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「ありがとうこざいました!」
外国人であろう店員さんは、とても丁寧で気持ちがいい。
貴君がコンビニで働いてもきっとこんな感じかな?なんて勝手に想像したりして。
コーラを2本買って外に出た。
ちょうど貴君の車がやってきた。
運転席から貴君が顔を出す。
「あ、私、車あっちにとめたの」
自分の車を指さす。
オッケーと貴君もそっちへ車をとめた。
私は車からチケットとパンフレットを取り出すと、貴君の車に乗り込んだ。
「お待たせ!片付けに手間取ってしまって」
「きちんとしてるからね、貴君は。まぁ、そこがいいとこなんだけど」
はい、これ!とコーラとチケットとパンフレットを渡す。
パラパラとめくる。
「すごいなぁ、写真でこんなに綺麗なんだから実際に見るともっと綺麗なんだろうなぁ」
「うん、なんかね、現実から離されて違う世界に行ける、そんな感じがするよ。映画とかもいいけど、もっとリアルというか生々しく感じられる」
へぇー、すごいなぁとパンフレットを見る貴君。
ひとしきり見たあと、顔を上げて私を見た。
目が合う。
私の中からある感情が湧き上がったのは、暗いこの場所のせいだろうか?
「ねぇ、聞いてもいい?」
「なに?てか、未希さんて、よく質問してくるね」
「そう…だね、でも聞かないとわからないから」
「いいよ、なに?」
「私が貴君のことをどう思ってると、貴君は思ってる?」
ピタリと時間が止まる。
「どう思ってるかと聞かれたら、それは好きだよ」
あれ?なんか質問の答えになってない?
ちょっとだけ照れたように見える貴君。
「貴君は、私のことを好きだと思ってくれてるってこと?」
「だから今言った」
ぷっ、と吹き出す。
私の質問の仕方が悪かったんだけど。
「好きか嫌いかと聞かれたら好きでしょ!」
少しだけムッとしてるみたい。
質問の意味が違うけど、まぁいいか。
私はなんだか可笑しくて、クククッと笑いをこらえながら貴君にキスをした。
「これって、不倫?」
貴君が真顔で言う。
「あー、そうなる?大丈夫だよ、事故みたいなもんだと思いましょ」
「だよね?不可抗力の事故だ、うん」
そこ、あんまり強く言われると凹むなぁ。
「聞いてもいい?」
今度は貴君からの質問。
「はい、どうぞ」
「なんで?」
「なんで?したくなったから、じゃダメ?」
「ううん、いい、それで」
なんで突然キスしたくなったのかなんて、自分でもわからない。
でも、したくなった、それだけ。
これも現実逃避なのかなと思った。
思わずキスしてしまったけど、最近のゴタゴタが全部軽くなった気がした。
そして、約束していた劇団の舞台を観に行った。
今度は私の運転で、貴君を乗せて出かけた。
初めてだという舞台観劇に、貴君も喜んでくれた。
帰り道、途中でよったイタリアンで、チケット代を渡された。
「まいどありぃー!これさ、面白くなかったからチケット払い戻しって言われたらどうしようかと思った」
「それは、よほどひどいやつだよね?」
「そうなんだけど。ね、これからもこんな楽しいことしたいね、貴君と」
「いいよ、美味しいものも食べたいし」
「これ、デートじゃないからこれからも、費用はそれぞれってことにしよ!」
「もちろん!そうしないとおかしなことになりそうだし」
私はおかしなことになってもいいよ、なんて言えるはずもなく。
「こういうことを一応決めておかないといけないのも、異性の友達ならでは、だね」
と貴君。
「そうだね、でもそういうとこきちんとしとくと、貴君に彼女できたときに、私との区別ができるから安心。あ、もしかして異性の友達を認めない彼女だったら、無理だね」
「それは心配ないよ、付き合う時に説明して認めてもらう。未希さんとの付き合いの方が先だったからってね。それができない人とは、付き合わないよ」
「ホントに?だったらうれしいな。こんな楽しいことって、女同士だと案外うまくいかないんだよね、この年になると家族の愚痴とか体調がどうとかの話になっちゃって」
「それはあるかも?男同士はそんなめんどくさいことないと思うけど…あ、いや、男同士で出かけるのを嫌がる奥さんっているからなぁ、俺の友達にもそんなやついるわ、嫁が許してくれないから断るって」
「へぇー、そうなんだ。なんにしても女はめんどくさいね、女の私が言うのもなんだけど」
「その辺、未希さんは気軽だから助かる!」
「それはよかった」
私が結婚してるという事実があっても、友達ならそれは関係ないということ。
この前、キスしてしまったことを少し後悔した。
私、なにやってるんだろ?
心の奥に芽生えつつあった気持ちは、押し込んでおくことにした。