ある、雪の日の物語。
「あのさ」
え、と私は振り返る。
そこには、君がいた。
「おれさ、実は──」
君はちょっと照れくさそうに斜め下を見てから、言った。
「お前のことが、好きだ」
また夢か。
あの頃の夢を見るのは何回めだろう。
もう、君に会うことはないのに。
6年前。
私には、かけがえのない大好きな人がいたんだ。
でも、もう会うことはないだろう。
君はあの日、遠いところにいってしまったから。
カーテンを開けると、そこには真っ白な世界が待っていた。
そういえば、君が告白してくれた時も、きれいな雪が降ってたね。
「おい」
雪の降る朝、運命は突然にやってきた。
誰?
声のした方を見ると、1人の男の子がいた。
「お前、変わってないな」
男の子はフッと笑った。
その笑い方。
もしかして……と、私は思った。
どこか優しい印象を与える目。すらっとした身長。
そして…その笑い方。
「久しぶり。6年ぶりか?」
ニコッと男の子は笑った。
それで、私は確信がつく。
「本当に?」
思わず問いかけることしかできなかった。
ああ、と、彼は笑った。
「瀬川雪。正真正銘だ」
雪くん……!
「元気だったか?氷花(れか)」
そう言われた途端、私は涙が止まらなくなった。
君には、もう会えないんだと思った。
私は一生、このままで生きていくんだと思った。
「泣くなよ」
そういう君も、涙ぐんでいる。
「雪くん。雪くん」
「なんだよ」
雪くんは優しい瞳で私を見た。
私は笑いかける。
「大好き」
6年間変わらなかった、愛を君に。
「おれもだよ」
彼はそう言って、私を抱きしめた。