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朝。
差し込む光で、うっすら意識が浮上する。
「……ん……」
重いまぶたをなんとか開けた ジュンは——
「おはよう、ジュンくん」
すぐ目の前で微笑む 日和と視線が合う。
「…………は?」
距離が近い。
というか——
(同じベッド……?)
思考が一瞬で真っ白になる。
「な、なんで……おひいさん……?」
「なんでって、ひどいね」
くすっと笑う日和。
「昨日のこと、覚えてないの?」
「……昨日……?」
必死に記憶を辿る。
巽先輩と飲んで——そのあと、迎えに来てもらって——
(……そこからが、ねぇ……)
綺麗に抜け落ちている。
「……すんません、全然……」
正直に言うと、日和が少しだけ目を細める。
「ほんとに?」
そのまま、ゆっくり距離が近づく。
「……っ、おひいさん……?」
耳元に、息がかかる。
「……あんなに可愛かったのに、覚えてないの?」
低く囁かれて、思考が止まる。
「は……!? な、何言って——」
否定しようとした瞬間、
日和の指先が、耳のふちをなぞる。
「っ、ぁ……!」
びくっと体が反応する。
「ほら」
くすっと笑う声。
「体は覚えてるみたいだね」
「……っ、ちが……!」
否定しきれない。
さっきの感覚が、妙に“知ってる”感じで。
「ジュンくん、昨日も同じところで反応してたね」
楽しそうに、でも少しだけ意地悪に。
もう一度、同じように触れられる。
「……んっ……」
思わず声が漏れる。
「ほらね」
「……っ、やめ……」
言葉とは裏腹に、体は素直に反応してしまう。
(なんだこれ……)
頭では初めてのはずなのに、感覚だけが先に理解してる。
「まだ思い出せない?」
今度は、少しだけ近い距離で。
「昨日はもっと——」
言いかけて、わざと止める。
「……続き、試してみる?」
「はぁ!?」
焦るジュンをよそに、また距離が詰まる。
触れるか触れないかの距離で止められて、
そのまま、ゆっくりと唇が重なる。
「……っ」
一瞬で、呼吸が乱れる。
(……これ……)
頭が、じわっと熱くなる。
同時に——断片的な感覚がよみがえる。
玄関。近い距離。呼吸。触れ方。
「……っ、これ……」
「思い出してきた?」
少し離れて、楽しそうに覗き込む日和。
「……っ、おひいさん……昨日……」
「うん?」
「……ほんとに……?」
最後まで言えない。
でも、その反応で十分らしくて。
「さあ、どうだろうね」
にこっと笑う。
「全部思い出したら、教えてあげるね!」
「……はぁ!?」
完全に遊ばれてる。
でも——
耳に残る感触と、さっきのキスの余韻が、やけにリアルで。
(……絶対、なんかあっただろ……)
顔が一気に熱くなる。
「ジュンくん、顔が赤いね」
「うるせぇっすよぉ……!」
笑われながらも、もう目を逸らせない。
「ほら、ジュンくん」
もう一度、少しだけ近づいて。
「ちゃんと思い出せるまで、付き合ってあげるね」
逃がす気なんて、最初からないみたいに。
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