コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
角名くんの偏頭痛(天気頭痛)です。
約2,000文字あります。
嘔吐表現があります。
〚角名side〛
「んっ………」
朝、降りしきる雨の音で目が覚める。
まだアラームが鳴る前だ。
二度寝しようにも寝付けなかったから、仕方なく学校の準備を始める。
今日は朝練がないから、いつもよりも時間に余裕がある。
支度が終わったらスマホでもいじっていよう。
それにしても………
(いッ……ゔぅ………)
頭が痛い。
もともと偏頭痛が起こりやすくて、頭痛には慣れている。
でも、雨が降ってる時の強烈な痛みには、どう頑張っても慣れることができない。
取り敢えず薬を飲んでなんとかしよう。
(薬の効果は6時間だから………)
次は昼休みに飲めばちょうどいいか。
まだ痛む頭を押さえながら俺は、準備を進めた。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムの音が鳴り響く。
ようやく午前中の授業が終わって、校舎が喧騒を帯び始めた。
寝起きほどではないものの、まだ頭痛はやまない。
食欲もなく、静かな場所に行きたかった俺は、旧図書室へと向かった。
人が寄り付かないのに掃除はされてるから、俺の定番のサボり場所になっているんだよね。
(これで、少しは落ち着くことができるな)
取り敢えず薬を飲んでから、少し休んで………
そう考えていたのにな。
かなり疲れていた俺は目的の場所に着いた途端、糸が切れたように寝てしまった。
まだ、薬を飲んでいないのに………
キーンコーンカーンコーン。
(ん……あれ、俺………)
あぁ、そうだ。
休憩しようとして、寝落ちしたのか。
時計を確認すると16時頃。
既にHRが始まっている時刻だ。
思ったより寝ていたらしい。
(今から戻っても意味ないよな)
HR終了の鐘が鳴るまでそのまま待ち、教室へ戻って部活へと行く。
頭はまだ痛むけど耐えられないほどではない。
コレぐらいなら出来るだろう。
今日は点検の関係もあって、たかが2時間ちょっとだ。
大丈夫だ、大丈夫………
俺は頭痛を無視し続けた。
部活が始まって一時間。
休憩まで、あと5分くらい。
待っても待っても、休憩の時間は中々来ない。
たったの5分でも、今の俺にとっては無限に等しい時間だ。
(あー………きもちわる、っ)
当然だけど、頭痛は治まるどころか勢いを増していて、目眩もする。
心做しか吐き気もしてきた。
(薬効いてないじゃん)
軽く絶望しながら練習をこなしていると、ようやく休憩の号令がかかった。
スポドリを飲むのもそこそこに、俺はトイレへと向かった。
「はぁッ、はぁッ……ゔ、ぇ゙ッ………げほっ……」
本当は薬を飲みたかっただけなのに、吐き気が増してトイレに突っ伏す。
でも、どれだけえずいても、苦しみの元は出てこない。
(苦しっ)
頭痛はどんどん酷くなる。
どれぐらいの時間が経ったのだろうか。
冷や汗が止まらない。
吐きたいのに、吐けない。
練習始まってたらどうしよう。
迷惑は、かけたくないのに……
思考がどんどんマイナスへと堕ちていく。
しんどい……もう、無理……
(たす、けてっ………)
そう、願った時___
「角名っ……!おるか!」
よく通る声とともに、頼れる主将が現れた。
「北、さん……ぅ゙ッ………
ど、したん、ですか…っ」
「どうしたもこうしたも、中々戻らんから心配で探しに来たんや」
「すいま、せんッ……ぅえ゙ッ……!」
「体調悪かったんか。
我慢せんでえぇから、吐いてえぇで」
北さんが呼吸に合わせて背中を擦ってくれる。
やばっ……むり、っ……!
「ゔぇ゙ッ……げほッけほッ……!ぉ゙え゙ッ…」
ツンとする特有の匂いと共に、苦しさの原因が出てくる。
北さんが来てくれた安心感と、申し訳なさと、苦しさと、いろんな感情が混ざってぐちゃぐちゃになって、涙が零れ落ちる。
あー、しんど………
「も……大丈夫、です……」
「ほーか。一旦外でて口ゆすごか。
飲めそうやったら水も飲むんやで」
「ッス」
北さんがテキパキと動いてくれて、かなり気分がスッキリした。
頭痛は健在だけどね。
「ゔぅ……」
「にしても、どうしたん?熱中症とかか?」
「頭痛が、酷くて……」
「あぁ、偏頭痛あったもんな。
雨のせいで酷くなったとかか?」
「そうです……
あの、本当にすいません……迷惑、
かけてしまって………」
「……せやな。
何も言わんと姿見えなくなったのは、正直迷惑やったわ」
「っ、すいません……」
「でも、体調不良なったんは迷惑やない。それを隠される方がよっぽど迷惑や」
「すいま、せん……」
俯きかけた俺の目を、北さんが真っ直ぐ捕らえる。
申し訳なさに打ちひしがれていると、北さんのまっすぐな声が届いてきた。
「体調が悪いなら、しっかり言い。
マネ業できそうならやってくれればえぇし、バレーやるならやればえぇ。
俺らは、チームやろ」
あぁ、このひとの言葉は、いつも胸にストンと落ちてくる。
この時俺は、本当の意味でバレー部の仲間と、“チーム”になれた。
そんな気がした。
「ありがとう、ございます………!」
疲れとか、嬉しさとか、痛みとか、その他諸々で涙が止まらない。
でも、なぜかあたたかい。
温かさに包まれながら気づいたら俺は、寝てしまったらしい。
その後、北さんが呼んだ大耳先輩が運んでくれたことを知り、悶絶するのは別の話である。
今回は少し短めですね
最後の部分、北さんがすなりんを運ぶのは流石に無理があると思って変更しました
大耳さんにしたのは私が大耳さん&角名くんの絡みが大好物だからです(((