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「……あんた、もしかして、このおっさんを許すつもりじゃないでしょうね? というか、光の槍が刺さったままよ? 痛くないの?」
「あっ、やっぱり気になるか?」
「そりゃあ、気になるわよ」
「うーん、まあ、あと五秒後には、なんとかなるかな」
「え? それって、いったいどういう……」
ミノリ(吸血鬼)が最後まで言い終わる前に、彼の心臓は光の槍を食らった。
その後、自己再生に必要な養分にしてしまった。
「……ほい、元通り」
「い、今、あんたの心臓が光の槍を食べていたように見えたのは、あたしの目がおかしいなったからかしら? というか、服と鎧も元通りになってるわね。まったく、あんたの体はどうなってんのよ」
「俺の心臓については、よく分からないけど、服が元通りになったのは、お袋のおかげだ。えーっとな、俺の服はお袋が特殊な素材で作ってくれたから、俺の服は何度でも再生するんだよ。俺の鎧が元通りになったのは、多分『紫水晶《あいぼう》』のサービスだろうな」
「あー、はいはい、あんたのお母さんの愛が凄すぎることと、あんたの心臓の凄さは分かったから、もうこれ以上、何も訊《き》かないわ。それで? あんたは、そのおっさんをどうするつもりなの?」
「……いや、別にどうもしないよ」
「はぁ? あんたは、こいつにひどいことをされたのよ? それでも、あんたはこいつを……」
「たしかに、このおっさんは卑怯者だ。けど、油断した俺も悪い」
「そ、それはそうだけど……」
「ということで、今回は引き分けだ。俺とこのおっさんの決着は来年までつかないし、つけない」
「今回みたいな大会が来年も開催されるかどうかは分からないけど、あんたがそう言うのなら、あたしはそれに従うわ」
「ありがとな、ミノリ。あと、その『灼○のシャナ』みたいな姿でいるのは、やめてくれないか?」
「えっ? どうして?」
「魂まで焼かれそうな気分になるからだ。ついでに、お前のその真顔も元に戻してくれると助かる」
「とか言いながら、本当はこの姿のあたしに罵《ののし》られたいんじゃないの?」
「すまん、それはない。いつものお前の方が今より断然かわいい。だから、早く元に戻ってくれ」
「えっ? そうなの?」
「ああ、そうだ」
「うーん、まあ、あんたがそこまで言うなら、元に戻ってあげようかなー?」
「……お前、まさか今ここで、俺の血を吸いたいのか?」
「あっ、バレた?」
「はぁ……分かったよ。元に戻ってくれたら、吸わせてやるよ」
「りょーかーい!」
ミノリ(吸血鬼)はいつもの黒髪ツインテールと黒い瞳と白い肌が特徴的な姿に戻ると、その場で足踏みを始めた。どうやら、早く吸いたいらしい。
「今、元に戻るからちょっと待ってろ」
「早く早く!」
ナオトが元の姿に戻るように念じると、鎧はフッと消えた。
「よーし、もういいぞ……って、もう吸ってるし」
「んふふー♪」
首筋に噛み付かれた時の痛みがないのは、最初に血を吸われた時から変わっていない。
というか、ミノリに血を吸われる時に快楽を覚えるようになってしまったな。
はぁ……変な性癖(?)に目覚めてしまったな。
「おーい、もういいか?」
「プハア! あー、おいしかった。あんたの血はやっぱり最高ね!」
「そう言われても嬉しくないけど、まあ喜んでくれたのなら、それでいいよ」
「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか」
「ああ、そうだな。けど、トワイライトさんの意識が戻らないのが心配だな」
「それもそうね。よし、なら、こうしましょう。トワイライトさんを……」
「うちに連れて行っても、みんなの威圧を感じて逃げ出すと思うぞ……」
「うーん、それじゃあ、あたしがここにツキネを水筒に入れて持ってくるから、あんたはここで待ってて」
「いや、ツキネは水筒に入らないだろ……」
「えー、だって、ツキネは一応、変身型スライムなのよ? 水筒に入るくらい造作もないと思うわよ?」
「ツキネが生み出す例の水だけを水筒に入れてきてください。お願いします」
「はいはい」
「返事は一回!」
「はーい」
「よろしい。じゃあ、気をつけろよ?」
「うん、あんたも気をつけてね」
「……ああ」
「それじゃあ、いってきまーす!」
ミノリ(吸血鬼)は『|光を喰らう黒影製の翼《ブラックイカロス》』(固有武装)を背中から生やすと、シュバッ! と飛び立った……。
三十秒後。ミノリは水筒を首にかけた状態で戻ってきた。
それから、ミノリは水筒の中に入っていたツキネの『|修復と《リペア》|強化が可能な聖水《ブーストウォーター》』をトワイライトさんとミカンにぶっかけた。
その後、ミノリはミカンと俺を小脇に抱えると、アパートに戻った。(『オメガ・レジェンド』はそれから五分後に動けるようになった)
*
「みんなー、ただいまー……って、なんか用か? フィア」
「ナオト様、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、別にいいけど。なんか悩みでもあるのか?」
「……とにかく私と一緒に来てください」
「いや、俺はその理由を知りたいんだけど……」
「とにかく私と一緒に来てください!」
「わ、分かったよ。お前の言う通りにするよ」
「ありがとうございます。それでは、こちらへ」
さっき帰ってきたばっかりなのに、フィア(四大天使の遺伝子を持つナオトの守護天使)に呼び出されるとはな。
うーん、まあ、いいか。俺はその時、そう思っていた。
*
「あのー、俺は今、何をされているんでしょうか?」
俺は他のみんながいる部屋とは別の部屋に俺を招き入れた瞬間、いつのまにか敷かれていた布団にいきなり押し倒して、上半身に纏《まと》っていた服を脱がした状態の俺に馬乗りになったフィアの顔を見ながら、そう言った。
「ナオト様の体に傷がないか、この目で確かめているだけです。何か問題でも?」
「いや、もっといいやり方はなかったのかなって思っただけだ」
「これは守護天使の仕事の一つです」
「いや、そもそも守護天使って、本人の前に現れたらダメなんじゃないか?」
「別にそんな規則はないです」
「いや、でもさ……」
「抵抗するのでしたら、私はナオト様の全身を……」
「あー! もう分かったから、煮るなり焼くなり好きにしろー!」
「そうですか。では、そうします♡」
「いや、ちょっと、待て。お前、何を……!」
「いっただきまーす♡」
「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!」
この後、フィア(身長『百三十四センチ』)はナオト(今は身長『百三十センチ』)の純潔を奪ったとか奪わなかったとか……。