꒷꒦꒷꒦꒷ まふゆ視点 ꒦꒷꒦꒷꒦꒷
フェニランに着き有料公演チケットを渡し、
席に着く。
(……楽しめる、かな)
楽しめたらいいな、という希望を持ちながら
始まるのを待った。
暫くして幕がゆっくりと上がる。
(あ、始まる…)
会場内が静まり、主人公役の女性が出てきた。
「嗚呼、私の事を助けてくれたなら……」
「見捨てないで、くれたなら……」
『ッ、!』
どこかで見た光景……の様な気がするが、
気の所為という事にして目の前のものに集中する。
その主人公の女性の静かだけど何処か力強く、響く声は誰かに似ていた。
どうやらこの物語は主人公の女性、ののは
救われない、哀れな人生を歩んできた女性らしい。それと同じようにもう2人の女性も出てきたのだが、その2人も哀れな人生を歩んできた女性らしい。2人の名はまゆ、みき。
まゆとみきは言う。
「もういっそ、消えてしまえば……」
「救われないのなら、…」
そしてののも言う。
「もう、いいよね……」
3人が全てを投げ出そうとしたその瞬間。
綺麗なオルゴールの音色が会場に響き渡る。
とても綺麗で繊細で、思わず聞き入ってしまう。
「なに、この音色…? 」
「綺麗……、」
「ど、何処から…」
3人が困惑し始めると、1人の少女が奥から出てくる。
…そう、それこそ鳳さんだった。
……でも、いつもの鳳さんとは何処か違う雰囲気が漂っていて…
「……貴方達が人生を捨てるのはまだ早い、
…私に救われてみない?」
静かで暗く、小さい希望、光のような声は
鳳さんの演じるかなだった。
かなはオルゴールを片手に3人を見下ろす。
「え…、救って、くれるの?」
「でも、私達はもう……」
「オルゴールの音色を聞いたって…」
「……大丈夫だよ、」
かなが優しく語りかける。
「みんなは、もう十分頑張った。」
「……だから疲れちゃうんだよ」
「……でも、救えるの…?」
「そうだよ、」
「救えっこない、!」
その後もかなは幾ら3人が「無理だ」と言っても救う事を辞めなかった。
そしてある日。
かなの持つオルゴールが壊れてしまった。
もう、演奏を奏でられず皆を救う音色さえも
奏でられなくなってしまった。
「そんな、どうして…どうしよう……、!」
3人の前でかなは泣き崩れた。
「だ、大丈夫よ…すぐ、なおるって、!」
「そ、そうだよ!…だから、泣かないで、?」
「うん、私達はもう十分……」
慰める3人とは対照的に、かなは張り詰めた声でなんとか言葉を発した。
「これは、お父さんの…形見なの、……」
空気がひんやりと冷たくなる。
「あ……、」
3人はもうなにも言えなくなっていた。
……そんな時、3人の目の前にキラキラとした光が現れ始める。
「わっ、何…コレ……、?」
「キラキラ光ってるよ、!?ナニコレ!?」
「なんだろう……」
3人はキラキラとした光を見つめていると、
自然とオルゴールが鳴り出しているのに気付いた。
「え、オルゴールが……!」
「わっ、凄いよ!鳴り出したよ!!」
「どうして、直ったの……、!?」
みんなは嬉しそうに笑うとオルゴールの音色に浸った。
やっぱり綺麗で繊細な音色は人々を惹き付ける。
オルゴールの音色が途切れると、
みきは口を開いた。
「……かな、もう大丈夫だよ。 」
「え…どうしたの、何が、?」
困惑するかなを置いて、まゆとののも続けて口を開く。
「もう、私達は…救われたよ、かなに」
「え、私…に……、?」
「……うん、ありがとう…かな」
「……!」
3人の言葉を聞いたかなはまた目から涙が溢れ出て止まらなかった。
「……救えてたんだね…よかっ、た…!」
泣き喚くかなの背中を擦りながらみきが口を開いた。
「……本当に感謝してるよ、ありがとね、かな」
最後にまたオルゴールの音色が会場内に鳴り響き、まゆがゆっくりと口を開いた。
「……私達は救われたんだよ、」
まゆのその言葉を最後に幕がゆっくりと降り始める。
1時間ちょいなんてあっという間で、 満足感に溢れていた。
(あ、もう終わったんだ…)
寂しくも思いながらもう少しこの余韻に浸っていたかった。
……物語、凄く良かったし…感動したな、。
……何処か、知ってるような気がしたけど。
(あ、鳳さんにお礼言わなきゃ……)
東雲色の空に背を向け、帰路に着いた。
35日目
今日は鳳さんから貰ったチケットで
ショーを見に行ってきたよ。
…と言っても登場人物は4人って感じで少ないし、劇みたいな珍しいショーだった……。
凄く感動したし、鳳さんには感謝だけど…
何か見覚えのあるストーリーだったんだ。
…気の所為、かな。
まふゆ
コメント
7件
かなが奏で、まゆがまふゆで、ののが絵名で、みきが瑞希ですかね?
トワイ=黄昏=東雲…? 最後も「東雲色の空」で終わったから、もしかして絵名の日記につながる…?