類さんの誕生日なので、今、買い物に来ています!!!
episode12
「お兄さんは、何の花が好みとかある?」
あれから何がいいかと考えて、悩んだ末にたどり着いたのは花だった。
まあ、小学生の俺が、何かを買う自体無理な話だと思うけど…花ぐらいは買えるかな…。
それに花には一つ一つ意味があるらしい。
誕生日にはもってこいだ。
かと言って一人ではどうしようも出来ないと分かったので、尚も呼んで一緒に選んでもらうことにした。
もちろん、類さんには秘密だ。
「ん〜…普段そういう会話しないからな〜」
「確かにそうだね。…それか好きな色とか…!!」
「好きな色……ん〜…」
待って、俺全然類さんのこと知らないじゃん
「じゃあ、花言葉で選んでみる?」
「花言葉?」
「うん。一つ一つの花に意味があって…例えば、カエデの花だったら思い出とか…。」
「へえ〜…なんかロマンチックだな。」
「でしょ?それで選んでもいいかも!」
「でも俺花言葉とか知らないんだけど…。」
「そのために僕がいるんでしょ?」
尚はふふんと胸を張った。
「おお!さすが尚!」
「んー…例えばー…」
するとカスミソウを手に取った
「カスミソウは『清らかな心』『無邪気』『感謝』っていう意味があるんだ。」
「へえ〜…」
「お兄さんに何を伝いたいとかで選んだらいいかも!」
何を…伝えたい…。
もちろん感謝はしているし、尊敬もしている。でも…それだけじゃなくて…。
「尚…もうちょっと花言葉、教えてくれない?」
「いい花選んだね!」
尚の手伝いもあり、2時間の時を経てようやく決まった。
類さん、喜んでくれるかな〜
「尚のお陰だよ。ホントありがとう。」
「え!?…そ、そんなこと…///っていうか、笑とお兄さんって仲いいよね。」
「え?そうかな…」
「うん!すっごく微笑ましいっていうか…」
「なんだよそれw」
まあ、本当の兄弟じゃないんだけど…。
でも、本当の兄弟みたいなもんなのかな。
「確かに、兄さんには良くしてもらってるからね」
「…そうなんだ…」
すると誰かに肩を叩かれた。
「!?」
しまった!類さんか…!?
慌てて振り向くと、そこには見知らぬ男性がいた。
「こんにちは。初めまして、…ショウにゃん?」
「え?」
何でこの人…ってか、誰!?
「えっと、どなたですか?」
「ああ、決して怪しい者ではないですのでご安心を!」
顔は一見笑っているようだが、何か心の底に違和感を感じる。
すると尚は俺の手を握った。
「すみません、僕たち、今急いでて…!」
俺の前に出て、なるべく見せないようにしてくれている。
「?君は?もしかして、ショウにゃんのお友達かな…?だとしたら少し厄介だね。」
「…何がですか?」
握っている手が震えている。
「尚、もう行こう。」
こういうのは放っておくのが一番いい。
尚が気を使うことでもない。
「え?…うん。」
すると男は思いっきり片方の手を引っ張る
「っ…!?」
あまりにも強すぎて、尚の手からすり抜けそうになったが、尚は引っ張るようにしてまた俺の手を掴んだ。
これはまずいかも…
しかも、人気のない小さな花屋に来ていたから尚更。
「離してください!!!」
尚は思いっきり叫ぶ
俺もなんとか抵抗するが…
「そんなに引っ張ったらショウにゃんの腕がちぎれちゃうよ。早く離して」
お前が離れろよ!
「どこの誰だか知らねーけど、早く離せ…!!!」
「ショウにゃん?君はそんな汚い言葉を使わないはずだよ?」
なんだこの人、ショウのファンか?
だとしたらやってることエグいよ!?
俺と尚も必死に抵抗するが、やはり相手は大人、到底敵わずどんどん男の方へと引きずられる。
無理やり引き剥がそうとすると、爪が食い込んで、傷が出来た。
痛すぎ…!
「は…な…せ!!」
やばい、このままだと本気で腕ちぎれる…!
「ほら、早く、ショウにゃん。」
何がだよ!!!
「た、助けて………類さんっ…」
すると、俺は思いっきり尚の方へと引っ張られた。
「うわあ!?」
尚を道連れに、勢い良く倒れる。
「!?ごめん!!ってか…」
「お前、俺の教え子に何してる?」
見覚えのある後ろ姿から、一瞬にして誰か分かった。
「佐藤先生…?」
佐藤先生は腰を抜かしている俺たちを守るように、両手を広げていた。
「チッ、邪魔が入った…。」
大人が来ると厄介だったのか、男は引き返した。
「先生!助かったよ!!」
俺は起き上がり、先生に感謝をしようとすると、軽く…いや、結構キツいゲンコツを食らった。
「痛っ!?なにすんだよ!?」
「お前らここで何してんだ?こんな人気のない所で…。小学生2人で来ちゃいけねーだろ」
「だって…俺たち花買いに来てたんだよ。この辺で安いのここしかなくて。なあ、尚?」
尚の方に振り向き、共感を求めるが、尚は震えているだけだった。
…そうだよな。尚は前に出て、必死に俺を守ってくれた。
いい奴だな…ホント…。
「あ、尚は責めないでよ?!俺が無理やり連れてきたから!」
「どっちも責めるつもりはねーよ。とりあえず二人共俺が送るから、早く帰れ。笑は後で腕の手当てな。」
「はーい。」
「尚、ありがとな…。」
先生の後ろを付いて行きながら、尚にそっと耳打ちする。
「何が…?」
「え?いや、俺のこと、守ろうとしてくれて…。すげー安心した…。」
「そ…そっか…。全然いいよ。だって、笑と僕は友達でしょ…?」
「ははw…確かに…。」
「それに、コスプレの件の恩を返したかったし…。」
「全然いいのに…。」
「ううん。むしろ、こんな形で返しても…だよね…。後日改めてお礼させて。」
「こっちのセリフ。」
二人でクスクス笑っていると、先生は足を止めた。
「着いたぞ。尚ん家だろ?ここ。」
「あ、はい!ありがとうございます!じゃあね!笑!」
尚はペコっとお辞儀をし、俺に手を振った。
俺も振り返すと、尚は玄関へと走った。
「はあ〜…ったく、最近のガキは…」
「ごめんって。」
尚を送ったあと、俺の腕を手当てするため、ここから近い先生の自宅に行くことになった。
「そういや、先生って何であんなとこ来てたの?」
「あ?コンビニだよ。あそこ人少ねーし、品数多いから気に入ってんだよ。」
「へえー…俺もあそこ行こうかな…。」
「やめろ!せっかくの特別コンビニだったのに!!」
「ははw特別コンビニってなんだよw」
俺が笑うと先生はどこか安心した表情になった。
「てか、お兄さんは大丈夫なのか?もう、結構な時間だけど。」
「うん、大丈夫だと思う…。る、兄さんも今日出掛けてるし。」
「お兄さんも大変だな。こんな問題児の面倒見るなんて。」
先生はわざとらしく落ち込む。
「…先生ってさ、本当に先生なの…?」
「失礼だな。頭からつま先までどう見ても先生だろうが。」
「見えないから言ってるんだけどなー」
「はあ!?」
「まあ、遠慮なく座れ。」
先生の家は本当にここから近くて、あれからすぐに着いた。
マンションの25階で、結構高い…。
「先生って一人暮らし?」
「ああ。そうだけど?」
隣の棚から治療箱を取り出しながら答えた
そして俺の前に行くと、そっと腕を持ち上げ、手当てを始めた。
「不審者って本当にいるんだな。」
「いなきゃあんなめんどくせえ訓練なんてしないだろ。」
「…先生がそんなこと言ってもいいの?w」
「ナイショな。」
唇に人差し指をあて、小悪魔みたいな笑顔をする。
この年でそれが似合う人なんて、先生しかいないな。
「先生って結婚してなかったんだ。」
「なんだ?嫌味かぁ?」
「違うよ、結婚してそうだったから…。」
「してない。めんどくせーじゃん。」
「うわっ、最悪〜w」
すると、先生は懐かしそうな顔をした。
「まあ、その分、あのときお前に救われたんだけどな。」
「え?」
「よし!できた!!もう、お前も帰れよ。」
「うん。ありがとう。また来るよ。」
「もう、来んな。」
先生はにこっと笑うと、俺の頭をそっと撫でた。
あのときと同じだ…。
「お邪魔しました!」
「おう。花、落とすなよ。…ここにいたらお兄さんが迎えに来てくれるんだろ?」
「うん。」
あのあと、中々帰らない俺に心配したのか、類さんから連絡があった。
「お兄さん、初めて見るなー。」
「すっごいイケメンだよ。」
「げっ…イケメン苦手なんだよな…。」
「何でだよ…wあ、ほらこの前…」
説明しようとすると先生は俺の腕を引っ張った。
「え?」
「ここ…血がー…」
すると、誰かが勢いよく、先生の手から俺の腕を取る。
「あ、類さん。」
「笑、迎えに来たよ。…で、その人は?」
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