テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
17
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……出ないのか?」
三ツ谷隆の声が、少しだけ遠くに聞こえた。
手の中で震えるスマホ。
画面に表示された名前から、目が離せない。
(……なんで、この名前が)
本来なら、ここで関わるはずのない人物。
少なくとも――
“今までのループでは、一度も出てきていない存在”。
「おい」
千冬が覗き込んでくる。
「誰だよ」
「……分かんない」
とっさに嘘をついた。
本当は、分かってる。
分かってしまっている。
でも、言えない。
言った瞬間、何かが決定的に変わる気がした。
着信は、まだ続いている。
出るべきか。
出ないべきか。
(……出ないと)
直感が告げる。
逃げたら、また同じことになる。
ゆっくりと、通話ボタンに指を伸ばした。
「……もしもし」
一瞬の沈黙。
それから。
『やっと出た』
低い声だった。
落ち着いているのに、どこか冷たい。
『ずいぶん手間かけさせてくれたな』
背筋が、ぞくりとした。
(……知ってる)
この声。
直接じゃない。
でも、確かにどこかで――
「誰?」
できるだけ平静を装って聞く。
『分かってるくせに』
短く、笑うような息。
『何回目だ?』
心臓が、止まりそうになった。
「……は?」
思考が追いつかない。
「今、なんて――」
『こっちはな、全部見えてんだよ』
声が、少しだけ近くなる。
まるで、すぐそばで囁かれているみたいに。
『お前が何回やり直してるかも』
『何を変えようとしてるかも』
息が詰まる。
手が震える。
「……なんで」
やっと、それだけ絞り出す。
『さぁな』
興味なさそうに返される。
『でもまぁ、感謝してるぜ』
「……は?」
『お前が動くたびに、こっちも調整しやすくなる』
理解したくなかった。
でも、分かってしまった。
(……こいつ)
(ループを前提に、動いてる)
『今回、ちょっと惜しかったな』
軽い口調。
まるでゲームの感想みたいに。
『でもさ』
一瞬、間が空く。
『まだ終わってねぇぞ』
その言葉と同時に――
背後で、何かが動いた。
「――っ!」
反射的に振り返る。
そこには、誰もいない。
でも。
“気配”だけが残っている。
「……なに」
息が荒くなる。
『気づいたか?』
電話の向こうで、笑う気配。
『じゃあな』
プツッ、と音がして。
通話が切れた。
「……おい、大丈夫か?」
三ツ谷の声。
現実に引き戻される。
「顔、真っ青だぞ」
千冬も覗き込んでくる。
その顔を見た瞬間――
強く、思った。
(……このままじゃダメだ)
助けられたなんて、思ってたのが間違いだった。
これは終わりじゃない。
むしろ――
“始まっただけ”だ。
スマホを強く握りしめる。
画面は、もう暗くなっている。
でも、さっきの声だけは、消えない。
(……絶対に)
今度は、逃げない。
相手が誰でも。
何を知ってても。
「……潰す」
小さく、呟いた。