも本当の事であれば何か止むに止まれぬ事情が有ったとしか思えません」


この言葉に光影が反応するより早くシヴァが深々と頭を下げながら言うのであった。


「重ね重ねすみません、ウチの奴が……」


スカンダとガネーシャも父親同様に頭を本堂に擦りつけていた。

光影が何かを言おうとするのを制止する様にトシ子が声を掛けた。


「光影と言ったね、昼夜がカーリーに殺された、まあ、言い様によってはそれも間違いじゃないけどね、お前の話を聞く限り何か勘違いがあるように感じるんじゃが…… いいかい? 昼夜は自ら望んでカーリーにその身と自分のスキルを譲渡したんじゃよ? 無論、アタシもアンタや善悪の爺さん陰陽(かげはる)も必死に止めたんだけど聞く耳持たなくてさ…… アンタその殺された云々って話、一体誰から聞いたんだい?」


光影は憮然とした表情のまま返した。


「母ですよ! それにカーリーと良い感じになっていたのはお宅のツミコさんだとも聞かされましたがねっ!」


トシ子は益々深めた疑問を表情に浮かべながら言った。


「そりゃ益々おかしい話だよ! だってあの話し合いの場所にいたのはアタシと陰陽、昼夜だけじゃなかったんだからね! 善悪の親父清濁(きよおみ)とアンタの母親も一緒に昼夜を説得していたんだよ!」


「えっ? ほ、本当に? え? だって……」


突然アスタロトが得心がいった、そんな風情で口にしたのである。


「ああ、あれか? カーリーのスキル、『改竄(ペイラポイィシ)』だったか? なあ、バアル?」


バアルも頷きつつ答えた。


「だね! 記憶の書き換え、オーヴァーライトだね…… って事はこれも彼女にとって必要な手段だったって訳だね……」


光影には何も分からなかった、だからこそ呻きを漏らしてしまったのでは無かろうか? 彼は言った、いいや、漏らした。


「え、え、えええっ? 何なの? 俺とお袋が間違いとか…… えええええええっそうなのか? よ、善悪ぉぉぉっ!」


問われた善悪がいつに無く真面目その物な感じで答えたのである。


「どうであろ? みっちゃん、我々人間は命の本質に対して余りにも無知なのでござるっ! だって誰も教えてくれていないからね! それもこれも全て、『まだ知る必要は無いっ』的なアスタやバアル、だけじゃなく、ベレトもゼパルもガープも、クロシロチロやカルラやフンババ、カルキノスもスカンダもガネーシャも、言いたくない、こいつらみたいなもんには言った所で理解出来ない、そういった認識の上にあったのではござらぬかぁ? スプラタ・マンユの皆や、ハミルカルやイーチ休まで…… それがチミ達悪魔達の総意なのでは無いのぉ? 僕チン…… 些(いささ)か、寂しいのでござるよぉ…… 英語で言ったりギリシャ語だったりラテン語だったりぃ…… んじゃ、おまいらだけでやれば良いじゃんかっ! 人間なんか只の地虫に過ぎない下らない物なんだからさっ、説明無いし…… って事でござるよぉおおぉおお、おうおうおうっ! もう、知らないのでござるっ!」


「よ、善悪っ! だな…… そうだよっ! こいつら何にも教えてくれないもんな……」


「ば、馬鹿な! 善悪っ! 我、結構教えてきたつもりだぞぉ!」


「兄様っ! 今から話す所、タイミングバッチリに持って来ていたのにそんな……っ!」


ここまで黙って聞いていた我らが当代の聖女、真なる聖女コユキが話をぶった切ってくれるのであった。


「騒々しいわね! 寝ていられないじゃないのぉ! んで、どこまで話が進んだの? そろそろ生命とか何とか言ってた話は終わったのかしら? んじゃ、そろそろ教えて貰おうじゃないの? 死ぬって何なのかについてさっ!」


………………


なるほど…… ここまで適当に聞いていたコユキにとっては生きる、その事よりも『死』、それがどんな事か、そこに興味が移っていた様であった、我儘(わがまま)なんだからぁ、全くぅ……。

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