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梅雨明けの夏。
『アイス食べたい』
夜十一時過ぎ。
通話越しに聞こえたその一言に、いるまは思わず笑った。
「こんな時間に?」
『急に食べたくなった』
「コンビニ行けば?」
『……一人で行くのやだ』
「子どもか」
『夜だし』
「昼でも一人で行かないじゃん」
『それは……』
言い返せなくなったなつに、いるまは小さくため息をつく。
「十分後」
『え?』
「迎え行く」
数秒の沈黙。
『……まじ?』
「嘘ついてどうすんだ」
『ありがと』
その声は、少しだけ嬉しそうだった。
◇◇◇
「遅い」
「十分ぴったりだろ」
玄関の前で待っていたなつは、軽く頬を膨らませる。
「ほら、行くぞ」
二人並んで夜道を歩く。
昼間はあんなに暑かったのに、夜風は少しだけ涼しい。
虫の鳴き声だけが静かに響いていた。
「昼より歩きやすい」
「だな」
街灯の明かりが、二人の影を長く伸ばしていく。
「夜の散歩、結構好きかも」
「コンビニ行くだけだけどな」
「それでも、」
そう言って笑うなつにつられて、いるまも笑った。
◇◇◇
自動ドアが開く。
「いらっしゃいませー」
冷房の冷たい空気が体を包む。
「生き返る……」
「大げさ」
アイスコーナーの前で二人並んでしゃがみ込む。
「どれにする?」
「これ」
#シクフォニ
クッキー
3,419
りんご
511
クッキー
947
「またチョコ?」
「好きだから」
「毎回それ」
「いるまは?」
「ソーダ」
「子ども」
「お前に言われたくねぇ」
顔を見合わせて吹き出す。
レジを済ませ、店の前に並んで座る。
袋からアイスを取り出した瞬間。
「あ。」
「……」
なつのアイスが、ぽとりと地面へ落ちた。
「……終わった」
呆然と固まるなつ。
「3秒ルール」
「無理だろ」
「……5秒だったっけ?」
「増えてんじゃねぇよw」
本気で落ち込むなつを見て、いるまは笑いを堪えきれなかった。
「笑うなぁ…」
「悪いw」
そう言いながら、自分のソーダアイスを渡す。
「ほら」
「え?」
「やる」
「いいの?」
「そんな顔されたらな」
なつは少し迷ってから受け取った。
「……ありがと」
「その代わり、今度なんか奢れ」
「じゃあ、また今度夜にコンビニ来よう」
「奢る気ないじゃん」
「そのときはアイス落とさない」
「そこじゃねぇ」
また笑い声が夜道に溶ける。
アイスを食べ終え、空になった袋をごみ箱へ捨てる。
「帰るか」
「うん」
歩き出そうとした、その時。
「……寒っ」
アイスを食べたせいか、なつが小さく肩を震わせた。
「ほら」
いるまは自分のパーカーを脱ぐと、
文句を言う暇も与えず、なつの肩へふわりとかけた。
「え、いいって」
「風邪ひく方が面倒」
「でも、」
「返すのは今度でいい」
なつは少しだけ目を丸くして、それからふっと笑った。
「……ありがと」
パーカーからは柔軟剤の香りに混じって、ほんの少しいるまの匂いがした。
それがなんだか安心できて。
なつは袖を少しだけ握りしめる。
「また夜に来ような」
「アイス食べに?」
「うん」
「次は落とすなよ」
「……努力する」
「だから努力じゃなくて…」
「ふふ。」
くだらない会話を交わしながら、二人は夜道を歩く。
静かな住宅街。
街灯の明かり。
遠くで鳴く虫の声。
そして、隣には当たり前のようにいるまがいる。
夜風に笑い声が溶けていく。
夏は、まだ終わらない。
コメント
5件
更新ありがとう! 📢くん優しい笑 寒くないようにさっと服かけてあげてるの優しすぎるっ 📢🍍のお話だいすき✊️
最高だ!てぇてぇ!神だ!やばぁぁ!! めっちゃくちゃ好きです!!!
ひゃあ〜〜読んだ読んだ!!😭💕 夜中に「アイス食べたい」って駄々こねるなつ、かわいすぎん??迎えに来ちゃういるまも優しすぎてしんどい…!!アイス落としたシーンからの「やる」は反則級に胸キュンだよ!!パーカーかけるのもずるいし、夏の夜の空気感がめちゃくちゃエモい…✨ この距離感、尊すぎて溶ける〜〜!!次のコンビニデートも待ってるよ!🌸