テラーノベル
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約束の夜、元貴が指定したバーに着くと、そこは薄暗くて落ち着いた雰囲気の店だった。
カウンターの奥では客たちが低い声で談笑している。
若井が入ると、既にテーブル席に座っていた元貴が手を上げた。
「お疲れ」
「……お疲れ」
向かいの席に腰を下ろす。
スタッフがドリンクの注文を取りに来ると、元貴は迷わずビールを頼んだ。
若井も同じものを選んだ。
⸻
最初はツアーの裏話や、今後のレコーディングの話で会話が進んだ。
だが、二杯目のビールを半分ほど飲んだところで、元貴がふと切り出した。
「……で、彼女とは上手くいってんの?」
唐突な問いに、若井は一瞬言葉を詰まらせた。
「……うん。まあ、上手くいってるよ」
「そう」
元貴は短く答え、グラスの縁を指先でなぞった。
その沈黙が妙に重い。
やがて、元貴は顔を上げた。
その瞳が真っ直ぐ若井を射抜く。
「……じゃあ、身体は?」
「っ……は?」
「気持ちよくなれてんの?」
低い声が若井の鼓膜を揺らした。
意味を理解した瞬間、心臓が跳ねる。
「……なに言ってんだよ」
動揺を隠そうと、グラスに口をつける。
「知ってるよ。お前が感じやすい部分」
その言葉が耳に残る。
ビールの苦味が喉を通らなかった。
元貴の視線がテーブルの下へと移る。
次の瞬間、若井は自分の股間に柔らかな感触を覚えた。
「……っ、やめろよ……っ」
靴を脱いだ元貴の足が、若井の下腹部を押し撫でている。
人目のあるバーで。
羞恥と恐怖、そして抗えない快感が若井の体を支配していく。
顔が熱くなる。下を向いた若井に、元貴が意地悪な声をかけた。
「顔、真っ赤だよ? 酔った?」
若井は答えられなかった。
鼓動が速くなり、息が乱れていく。
その瞬間、足の感触がふっと離れた。
そして元貴は若井の片手を取り、指先をそっと包み込む。
「……舌でされてんの? こんな風に」
元貴の舌が、若井の指先をいやらしく這った。
その視線は一瞬たりとも外れない。
「っ……は、ぁ……」
吐息が漏れる。
その瞬間、舌が離れた。
「……はい、終わり」
元貴がにやりと笑った。
「……続き、彼女にしてもらいなよ」
そう言い残し、元貴は若井を置いてバーを出て行った。
残された若井は、どうしようもない苛立ちと、身体の奥に残る熱を抱えたまま拳を強く握りしめた。
コメント
4件
大森くんまだ諦めてない感この後どうなっちゃうんだろ(* ॑꒳ ॑*)
んふふ(←怖) やらしいねぇomrさん…😎