テラーノベル
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「ちりん…、」という少し重たくて、ひんやりとした鈴の音。「ギィ…キィ、」と木製の扉の軋む音が、店内へ届く。
そして、淡く仄かな、此の薫りは…。
_カウンターの奥へ、
「コツ、コツ」 と何処か軽やかな音を、ほんの少し響かせて歩いてくる男の影がある。
其の男は過去、未成年のみで構成された互助集団、『羊』の王たる存在であり、
現在は裏社会史上、最強で最悪な二人組、『双黒』の片割れ…即ち、太宰治の相棒である、
_中原中也だ。
「よォ、太宰。相変わらず辛気臭ェ顔してやがンな。」
其の声を聞いた、太宰と呼ばれた青年…否、少年は、微かに振り返ろうとした姿勢のまま、言葉を返した。
「…やぁ、君かい、…中也。」
《1話終了》
✳︎此処まで読んで下さり、ありがとうございました。
〜タイトルの読み方・意味・引用元〜
【読み方】
徒桜と薄被:あだざくらとヴェイル(ヴェール、ベール)
【意味】
徒桜:散りやすい桜の花、儚いものの例え
薄被(ヴェイル):はっきりと分からないように覆い隠すもの、とばり
【引用元】
作品:文字禍(もじか)
作者:中島敦
コメント
1件
るいさん、第一話読了しました。鈴の音や軋む扉の感触、仄かな薫り…五感を丁寧に描く導入が美しいですね。タイトルと引用元の説明も含めて、作品世界の基層をしっかり見せようとする姿勢が伝わってきます。中也の登場が一気に空気を変える、幕開けとして期待が高まる一話でした。続きが楽しみです。
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恋樺
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