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若井Side
ピーポー…ピーポー…… ウー…ウー…ウー…
先程から忙しなく
サイレンの音が鳴り響いていた。
それが宣伝となってしまっているのか、
たくさんの野次馬たちが
ここに集まってしまっている。
俺たちがここに駆けつけてから
数十分しないうちにマンションの前は
人の海と化していた。
この海の中に元貴が紛れていればいいのに。
そんな叶うはずのない願いを唱えながら、
ぼんやりと見つめた先では
何十本にも及ぶホースから
すごい勢いで水が噴射され、
炎へ向かっていく様子が映し出されていた。
みんな必死で戦っているのだ。
にも関わらず、
一向に消火される気配はなかった。
それがこの火事の残酷さと
己の無力さを同時に強く表しているように
さえ感じる。
俺はただただその光景に圧倒され、
立ち尽くしていた。
その間にも、救急救命士や消防士の人たちが
緊迫した表情で動き回っている。
その甲斐があってか
何人もの住民たちが担架に乗せられ、
運び出されて来ていた。
親族や親友と再開し、抱き合って喜ぶ人。
安心と安堵の涙を流す人。
駆けつけていた知り合いに「大丈夫だよ」と
微笑みかける人。
その中に元貴の姿はなかった。
このまま、元貴が戻ってこなかったら…
いなくなってしまったら…
さようならもありがとうも言えないまま
元貴との時間が終わってしまったら…
どんどんマイナスな方向に考えてしまう。
元貴が心配で心配でたまらない。
なのに………
なのにっ…俺にはなにもできない。
ただただ、無事を願って待っているだけ。
ただただ、時間が過ぎていくのを待つだけ。
ああ、無力だな
辺りは既に日が沈み、闇に包まれた空には、
今の俺の気持ちに似使わない
綺麗すぎる満月が浮かんでいた。
…ぃ……?…わ………かぃ………?
「若井ってば!」
…?!
突然、肩に軽く衝撃が走ったと
同時に名前を呼ばれた。
「ぅわっ…!?」
慌てて振り向こうとした拍子に足がもつれ、
俺はバランスを崩した。
「わっ……大丈夫!?」
間一髪のところで涼ちゃんが支えてくれる。
「ごめん………」
涼ちゃんは数秒の間、こちらをじっと見つめたあとふっと無理やり笑って
「全然大丈夫だよ、!
それより向こう行かない?
ここ混んできちゃったしさ」
と、救急車の近くを指差し
軽く俺の背中を押した。
ああ、気を遣わせちゃってるな……
ほんとにごめん…涼ちゃん……
そんなことを口に出せないまま、
俺は俯きがちにゆっくりと歩き始めた。
救急車の近くに行くと、
隊員さんたちの声が聞こえてきた。
「…………さん…お……もりさん
……大森さん!聞こえますか!」
え………?……大森…?
俺は勢いよく顔をあげて、
声の主の方向を見た。
そこには数人の救急救命士さんたちが
ひとつの担架を囲むように立っていて、
何やら忙しそうに動き回っていた。
そして、その担架に乗せられているのは
元貴だった。
コメント
4件
すき
あんなに早く続きが読みたかったのに 今は 読むのが怖くなってきました。 元貴お願いっ!!無事でいて🥹
ああ、やっと見つかった……! でも担架の上ってのがすごく気になる。火事の描写がすごく生々しくて、若井の「自分に何もできない」って焦りと無力感がひしひし伝わってきた。満月が綺麗すぎるって対比も刺さる。涼ちゃんの気遣いにも泣ける。元貴、無事でいてほしい……!