テラーノベル
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「ここは、俺ととある人との秘密基地なんすよ。忘れてたけど」
いつも通りの無表情でそう言う。
後ろで組まれた手は、親指を立てている。
「魁星さんだけに話したんでしたっけ、そんな感じです」
二人は納得したように頷き、僕から視線を外す。
ほっとしたような、少しだけ、寂しいような。
「へー…女の子?」
「いえ、男の子でした。この話はいいです。探索するんでしょう?」
龍は自身もブリキ缶の前にしゃがみこみ、人形を手に取る…のと同時に、その後ろに入れられていたた”鍵”を袖に隠した。
「いーの?龍さんのレア写真出てくるかもよw」
「うわ、おもしろそう!」
「やめてくださいよ…」
「僕も気になるなーそれw」
彼の耳元で小さく礼を言う。
龍は何も言わず、ゆっくり瞬きをする。
手に持っていた”誰か”の形をした人形を、そっと、中へ戻した。
その後も探索は続いた。
壊れたおもちゃ、謎の絵と人形…。
核心に触れるような物は出てこなかった。
僕達は、音が鳴るかも分からないオルゴールとブリキ缶だけを持って鍵屋へ戻った。
「…鳴らないと…いいけど…」
「ん?なんか言った?」
「いんや別に?」
ニコリと笑う。
ただそれだけ。
鍵屋につくと、二人は楽しそうにブリキ缶の中身を広げた。
「龍さんなんか覚えてないの~?」
「全然何も」
「”か”さんが龍さん?”ね”さん?」
「かさん魁じゃね?か……いって書いてるし」
「僕関係ないよw」
二人は探偵になったかのように、一つづつ確かに探っていく。
龍の過去がそこまで気になるのだろうか。
開けて、と頼まれたオルゴールは、傷や汚れはあるが鍵穴だけは無事で、開けようと思えばすぐ解錠できる状態だった。
それでも手こずっているように、わざと時間をかける。
このオルゴールの曲は確かオリジナルの童謡だったはずだ。
ないとは思うが、ネスがもし心当たりを見つけてしまったら…。
少しの期待と恐怖が混じる。
本当に、どうしたものか。
「魁星、それ難しい?」
「へっ?」
「スゴい頑張ってくれてるからさ」
カウンターで手は動かしつつ考えていると、ネスの顔がすぐ横にあった。
すぐ横。
ほんと、近いの。
分かる?この、ね?分かる?すげえ近いの。
「だ、大丈夫やよ!全然できるし、ほら、悠征と探偵ごっこしといてええよ?」
「探偵ごっこってw魁星もやる?w」
「僕はええわw」
心臓が痛いくらい跳ねている。
顔に熱が集まっていく感覚がするが…気のせいであってほしい。
「ネスー!人形見ようぜ!」
「見る!…ありがと、魁星。頑張ってね」
そう笑って、臨時テーブルの方へ歩いていった。
顔がいい。
熱が尾を引いているまま、今度は少し真剣に手を動かした。
奥で龍がニヤけている気がするが無視をしておこう。
箱からカチャリと音がなった後、「箱があいてもゼンマイなきゃ無理じゃね?」と気づいてしまった。
鍵でありゼンマイの役割をしていたのは、龍が密かに回収してくれたあの鍵だ。
解錠はできてもさすがにゼンマイは無理だ。
「あっ、魁空いた?」
「うーん、開いたけどゼンマイいるでこれ」
「巻きネジ?ないの?」
「ない」
「マジかぁ…龍さんないのー?」
龍は何も言わずにこちらをチラッとみてからそっぽを向いてしまう。
「無いかあ…流石に無理?」
「無理やね」
「残念…じゃあなんの曲か当てるゲームしようぜ」
「お、面白そう!」
「答え合わせどうするんですか」
「なんか、オルゴールの楽譜あればそれ読み取って演奏してくれるアプリあったろ?あれ使おうぜ」
そんな便利なものがあったのか。
複雑な気持ちになりつつオルゴールを悠征へ渡した。
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