パソコンの画面に赤い波形が揺れ始めた。
録音が始まったことを示す小さなランプが、神聖な部屋の空気を一気に張り詰めさせる。
若井は無言で大森の前に膝をついた。
言葉は要らなかった。
ただ、この瞬間にしか録れないものがある。
その思いだけで手を伸ばす。
「……っ」
小さな声が喉から零れる。
触れられた瞬間、大森の身体がわずかに強張った。
その反応さえも、マイクは逃さない。
「はぁ……っ……く……」
掠れた吐息がマイクを通って録音され、モニター上に鋭い波形を刻んでいく。
そのリアルさに、自分の動きすら煽られていくのが分かった。
「……っ、はぁ……」
浅い呼吸が震えとなり、パソコンの画面に刻まれていく。
若井は一切言葉を発さず、ただ大森の身体を丁寧に、そして容赦なく追い詰めていく。
椅子に座った彼は、机の端を掴みながら必死に声を抑えようとする。
だが、吐息は止められなかった。
「……ん、はぁ……っ、あぁ……」
熱に濡れた喉の震えが、真っ直ぐマイクへ吸い込まれていく。
若井の耳に近すぎるその声が、背筋を痺れさせる。
「あぁ、いい……そこ……」
汗が首筋を伝い、シャツに染みを作る。
肩で荒く呼吸するたび、マイクに甘い熱が吸い込まれていく。
「っ……ん、そう……舌……もっと……」
額に汗が滲み、若井はますます無言のまま集中した。
奉仕する指先の震えと、唇に伝わる熱。
大森の反応を確かめるたび、波形は大きく揺れる。
「っ……や……やば……っ……若井……っ」
名前を呼ばれても答えない。
彼の声と吐息をもっと欲しいと願いながら、指先と唇を休めることなく動かした。
やがて大森は前のめりに突っ伏し、肩で荒く息をしていた。
「……っ、んん……あ、っ……!」
喉から絞り出すような声が、どうしても抑えきれずにマイクを震わせる。
「……っ、はぁ…はぁ…は……あっ……!」
絶頂の瞬間、全身を震わせる彼の声が一気に弾け、波形が大きく跳ね上がった。
そのまま乱れた呼吸が数秒間、赤いランプの下で克明に刻まれ続ける。
大森は椅子に崩れ落ちたまま、息を整えることしかできなかった。
「……はぁ……はぁ……っ……」
しばらくそうしてから、ようやく指を動かし、録音を止めた。
「……は、ぁ……っ……やっぱ……全然違うな」
パソコンに記録された波形は、先ほどの一部始終を雄弁に物語っている。
大森はモニターを見つめながら、濡れた前髪をかき上げて笑う。
汗に濡れた髪の下、挑発的に光る瞳。
背徳的な笑みに、俺の胸も熱く焼かれた。
コメント
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話の内容がかなりリアルでめっちゃいい!!ライブでやってたLoneliness思い出すな〜!
最高です!もう、脳内でLonelinessの吐息が響き渡りました(´▽`*)