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「第四幕 第二章」 月影島の夜
試練の門を越えると、月影島の奥には小さな集落が広がっていた。
石造りの家々は半ば崩れ、広場の井戸には水がほとんど残っていない。
住民たちは無言であなたたちを見つめ、やがて一人の老人が近寄ってきた。
「……お前たち、月殿を討つつもりか」
あなたが頷くと、老人は低く笑った。
「ならば知っておけ。月殿の城には、“銀月の盾”がいる」
その名に、リュミエールの表情がわずかに揺れた。
彼女は視線を逸らし、焚き火のそばに座り込む。
あなたが近づくと、彼女はぽつりと呟いた。
「銀月の盾――それは、私の兄よ」
焚き火の赤い光が、彼女の頬を染める。
「私は月殿の跡取りとして育てられた。でも、理想を捨てた兄が……父と共にこの島を支配した。私が裏切り者と呼ばれる理由は、それだけ」
ラシードが火を見つめながら口を開く。
「……俺の故郷を焼いたのも、そいつか」
リュミエールは目を閉じ、静かに頷いた。
沈黙を破ったのは、集落の少年の声だった。
「銀月の盾は無敵だ。でも、あの人は戦う前に“誓いの鐘”を鳴らすんだ」
老人が説明する。
「鐘は城の奥深くにある。もし先に鳴らせば、奴の加護は消えるだろう」
――ここで、今までの旅で集めた“星欠片”の意味が繋がった。
星欠片は、誓いの鐘の封印を解く唯一の鍵だったのだ。
それを知るや、ラシードは立ち上がる。
「なら、やるしかねぇ。鐘を鳴らして、兄貴を……いや、俺たちの敵を倒す」
夜空には満月が浮かび、その光が三人を照らしていた。
月殿城への潜入作戦は、夜明けと共に始まる――。