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預り証を受け取り、俺と茂さんは店を出た。
シロはどうしてるかって?
さすがに、連れてまわる訳にはいかないので神社でお留守番をしている。
「ちょうど時間があいたから、服とか靴とか必要なものがあったら買っちゃおう。お金は僕が立て替えておくよ」
俺の着ているジャージを見ながら茂さんが提案してくれた。
そうだよなぁ、日曜日に天神でこの格好は……、ないよなぁ。
ましてや、顔も日本人ではないから余計目立つのだ。
(周りからチラチラ見られてるんだよね~)
「そうですね。そうしていただけると有難いです。よろしくお願いします」
茂さんの言葉に甘えることにした。
近くの洋品店に入って服を見繕っていく。
上は黒とオレンジのポロシャツを2枚、下は薄いグレーのチノパンをチョイスした。
あとはベルト・下着・靴下と買っていき、次に靴屋に移動、スニーカー (黒) を購入した。
お代は全部で25,000円というところかな。
神社の近くにもイヲンやユ○クロなどがあるので、あとの物はそちらで揃えることにしよう。
「それでは、こちらの金額になります」
店員から受け取った明細を確認すると、金額は160万円程であった。
今の金相場が8,000円/gほどだから、俺の持ち込んだ金のインゴットは約200gということか。
これならインベントリー内にたくさん入れてある。
どれくらいかって?
う~ん、いま借りてる部屋 (6畳) の床に敷き詰められるぐらい? そのくらいはあると思う。
帯封付きの100万円はそのままに、残りの紙幣をササッと数え確認すると、俺たちは店をあとにした。
駐車場へ向かう途中にお菓子屋に寄って、紗月ちゃんへのお土産も忘れない。
ふぅ――――っ。
車に乗りこむと、ひとつため息が漏れた。
「人が多いところはやっぱり疲れるね。これからだと暗くなってしまうから、テレビを見にいくのは次回だね」
「今日はわざわざ遠くまで、ありがとうございました」
お礼の言葉と共に、先ほど借りていたお金を返す。
遠くといっても、車なら30分ほどの距離ではあるのだが……。
それにしても遅くなったな。
ひとりで頑張っている紗月ちゃんには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
程なくして俺たちは老松神社に帰ってきた。
裏にある駐車場に車をとめ、裏木戸を通って境内にはいる。
俺が帰ってきたことに気づいたシロ。
境内の中央に設置されている茅の輪 (ちのわ) をピョンと飛び越えると、尻尾を振りながら駆け寄ってきた。
そろそろ夕方、神社の境内には参拝者もなくしんとしている。
俺は社務所の扉をノックした。
「はーい!」
「紗月ちゃん今帰ったよ。お疲れさま~」
「あっ、おかえりなさい。結構時間がかかったんですね」
「うん、近くのお店じゃダメだったんで、天神まで行ってきたから。一人じゃ大変だったでしょう? ごめんね~」
「そうでもありませんよ。参拝者も10人程でしたから」
「これ、おみやげ!」
買ってきたお菓子を紗月ちゃんに渡した。
「あー、チロリアンだー! ありがとう。すぐにお茶を淹れるね」
(嬉しそうなので良かった)
お茶をもらって床几へ腰掛けると、昨日のようにお茶会になってしまった。
そこへ作務衣に着替えた茂さんも家から出てきた。
紗月ちゃんはお菓子の包みをあけている。
チロリアンもいいけど、お茶にはやっぱり千鳥饅頭だよね。
一緒に買っていた千鳥饅頭をいただく。
う~ん、まいう~。
シロにもお皿に入れて出してやる。シャクシャクいわせて美味しそうに食べている。
(シロはほんと何でも食べるよなー)
「ゲンさん。そのオレンジのポロシャツよく似合ってますよ」
「そうかなー、ありがとう。紗月ちゃんも巫女姿がしっくりきてるというか、かっこいいよ」
「向こうでは貴族なんですよね。服はどのような感じなんですか?」
「うーん、用途に応じて様々なんだけど、普段は昨日着ていたようなやつかな」
「意外と派手ですよね」
「まあね、貴族は目立ってなんぼみたいなとこもあるから。それに一目で分かるようにしておかないと、ちょっとした言葉使いで無礼打ちなんてことにも……、ねっ」
「へ~、そうなんですか。身分制度があると大変なんですね」
「あっ、そうだ。剣とか持ってるなら見せてくださいね。鎧とかも見てみたいです!」
「う、うん、後でね。ここは外だし、家の中でなら……」
「やったー。楽しみにしてますからね!」
紗月ちゃんはお茶を飲み干すと、嬉しそうに社務所の中へ戻っていった。
「…………」
「ゲンさん、あまり相手にしなくてもいいからね。紗月は言い出したら聞かないから」
「まあ、世話になってますし。このくらいなら大丈夫ですよ」
「そうかい。ほどほどで良いからね」
そう言い残して、茂さんも家の中へ入っていった。
服を買ったはいいけど、まだまだ足りないものばかりだぞ。
寝巻用のジャージ・髭剃り・時計・ノートパソコンも欲しい。
日本だから欲しいものが何だって手に入るな。
明日は近くのイヲンに行ってみよう。
それに、ヤーマダ電機にも行かないと。
もちろん、お昼は吉牛で決まりだよな。
いや、とんこつラーメンという手も……。
う―ん、これは究極の2択だね。
いやまてよ……、
吉牛を持ち帰りにする手もあるんだよな。
それなら、コ○イチのカレーだっていいよな~。
うぉ――――っ、どうするよ。どうすんの?
「……ゲンさん、ゲンさん! お~い」
――――あ、
「ごめんごめん」
「もう、何回も呼んでいたんですからね!」
「いや、なんというか、脳内で葛藤があったんだよ。明日のお昼に何を食べようかって」
「あー、でも、わかるような気がします。10年ぶりなんですよね。ウナギとか、寿司とかありますからね」
「…………!」
あ――――――っ! 忘れてたのに。
究極の選択肢が増えてしまったじゃないか~。
「あっ、ところでどうしたの?」
「あの~、もう5時を過ぎましたし。着替えたら夕食のお買い物に行くのですが、何かリクエストってありますか?」
「カレーだな!」
俺は間髪いれずにそう答えた。
「あぁー、いいですね。いいですいいです。久しぶりにカレーにしましょう!」
「シロもカレーでいいからね。タマネギとかも関係ないから俺と同じものでお願い」
「わかりました。でも荷物が多くなっちゃうから、買い物につ、つ、付きあってくださいね!」
そう言うと、紗月ちゃんはすこし頬を赤くして家に入っていった。
てなわけで買い物についていくことになった。
シロはまたお留守番だな。
その代わり、シロ用の器には干し肉をたくさん出しておいた。
これでよし。シロは尻尾をフリフリご機嫌な様子だ。
紗月ちゃんが着替えを済ませて家から出てきた。
――私服だ。
昨日から巫女服とジャージ姿しか見てなかったから新鮮だな。
薄い黄色のワンピース。
髪もアップにして大人っぽい。いい感じだ。
靴は白のスニーカーだけど、ぜんぜん有りだな。
「ワンピース、よく似合ってるね。髪も大人っぽくて凄くいいよ」
「そ、そうですか。ありがとう。さっ、行こっ!」
そっぽを向いて言いはなつ姿が、なんとも初々しくて良き。
俺は紗月ちゃんの後を追って歩きだした。
ここから近いところといえば、あのスーパーだろう。
徒歩だと10分といったところかな。
自転車ならもっと早いだろうが、神社は高台に建っているから帰りがね~。
………………
買い物を終えた帰り道。
ぎっちぎちのエコバックを3つ抱えながらも、俺は余裕でついていく。
「重くないですか? 一つ持ちましょうか?」
たびたび聞かれるが全くもって問題ない。これの3倍でも楽に運べるよ。
俺も大概強くなったものだ。
それがなかなか周りの人には伝わらないのよね~。
まあ、3日もあれば慣れてくれるとは思うけどね。
それから、いつまでも甘える訳にはいかないので、食費ぐらいは出させてほしいとお願いしたのだが。
あえなく却下されてしまった。
そこで神社に奉納するというかたちで、米20㎏を買ってきているのだ。
それで荷物が多くなっているわけですよ。