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『12時ナイトコードで!始まるよ~!』
瑞希の楽しそうな声を合図に私達は黙々と作業を始めた。
『ちょっと瑞希!周りに聞こえてるかもしれないでしょ!もう少し静かに…!!』
『え〜?楽しく行こうよ〜!楽しく〜!』
25時にやっていた頃と同じに絵名と瑞希はずっと会話してる。聞こえてはいないと思うけど二人の声は少しずつ次第に大きくなってきていた。
私はイヤホンを外して作業を始めた。少し治まったかなと思いまた付けたらどうやら私が外していた数秒間の間に私に質問を問いかけていたらしい。
『え、聞いてる?もしかしてバレっ…』
『てない。うるさかったからイヤホン外してた。なに?』
『びっくりした…まふゆどこまで作業終わってるかなと思って…。どう?』
奏の優しい透き通る声はなぜだか聞いてて居心地がいい。
『もうすぐで終わる。明日には送れる』
『そっか、ありがとう』
気づいたら静かな空間になっていた。お母さんのこと、家での生活のこと聞かれているかなと思ったけど予想はバズれていた。気づいたら5限目のチャイムがなろうとしていた。
『…ごめん、次の授業だから』
『わかった。頑張ってねまふゆ』
絵名の落ち着いた声もやっぱり聞き心地はいい。
『また明日もやろうね』
瑞希の優しい声も好き。私は胸の中が少し温かく感じたような気もしたけど今日の作業に違和感をもった。残り2分。多少遅れてでも言いたい。
『…今日の20時くらいにセカイに来れる?』
『うん、これるよ』
『大丈夫!』
『うん、確認取らなくてもいつでも平気』
奏、瑞希そして絵名の順にどんどん賛成してくれてる。私はまた胸が温かくなった。気づけば授業まであと1分もなかった。教室からここまで走らないと間に合わないかもしれない。私は急いで教室に戻った。
ー間に合うかな
そんな不安もあるのに何故だろう。セカイで皆に会えること、話せることのほうが嬉しい。
教室に戻ると半数以上の人が座っていた。
「まふゆおつかれ〜。まふゆがこんなギリギリに帰ってくるなんて珍しいね」
「まふゆ問題集とずっとにらめっこしてたんじゃない?時計みなよ〜!」
「あはは…ごめんね、正解だよ」
私の場合問題集ではなくスマホとにらめっこだ。
「…なんか、まふゆの顔違う」
「え?」
「いいことあった?」
クラスメイトの友達から言われた言葉はとても予想外だった。
「うん、とても」
問題はこれからだった。20時にセカイに行こうとしたけど親が私の部屋をちょこちょこ見ているからいつのタイミングでセカイに行けばいいか分からない。そもそも行ったところで私が消えたって親に心配させてをかけてしまう。秒針の音がどんどん私を焦らせている。どうしよう…。どうしよう…。どうしよう…。
プルルルルル
下の階で誰かからの電話が鳴った。ふと階段を降りていく足音が聞こえた。やっぱり2階にいたのかな…と考えたけど何にせよ今がチャンスだ。
「まふゆ、良かった。来れたんだね」
「うん。誰かから電話が来てて…。」
「へえ、誰かしらね」
絵名の顔が少しニヤついていた。
「それで、どうしたの?まふゆ」
瑞希は少し不安そうな声で尋ねてきた。
「その…今日の作業少し違和感を持ってて…」
私は全部伝えた。昨日まではお母さんや生活のこと。雑談をしていたのに今日はなかった。
「あ〜…それは…その…」
瑞希は気まずそうに言っていた。
「実は奏の提案で、まふゆ作業してるときは作業以外の話をしちゃったら思い出して辛くならないかなって思っちゃって…。だから今日は何も話さないようにしたんだ。前半は凄く喋っちゃったけどね。」
「そうだったんだ」
「…ど、どっちのほうが良かったかな。」
奏が不安そうに問いかけてた。
「…分からない…けど」
「…もう少しだけ皆と話したかった」
「!!?」
絵名の顔が驚いた以上の顔だった。
「…確かに作業の時間に家の話とかをすると集中できない時もあるけど…」
「…みんなと話するのは…好きな時間だから」
「ま、まふゆ〜!!」
瑞希が顔を赤くしながら私を抱きしめてきた。
「離して」
周りの皆の顔を見てみると全員瑞希と同じ表情をしていた。よくわからないけど私も嬉しい気がする。
「それじゃあ帰るね。…明日もやろうね」
「うん、待ってるね。12時ナイトコードで」
瑞希の言葉で今日1日の4人の作業は終わった。
私はお母さんの様子を見た。幸いまだ電話は続いていてお母さんは凄く嬉しそうな顔をしていた。一体何があったんだろう。5分後くらいに電話は終わっていてお母さんにどんな話だったのか聞いてみたところ…。
「え?東雲さんの親?」
「ええ、ふふ、まふゆ凄いじゃない。あの東雲さんのお父様にまふゆの絵が称賛されるなんて…!」
「…え?」
全く覚えていない。そもそも絵名の家には泊まったことがあるとはいえお父さんとは話したこともない。とりあえず私は話を合わせておいた。
絵名side
「一応朝比奈さんのお母さんに電話しておいたけど…いいの?絵名」
「ふふ、いいのよ。ありがと、お母さん!」
「けど大袈裟な嘘だな…朝比奈さん真面目だし話合わせなさそうだぞ」
「大丈夫よ、私はまふゆを信じたて電話するように頼んだからね」
少しでもまふゆを救いたい気持ちは私にもあるんだからね。