唇が、水を口移しした時の余韻でかすかに濡れている。
滉斗は、いつのまにか眠っていた。
目を閉じたまま、かすかに動く胸。
熱を帯びた肌に、ほんのりと汗が滲んでいる。
その寝顔を見ていると、触れてはいけないと分かっていても、心が崩れていく。
元貴は、そっと滉斗の頬に手を添えた。
そのまま髪を撫で、唇の端を親指でなぞる。
「…ほんと、ずるいよ……お前」
かすれた声が漏れる。
聞こえるはずもない。
けれど、言わずにはいられなかった。
「そんな無防備な顔して……何も知らずに俺を壊していくくせに……」
もう自分の中のリミッターなんて、とうに外れていた。
元貴はズボンの中へ手を伸ばし、自分の熱を露わにする。
滉斗の体に片腕を回しながら、もう一方の手でゆっくりと自身を扱き上げた。
「……なぁ、滉斗。今、俺がお前の体に触れてること……知らないんだろ?」
低く、掠れた声。
寝息の音に混じって、その囁きは虚しく夜に溶けていく。
「お前がこんなふうに寝てるから……俺、ダメなんだよ。止められない」
滉斗の首筋に唇を押し当て、舌先でゆっくりと味わうように這わせる。
寝ているはずのその体が、小さく反応したような気がして、心臓が跳ねた。
「……感じてるの?無意識でも……俺のこと、受け入れてる?」
自分の手はどんどん速度を増していく。
滉斗の肌を撫でながら、耳元に唇を寄せて、さらに言葉を重ねた。
「お前の中に入ったら…… どんな声、出すのかな。」
「抵抗する?それとも……俺のこと、もっと欲しがる?」
「ねぇ……俺がしてるの、見てよ……」
聞こえない相手に、そんなふうに話しかけるなんて、滑稽だった。
けれど、それでも構わなかった。
どうしても伝えたかった。
この溢れて止まらない欲しさを。
「……好きだよ、滉斗……お前じゃないと、ダメなんだ……」
腰が勝手に震える。
もう限界だった。
目を閉じて、声にならない吐息を押し殺す。
「……っ、滉斗……!」
その名を最後に、手の中に熱が溢れた。
張り詰めた感情が、一気に弾けて崩れ落ちる。
肩で息をしながら、滉斗の体に顔を埋める。
抱きしめる腕に、切なさがにじんだ。
「……バカだな、俺」
何度も繰り返してきた“我慢”の先で、初めて自分を許してしまった夜だった。
それでも——
本当に欲しいのは、こんな形じゃなくて。
目を開けて、俺を見て、「好きだ」と笑ってくれるお前だった。
to be continued…
コメント
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わ……イケナイコトしてる感が強い……