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ギアステーションの深夜11時。
人はほぼおらず静まり返っていて、
最近クダリは家に帰っておらず、
目の下にはまたクマができている。
ホームを見回りするクダリの後ろには、
シャンデラがついてきている。
『シャンデラ、ボールにもどっていいんだよ
もうねむいでしょ?』
「シャン!」
シャンデラは元気に返事をする。
だが心なしか、少し怒っているように見える。
クダリにはそれが分からなかった。
『みんな、なんで忘れたの、とか
思い出して、とか言うけどさ
ぼく、分かんないよ』
何かを言いかけたシャンデラに気付かずクダリは続ける。
『ノボリって、ぼくに似た名前だよね
でもぼく、わからない
きみは分かるのかな』
「……シャン…」
悲しそうにシャンデラは返す。
『…やっぱり何か知ってるの?
でもぼく、君の言ってること、わからない』
そうして数分間無言でホームを見回っていると、
急にホームの電気が消え、周りは真っ暗になった。
『えっ!?』
慌てるクダリに落ち着いてシャンデラは炎を強め、
周りを照らす。
「シャン!」
『ありがとうシャンデラ。
でも、なんで消えたのかな、停電?
とりあえず、事務室、戻らなきゃ』
クダリはシャンデラの炎の光を頼りに進む。
周りは完全に真っ暗だが、
幸いにも客はおらず悲鳴は聞こえない。
真っ暗なホームの中、クダリの足音だけが響く。
少し歩いていると、シャンデラは急に止まった。
『…シャンデラ?どうしたの?』
シャンデラは何も言わず前を見つめる。
クダリも目を凝らして前を見てみる。
すると、そこに気配…いや、なにかが居る。
暗くてよく見えないが、たしかに何かがいる。
『シャンデラ、照らして』
「シャン」
シャンデラが前に進むと、
そこには『自分』がいた。
伸びた背筋、帽子の鍔の下から見えるクマ。
少しだけ傷がつき始めているコートと、
目元は見えないが下がっている口角。
『…』
「シャン!シャン、シャンッ!」
シャンデラは嬉しそうに飛び跳ねる。
だがクダリはその場に膝をつき、頭を抱えた。
『違う、違う違う違う!!!』
「シ、シャン…?」
クダリの様子を心配するシャンデラの声も届かずクダリは完全に目の前のそれを拒絶する。
『ちがう、ぼくは、ぼくは違う!!』
目の前のそれは、予想外の反応だったのか
戸惑った顔をする。
『やだっ!やだ、よぉ…っ!!』
激しく苦しむクダリを見てられなくなったのか、
そして煙を立ててそれはゾロアークの姿になった。
だがクダリは頭を抱え激しく苦しむ。
シャンデラはどうしていいかわからずクダリの周りをウロウロと飛び回る。
そのまま、クダリは意識を失った。
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「シャン!シャン、シャンッ!!」
クダリが倒れて間もなく電気は付き、
シャンデラの声に駆け付けた駅員が倒れたクダリを見つけ医務室へ運んだ。
顔色を悪くしたままねむるクダリと、
悲しそうな顔でクダリを眺めるシャンデラに
駅員たちは声をかけることができなかった。
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