テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
7
#東京卍リベンジャーズ夢小説
花恋
30
「……出ないのか?」
三ツ谷隆の声が、少しだけ遠くに聞こえた。
手の中で震えるスマホ。
画面に表示された名前から、目が離せない。
(……なんで、この名前が)
本来なら、ここで関わるはずのない人物。
少なくとも――
“今までのループでは、一度も出てきていない存在”。
「おい」
千冬が覗き込んでくる。
「誰だよ」
「……分かんない」
とっさに嘘をついた。
本当は、分かってる。
分かってしまっている。
でも、言えない。
言った瞬間、何かが決定的に変わる気がした。
着信は、まだ続いている。
出るべきか。
出ないべきか。
(……出ないと)
直感が告げる。
逃げたら、また同じことになる。
ゆっくりと、通話ボタンに指を伸ばした。
「……もしもし」
一瞬の沈黙。
それから。
『やっと出た』
低い声だった。
落ち着いているのに、どこか冷たい。
『ずいぶん手間かけさせてくれたな』
背筋が、ぞくりとした。
(……知ってる)
この声。
直接じゃない。
でも、確かにどこかで――
「誰?」
できるだけ平静を装って聞く。
『分かってるくせに』
短く、笑うような息。
『何回目だ?』
心臓が、止まりそうになった。
「……は?」
思考が追いつかない。
「今、なんて――」
『こっちはな、全部見えてんだよ』
声が、少しだけ近くなる。
まるで、すぐそばで囁かれているみたいに。
『お前が何回やり直してるかも』
『何を変えようとしてるかも』
息が詰まる。
手が震える。
「……なんで」
やっと、それだけ絞り出す。
『さぁな』
興味なさそうに返される。
『でもまぁ、感謝してるぜ』
「……は?」
『お前が動くたびに、こっちも調整しやすくなる』
理解したくなかった。
でも、分かってしまった。
(……こいつ)
(ループを前提に、動いてる)
『今回、ちょっと惜しかったな』
軽い口調。
まるでゲームの感想みたいに。
『でもさ』
一瞬、間が空く。
『まだ終わってねぇぞ』
その言葉と同時に――
背後で、何かが動いた。
「――っ!」
反射的に振り返る。
そこには、誰もいない。
でも。
“気配”だけが残っている。
「……なに」
息が荒くなる。
『気づいたか?』
電話の向こうで、笑う気配。
『じゃあな』
プツッ、と音がして。
通話が切れた。
「……おい、大丈夫か?」
三ツ谷の声。
現実に引き戻される。
「顔、真っ青だぞ」
千冬も覗き込んでくる。
その顔を見た瞬間――
強く、思った。
(……このままじゃダメだ)
助けられたなんて、思ってたのが間違いだった。
これは終わりじゃない。
むしろ――
“始まっただけ”だ。
スマホを強く握りしめる。
画面は、もう暗くなっている。
でも、さっきの声だけは、消えない。
(……絶対に)
今度は、逃げない。
相手が誰でも。
何を知ってても。
「……潰す」
小さく、呟いた。