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遅れてしまってすみませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!!!!




ってことで続きどそ!





ー竜胆ー



九井から出張場所を聞いてアジトを兄ちゃんと飛び出し、車を走らせてから助手席に座る兄ちゃんは一言も言葉を放っていない。

チラリと横を見れば窓に肘を掛けながらケータイで何かやっているみたいだった。


「なに、してんの?春に連絡?」

「ん?ちげぇよ。あ、その先右に曲がって」

「は?春がいる(かもしれない)方向じゃないんだけど!?」

「分かってるよ。行く前にちょっと、な?」


そう言って見せられたケータイの画面に兄ちゃんが何をしたいのか分かった。


「分かった。けど春のところにすぐに行きたいから手短に済ませるよ」

「分かってるって。俺だって春が優先だよ」


右に曲がり、しばらく走らせれば人影が見えた。

車のライトを当てれば眩しそうにしながらこちらを見ているのはついちょっと前まで一緒にいた女が立っていた。

すると兄ちゃんが降り、すかさず女の両手を取ると後ろで結束バンドを使って一つに括り、口にガムテをするとトランクに乗せた。

助手席に兄ちゃんが乗るのと同時に車を走らせ近くの林に入り、車を止めるとトランクを蹴り続ける女を一発殴る事で黙らせ俺は上半身、兄ちゃんは下半身を持ち大きな木の下に降ろし、俺たちは女の前にしゃがんで前髪を持ち顔を上げさせた。


「暴れんなよ。いいか?今から聞く事にだけ答えろ」


そう言うと兄ちゃんはガムテを剥がした。

けど女はやはりバカなのか誰が見ても相当キレてる兄ちゃんに気づく事なく『これはどういう事』とか『こんな事してタダで済むと思っているのか』とかハエのように煩く喚いては俺たちを蹴ろうとしているのか脚を動かしている。


「暴れんなっていったよなぁ?お前耳ついてんのか?これは耳じゃねぇの?なぁ?使えねぇなら取ってやろうか?これ」

「おい。俺と兄ちゃんはお前に構ってる暇ないんだよ。○✕組のバカ頭…じゃなくて若頭の居場所、早く吐けよ。お前そいつの女なんだろ?知らねぇわけねぇよなぁ?」


兄ちゃんに耳を引っ張られた女は『痛い痛い』と泣きわめき正直耳障りでイライラする。

本気で死ぬまでぶん殴ってやろうかと思ったが俺たちが探してる男の居場所を知る必要がある。

それを吐くまでは殺せない。

あぁ~・・・1秒でも早く春千夜の元に行きてぇのに。


「ったく。しょうがねぇな。んじゃ、このままここで拷問受けるか、居場所を吐くか選ばせてやるよ。どっちがいい?」

「早く答えろよ?黙ってれば蘭ちゃんが1秒毎にお前の指、折ってくからな~?」

「だって。ほら吐け。男はどこにいんだよ」

「はぁい。1秒~」


ポキッと軽い音と共に悲鳴が木霊する。

うるせぇと舌打ちすれば、兄ちゃんは2本、3本と着々と女の指を躊躇なく、まるで枝を折るように軽快に折っていく。

すると女は涙と鼻水を垂らしながら6本目でやっと男の居場所を吐いた。

指を折られたのがよっぽど痛く辛かったのだろう。

こんなの拷問にも入らねぇのに根性のねぇやつ。


「なるほどな。教えてくれてありがとう。じゃあ死んでね?」


女は『なんで』『居場所教えたでしょ』と喚き散らしまた暴れだした。

暴れるの女の頭を鷲掴みした兄ちゃんは口元は笑っているのに目が全く笑ってない顔を女に近づけるとあまり聞かない低く悪魔のような感情など皆無の声色で話すと女は瞬時に暴れるのをやめた。


「俺たちにはさ、そりゃあもう世界で一番可愛くて大切な恋人がいるんだけど。しょうもねぇてめぇなんか仕事とはいえ、構っちまったせいで大事な大事な俺たちの恋人が傷付いちまった。本来なら情報さえ聞き出せればお前なんかどうでもいいんだけど、お前生きてたらさ、可愛い恋人がまた傷付くかもしれないだろ?だから、な?」


『やめて』『お願い殺せないで』と乞うが俺はサイレンサーを付けた銃を蟀谷に当てると引き金を引いた。


「「情報ありがとう」」


動かなくなった肉塊をそのまま放置し、車に乗れば兄ちゃんが電話で部下に後始末の指示を出している。

これでやっと春のところに行けるとまた車を走らせた。



ホテルに着き、責任者に春の所在を聞けばやはりこのホテルにいた。

部屋の番号と万が一のためにスペアキーを借りるとエレベーターに乗り、階数を押した。

エレベーターが着き、春の部屋の前まで来るとドアをノックしようとした手が少しだけ震える。

出て来なかったら?出てきてもすぐに閉められてしまったら?帰れって言われたら?顔も見たくないと言われたら?別れるって言われたら?

あぁ・・・。ダメだ。

そんな事言われたらたぶん春を殺して俺も死ぬ自信しかない。

ドアの前でいつまでもノックしない俺に痺れを切らしたのか兄ちゃんが2回ドアをノックした。


「……はい」


ノックをしても応答がなかったため何度かノックをしたあと小さな返事が返ってきた。

春千夜だ。


「誰?」

「…春?俺、竜胆」

「蘭だよ。少しだけ開けてくれない?」


そう言うとチェーンの掛かったままのドアが開いた。

春の顔を見れば目元が赤くなっていた。

あぁ・・・。

泣かせてしまった。

俺、ホント最低な彼氏だ。


「何…」

「は、…はる。ごめんね、今日の約束のこと」

「ホントごめん。ちゃんと話をしたくて」

「もう、別にいいし…」

「よくない!全然よくないから!絶対最悪なこと考えてるだろ」

「言っておくけど俺たち浮気なんかしてないからな!!今日のもちゃんと理由がある」

「竜胆の言う通り、ホント浮気してない!お願い。だから話を聞いてほしい。このままでもいいから」


うつむき悲しそうな春の顔を見て胸が痛くなった。

そんな顔させたいわけじゃないのに・・・。

鬱々とそう考えていると春がため息を吐き、カチャリと一度ドアを閉めるとまた開き、ひょこっと顔を出し


「……とりあえず入れよ。そこで話すと迷惑になっちまうから」


と、チェーンを外しドアを開けてくれた。

部屋に入り、ベッドに春を挟んで座ったのは良いが春は何も言わず俯いてる。

ズズっと啜る音がして春のぎゅっと握る手を見れば甲に涙が落ちていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ー蘭ー



春が俺たちの前がいなくなろうとしている。

ドアを開けた春を見た瞬間そう感じた。

悲壮と絶望と諦めの顔、そして赤い目元が俺の胸を貫くようにツキッと痛んだ。

やっぱり春は俺たちとあの女が一緒にいるところを見てしまったのだと確信した。

だから竜胆と俺は必死に浮気じゃない。浮気なんかしていない。と釈明すればホテルの廊下では人目があると中に入れてくれた。

春を挟んでベッドに座るが俯く春はポタポタと涙を落としながら静かに泣いている。

あぁ・・・こんな風に泣かせるためにこの日を計画したわけじゃなかったのに。

でも春が泣いてる原因は他でもない、俺たちだ。

俺たちが約束を破ってしまったせいだ。

悔やんでも悔やみ切れない気持ちをどうやって落ち着かせようか握りしめた手に更に力を入れれば爪が食い込む感覚がしたが、そんなのどうでもいい。

春はもっと傷付いたのだ。

何て声を掛けようか迷っていると竜胆が春の前に跪き、涙で濡れた手を両手で包んだ。


「はる…」

「っ、さわるな!優しくなんかすんなよ…」

「なんで?…なんで春に優しくしちゃダメなの?」

「好きなヤツに優しくしたいって思うのは普通だろう?」

「好き…?誰が?誰を好き?」

「春?」

「春千夜?」

「好きってなに?好きなのに浮気すんの…?俺が男だから?スタイルも顔もよくないから?キズがあるから?ヤク中だから?だから嫌になった?だから嫌いになったのか…」

「ち、ちが…。春、違うから」

「もうやだ…。ならなんで…。っ、なんで俺の事好きだって言ったんだよ!裏切るくらいなら好きなんていうな!……好きなら浮気なんかすんなよ…」


イヤイヤと頭を振り話を聞こうとしない春の頬を包むとこちらを向かせ額と額を合わせる事で落ち着かせると、ボスからの命令である組織の男の居場所を探るためにその男の女に近づきハニートラップを仕掛けようとしていたこと、その女がたぶん、春が今日見たであろう女の事であると説明した。


「でもあの女は…お前たちの元カノだろ?」


春はまた俯き寂しそうな顔をした。

頭を撫で、誤魔化す事はせずちゃんと嘘偽りなく話そうと決めていたから春の言葉に否定はしない。


「うん。よく覚えてたね。確かに元カノと言えば元カノかな。まぁ、ホントにあまり記憶がないんだけど」

「あのな、春。俺と兄ちゃんは別にあいつが好きで付き合ってたわけじゃない。いいムシ避けになると思って付き合ってたんだよ。だから今回、重要人物として浮上してこなかったら存在自体忘れたままだったし」

「そうそう。良かったのはスタイルと顔くらいだし」

「兄ちゃんっ!」

「でも、それだって春には勝てないよ。顔もスタイルも、それだけじゃない。照れたり恥ずかしくなると顔が赤くなったり、声が小さくなったり」

「仕事中はかっこいいのにプライベートは結構天然なところがあって可愛いし、綺麗好きで料理上手で辛いものが苦手で甘いものが好きで」

「ボスが一番だとか言ってるけどたまにボスより俺たちを優先してくれるところや俺たちを分け隔てなく好きでいてくれるところも全部、誰も勝てないよ。春しか無理」

「そうだよ。男とか顔のキズとドラッグとか関係ない。俺たちの好きな人は春だし、恋人も春。あんな女興味ないしこの先も春だけだよ」

「そうそう。それに、もう情報も聞き出せたからスクラップにしてきちゃったし」

「はあ?スクラッ…っ、え…?」

「だって、あの女生きてたらまた春が傷付くかもしれないなぁと思って」

「言ったろ?俺と兄ちゃんには春だけだよ。春さえいればいい」

「春が嫌なら元カノ全員スクラップにしてあげる。もちろん、春が嫌いやつも俺たちが消してあげる」

「だからお願い。泣かないで。俺たちを信じて。好きだよ、春」

「俺も春ちゃん大好き。俺にも竜胆にも春しかいらない。春千夜だけ」


竜胆はもう一度春の隣に座ると手を握りもう片方の手で春を抱き締めた。

俺も同じように手を握り抱き締めると春は「うれしい」とさっきよりもポロポロと大粒の涙をこぼし泣いてしまった。


どれだけ不安だったろう。

何時間も連絡のつかない俺たちを待ち続け、女といる俺たちを見てしまった春の心は俺たちが想像しているよりも傷付きボロボロだったに違いない。

よりいっそう強く抱き締めると春はたどたどしく握る俺たちの手をきゅっと握り返してくれた。


よかった・・・。

本当に良かった。

別れると言われたらどうしようかと思った。

良かった。

この腕の中に春が居る・・・。

春の頭部にキスをすればふわりと香る甘い匂いとシャンプーの香り。

これだ。

もうこの匂いじゃなきゃ安らげない。


「春、ごめんね。ごめん…ごめん」

「竜胆、もういいよ。俺も勘違いしてごめん」

「バカ。春ちゃんは何も悪くないだろ?悪いのは全部俺と竜胆だよ」

「そうだよ。春」

「ホントごめんな。ホテル、楽しみにしてたよな」

「うん…まぁな。けど、また一緒に休み取って泊まろう?今度はぜってぇ忘れんなよ!」

「もちろん!絶っ対忘れない!!約束な!はる大好き♡」

「俺も。絶対忘れないから嫌いにならないで。春ちゃん大好き♡」


3人してベッドへ倒れそのままギュウギュウに抱き締めればクスクス春が笑い出して「俺もお前ら大好き」っていつも言わない言葉をもらってしまった。

あぁ~…ヤバい。

春は出張のためにここにいるのに抱き潰してしまいそうだ。

竜胆なんか春が気づいてないだけで目がもはやハンターのソレをしていた。

日付も変わってバレンタインだ。

これからの時間は、時間と春の体力が許す限りたくさんの愛を伝えよう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



ー春千夜ー


怒りと寂しさと悔しさと勢いで出張を申し出て来てしまった。

近くに居なければ、視界に少しでも入らなければ一時でも忘れられると思っていたのに、やっぱり頭を占めるのは2人の事で。

あの見た事ない笑顔が忘れられない。

着いたホテルの部屋はそれなりのランクなだけ広々としていてベッドもデカイ。

キャリーケースを置くとベッドへダイブし、別れ話をするべきか、そもそも付き合っていたのか、悩めば悩むほど考えれば考えるほど浮かんでくるのは最悪な事ばかり。

好きだった。・・・いや、今も好きだ。

誰よりも何よりも。

あいつらが言うからドラッグを少しずつ減らし、今では服用してない日の方が増えたほどだし、いつも手持ちぶさたなのか毎日飽きもせずに頭を撫でるからシャンプーを変え、オイルでケアしている。

それだけじゃない。

あいつらが触れるから肌のケアも顔から身体、全てをケアするようになったし、料理だってバリエーションを増やしたりしたのに・・・。

俺の努力は無意味だったのだろう。

振られる。今日の事を話せば俺は完全に振られる。

だけどこんなに傷付いてるのにまだ好きなのだ。

だから出張が終わるまでは知らんぷりをさせてほしい。

そう思いながら流れる涙をそのままに目を瞑った。



●○●○●○●○●○●○●○●○●○



ードンドンドン、ドンドンドンー



いつの間にか寝てしまっていたようだ。

泣いてしまったせいで少しだけ瞼が重く、目元も擦ってしまったからヒリつく。

頭が少しだけボーッとしている間もドアを叩く音は止みそうにない。

部下たちではないはず。

こっちに着いた時に明日の迎えまで連絡も部屋にも来るなと言っておいたから。

じゃあ、ホテルのフロントマンか?

でもホテルのやつなら事前に電話か何かするよな・・・?


「……はい」


と、ドアの前で返事をして「誰?」と聞けば


「…春?俺、竜胆」

「蘭だよ。少しだけでいいから開けてくれない?」


ドアを叩いていたのは蘭と竜胆だった。

正直会いたくなかった。

なんで来たんだろうか。

てかこの場所は誰に・・・あぁ、九井か。

あの時ちゃんと口止めしておくんだった。

開けないわけにもいかないず、チェーンが掛かったままドアを開けるとそこには少し青ざめた必死な顔の竜胆と髪が少し乱れ、こちらも必死な顔をした蘭がいた。


「何…」


出来れば帰ってほしいという気持ちを込めて言えば二人は一瞬ショックを受けたような悲しそうな顔をした。


「は、…はる。ごめんね、今日の約束のこと」

「ホントごめん。ちゃんと話をしたくて」

「もう、別にいいし…」

「よくない!全然よくないから!絶対最悪なこと考えてるだろ」

「言っておくけど俺たち浮気なんかしてないからな!!今日のもちゃんと理由がある」

「竜胆の言う通り、ホント浮気なんてしてない!お願い。俺たちの話を聞いてほしい。このままでもいいから」


やっぱり今日の事忘れてたのか。

分かってはいても確信するとやっぱり悲しい。

別にいいと言えば二人はよくないとか浮気じゃないとか話を聞いてほしいとかこのフロアは俺しかいないとはいえ廊下で結構な声量で畳み掛けてくれば響いてしまっていい迷惑だ。

二人を見るに話を聞くまでは帰ってはくれない、そう言う雰囲気が二人に感じられチェーンを外してもう一度ドア開けた。


「……とりあえず入れよ。そこで話すと迷惑になっちまうから」


と言って部屋へ招いて俺を挟むようにしてベッドへ座ったのはいいが、どうしていいか分からず、頭の中では最悪な事ばかりグルグルと駆け巡る。

別れてほしいと言われるのだろうか。

やっぱりやだなぁ・・・。

別れたくない・・・。

でも、わがままは言えない。

沈黙が長くなれば長くなるほど最悪な考えが心を蝕み気付けば涙を流していた。


「はる…」


いつの間にか竜胆は俺の前に跪き握る手を包みながら優しく声を掛けられた。


「っ、さわるな!優しくなんかすんなよ…」

「なんで?…なんで春に優しくしちゃダメなの?」

「好きなヤツに優しくしたいって思うのは普通だろう?」

「好き…?誰が?誰を好き?」

「春?」

「春千夜?」

「好きってなに?好きなのに浮気すんの…?俺が男だから?スタイルも顔もよくないから?キズがあるから?ヤク中だから?だから嫌になった?だから嫌いになったのか…」

「ち、ちが…。春、違うから」

「もうやだ…。ならなんで…。っ、なんで俺の事好きだって言ったんだよ!裏切るくらいなら好きなんていうな!……好きなら浮気なんかすんなよ…」


こんな事いうつもりなかったのに。

2人を傷付けて、自分も傷付くのに・・・。

自己嫌悪ともう何も聞きたくない気持ちで何かを話そうとする竜胆の言葉を遮るように頭を振れば頬を包み込まれ蘭の方に向けさせられる。

離せと言わんばかりに頭を動かそうとするが蘭は俺の額と自分の額をくっつけ「聞いて」と聞いた事のない少し真面目な声に動きを止めれば今日見た女の事、ボスから頼まれた案件の事、ある男の居場所を知りたいがためにハニートラップを仕掛けていた事。

聞いて、竜胆をちらりと見れば真剣な顔でコクンと頷かれ嘘は言ってないと分かった。

けど一つだけやっぱり気になる事がある。


「でもあの女は…お前たちの元カノだろ?」


聞かなきゃ、今聞かないでうやむやしたらずっと心のどこかに引っ掛かったままになってまた2人にひどい事言ったりしそうだった。


「うん。よく覚えてたね。確かに元カノと言えば元カノかな。まぁ、ホントにあまり記憶がないんだけど」

「あのな、春。俺と兄ちゃんは別にあいつが好きで付き合ってたわけじゃない。いいムシ避けになると思って付き合ってたんだよ。だから今回、重要人物として浮上してこなかったら存在自体忘れたままだったし」

「そうそう。良かったのはスタイルと顔くらいだし」

「兄ちゃんっ!」


そ、だよな。

確かに遠くから見てもスタイルが良かった。

3人並んでるとお似合いで・・・。


「でも、それだって春には勝てないよ。顔もスタイルも、それだけじゃない。照れたり恥ずかしくなると顔が赤くなったり、声が小さくなったり」

「仕事中はかっこいいのにプライベートは結構天然なところがあって可愛いし、綺麗好きで料理上手で辛いものが苦手で甘いものが好きで」

「ボスが一番だとか言ってるけどたまにボスより俺たちを優先してくれるところや俺たちを分け隔てなく好きでいてくれるところも全部、誰も勝てないよ。春しか無理」

「そうだよ。男とか顔のキズとドラッグとか関係ない。俺たちの好きな人は春だし、恋人も春。あんな女興味ないしこの先も春だけだよ」

「そうそう。それに、もう情報も聞き出せたからスクラップにしてきちゃったし」


2人の言葉に顔が赤くなるのを自分で分かるくらい。

それと同時に涙が溢れ視界がぼやける。

なのに蘭の言葉に涙が一瞬で引いた。


「はあ?スクラッ…っ、え…?」

「だって、あの女生きてたらまた春が傷付くかもしれないなぁと思って」

「言ったろ?俺と兄ちゃんには春だけだよ。春さえいればいい」

「春が嫌なら元カノ全員スクラップにしてあげる。もちろん、春が嫌いやつも俺たちが消してあげる」

「だからお願い。泣かないで。俺たちを信じて。好きだよ、春」

「俺も春ちゃん大好き。俺にも竜胆にも春しかいらない。春千夜だけ」


もう本当にバカ。

なにやってんだよ、お前ら。

俺が傷付くからって普通殺すかよ。

俺の事好きすぎだろ・・・。

あぁ、ダメだ。

本当に好き。

蘭と竜胆が好き、大好き。

俺だって2人だけだ。


「うれしい」


と、握る手を自分からもキュッと握るとよりいっそうぎゅっと抱き締められた。

ヤバい。安堵したら引いたはずの涙が溢れポロポロと頬を伝い流れる。

良かった。

振られなくて、別れるなんてならなくて良かった・・・。


「春、ごめんね。ごめん…ごめん」

「竜胆、もういいよ。俺も勘違いしてごめん」

「バカ。春ちゃんは何も悪くないだろ?悪いのは全部俺と竜胆だよ」

「そうだよ。春」

「ホントごめんな。ホテル、楽しみにしてたよな」

「うん…まぁな。けど、また一緒に休み取って泊まろう?今度はぜってぇ忘れんなよ!」

「もちろん!絶っ対忘れない!!約束な!はる大好き♡」

「俺も。絶対忘れないから嫌いにならないで。春ちゃん大好き♡」


今度は絶対あのホテルに泊まろうと約束して、ゆらゆらしながら3人してベッドへ倒れれば2人にそのままギュウギュウに抱き締めれた。

2人の匂いと体温に包まれると本当に幸せで安心する。

日付も変わってバレンタインデーだ。

今日くらい素直になろう。


「俺もお前ら大好き」


そう言えば2人から頬へチュッ♡キスされた。








☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



2人ともこのままここに泊まっていくみたいで控えている俺の部下に着替えの調達を頼んでいた。

フロントにシャンパンや軽くつまめるものなどを頼み、腹に収めていく。

デザートも来ていてクローシュを開ければハートの形をしたチョコレートケーキが入っていた。

チョコの生地にホワイトチョコが掛かり上にはラズベリーやナッツなどが散りばめられていた。


「あ、チョコケーキ。今日バレンタインデーだもんな。ホテルのオーナーからだって」


竜胆がそばにあったメッセージカードを渡してきた。

ここは梵天が贔屓してるホテルだから今日みたいなイベントの日はこういうのが差し入れされる。

蘭がケーキをフォークで刺し、一口サイズを俺に差し出してきた。


「はい。ハッピーバレンタイン。春ちゃん♡」

「じゃあ、俺も。はい。春、ハッピーバレンタイン♡」


2人からケーキを差し出され順番ずつ食べるとそう言えば、と自分が用意し捨ててしまったチョコを思い出した。


「蘭、竜胆。あの、ごめんな。チョコ用意してたんだけど」

「えっ!?春、チョコ用意してくれたの!?」

「うそっ!?めっちゃうれしい!」

「あ、いや、その…。用意、したんだけどお前らが女といるのを見て…ショックで捨てちゃったんだ…ごめん…」


俯き謝れば2人に頭を撫でられ顔を上げれば。


「春は悪くねぇよ。悪いのは俺ら、だろ?チョコ貰えなかったのは悔しいけど春と一緒に居られて嬉しいよ、俺」

「うん。俺も。だからそんな顔しない!ね?」

「うん。…その、ありがと」


お詫びの意味も込めて2人にケーキを”あ~ん”て、してあげればまたギュウギュウに抱き締められチュッ♡チュッ♡顔や頭にキスされる。


「ま、あとで捨てた場所教えて。あとで探しに行ってくる」

「うんうん」

「はっ!?いや、やめろよ!梵天の幹部がゴミ箱漁るとかありえねぇから!ぜってぇ教えねぇ」

「え、でも春ちゃんが俺たちに用意してくれたチョコでしょ?捨てるとかないわ」

「そうだよ。春からのチョコ、誰かが拾ってたらどうするんだよ」

「拾うか!?ゴミ箱から拾うわけねぇだろ!それに明日には収集車の中だわ」


そう言うと今すぐにでも探しに行こうとする2人を必死で止め。


「あとで!あとで!もうバレンタイン仕様は売ってないから手作りになるけど、それでいいならチョコ渡すから、諦めろって!」

「「マジ!?」」


ぐるっと似た顔が勢いよく振り返りビクッとしたが”うんうん”とコクリコクリ首を縦に動かせば2人は行くの諦めたのかクルリと身体ごとこちらを向けたかと思えば竜胆に担がれベッドへ連れていかれた。


「ちょっと待って!え、なに?」

「チョコの前に春ちゃんを戴こうと思って」

「好きだよ、春♡」

「好きだよ、春ちゃん♡」

「もう…。俺も好きだよ♡」


今日はバレンタインデー。

恋人たちの時間はまだまだこれから。



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