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青の林間学校 第3話:受け継ぐ者(完結)1. 決死のダイビング
「大丈夫か、日向!」 「なんとか……。でも後ろにずっと青鬼がいるんだけど!」
広と日向は、迷路のような廃病院を全力で逃げていた。
「窓を割って隣の建物に飛び移るぞ! 多分出口だ!」 「多分って何! 死ぬ、死んじゃいますよ!」
背後には巨大な青鬼。迷っている暇はない。広は勢いよく窓からダイビングし、見事に隣の建物の窓枠を掴んだ。
「早く来い、日向! キャッチしてやる!」 「もー、どうにでもなれー!」 日向が意を決してジャンプする。
広がその手を掴もうとした瞬間――。
「あ、痛い痛い! 髪引っ張らないで!」 「ごめん、間違えた!」 ドタバタしながらも、二人はなんとか合流し、階段でゴリ山とも再会を果たすことができた。
三人は、合流した部屋で大量の資料を見つける。そこには信じられない文字が並んでいた。 【幼児核兵器化実験】 「1973年……病気の子供に毒を混ぜ、研究を進めた。子供たちの体には青いアザができ、言葉を失い、研究員を『お菓子』のように貪り食うようになった……」 ゴリ山が震える声で日記を読み上げる。
「あいつら……子供だったのかよ」 ゴリ山の拳が震える。彼は子供や仲間を傷つける奴を、何よりも許せなかった。
「罪のない子供をこんな姿に……。一発ぶん殴りてえ!」
一方、梅雨美と千春は離れ離れになっていた。梅雨美はある部屋で、子供たちが拘束され注射を打たれている凄惨な写真集を見つけてしまう。 そこへ現れたのが、科学者を名乗る男・**指宿部郎(いぶすき ぶろう)**だった。
「私の名前は部郎。ウイルスの研究をしているんだ」 彼は平然と嘘を吐く。しかし、梅雨美と、後から合流した広たちは確信していた。この男こそが元凶だと。 広は、一時的に閉じ込められた檻の中で見た「悪夢」を思い出していた。夢の中で「お菓子パーティー」を開き、人間の内臓を子供に食べさせていた狂気の博士・平太郎。部郎はその平太郎の兄であり、さらに残酷な男だった。
「千春さんを拘束しやがって……許さねえ!」 囚われていた千春を助け出した広が叫ぶ。 「逃げられると思うな! 私の『息子』たちに食わせ、永遠に歳を取らない怪物にしてやる!」
部郎が合図を送ると、扉を破壊して青鬼たちがなだれ込んできた。
「子供たち! 新しいおもちゃとお菓子だぞ!」
部郎の洗脳された声が響く。だが、梅雨美が叫びながら、先ほど見つけた写真集をばら撒いた。 「これを見ろ! お前たちが何をされたか、思い出すんだ!」
写真には、かつて人間だった頃の彼らが、部郎によって無残に実験台にされている姿が映っていた。
「……思い出した」 「パパ……嘘つき……」 子供たちの悲痛な声が響く。部郎は狼狽した。 「おい、何をしている! お前たちは醜い怪物なんだぞ、私の正義が生み出した――」
「……お腹……空いた……」 一人の子供が、部郎の左腕を無造作に引きちぎった。 「ぎゃあああああああ!!!」
「お菓子パーティーだ! 楽しい、楽しいパーティーの始まりだ!」 部郎は子供たちに引きずられ、奥の暗闇へと消えていった。自らが作り出した「お菓子」たちの餌食として。
エピローグ
広たちは、自分たちを守ろうと部郎の前に立ちはだかった数体の青鬼に頭を下げ、崩れ落ちる廃墟を後にした。 ホテルに戻った彼らは、先生たちに保護され、日常へと帰っていく。
一週間後。 街中で、広はある少年とぶつかった。
「あ、すみません」 「いえいえ、僕も前を見ていなかったので」 少し悲しげな瞳をした少年は、そのまま雑踏に消えていった。
「……なあゴリ山。あの人、なんか悲しそうだったな」
廃墟の病院。奥の部屋で、部郎はまだ泣き叫んでいた。
「待ってくれ……置いていかないでくれ……!」 かつて「息子」と呼んだ少年が、冷たい目で見下ろしながら、そっとドアを閉める。 「さようなら、お父さん」
この物語は終わる。しかし、自由を手に入れた「彼ら」の物語は、どこかで続いているのかもしれない。
(完)
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