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「第四幕 第一章」 月影島の門
蒼海を越えて三日、〈セレス・マリス〉は霧に包まれた孤島へと近づいていた。
その島――月影島。月殿の本拠地がそびえるとされる場所だ。
しかし、島はただの岩塊ではなかった。
外周を覆う断崖は、まるで白い牙のように海へ突き立ち、その間を流れる潮は渦を巻き、船を寄せ付けない。
リュミエールが舵を握りながら言う。
「ここからは船じゃ行けない。隠された入江に上陸して、陸路で向かう」
小舟に乗り換え、断崖の裂け目を抜けると、潮の流れが急に静まった。
しかし、上陸した砂浜の向こうには巨大な石造りの門があり、中央には古代文字が刻まれている。
「……試練の門だ」
ラシードが険しい顔をする。
「月殿の古文書で読んだことがある。通る者は“心の影”と戦わねばならない」
門が低く唸り、光が走った瞬間、足元の砂が吸い込まれるように消え、あなたたちは闇の空間に落ちた。
闇の試練
気がつくと、そこは月明かりすら届かない黒い海の上。
波間から現れたのは――ラシードの姿をした“影”だった。
しかし、その目は冷たく、声は刃のようだった。
「お前はまた守れなかったな。仲間も、故郷も」
影の言葉に、ラシードの手が震える。
彼の過去――故郷を月殿に焼かれ、ただ一人生き残った事実が胸を抉る。
あなたは星槍を構えるが、影ラシードはその動きを読み切ったかのようにかわし、反撃を放つ。
リュミエールとセレスティアもそれぞれ自分の影と戦っていた。
「ラシード! 影はお前の弱さを映してるだけだ! お前が変われば、奴は消える!」
あなたの叫びに、ラシードは目を見開く。
そして、震える声で呟いた。
「俺は……もう逃げない」
その瞬間、影は砕け、黒い海が消え去る。
目を開けると、試練の門の前に立っていた。門は静かに開き、月影島の奥へ続く道が現れる。
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