テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「コト、平気か?」
最後までちゃんと出来たという安心感からか、私はヒロが私の中、薄い膜越しに達した気配を感じたと同時に意識を手放してしまって。
時間的にはほんの数十秒程度だったようだけれど、急に気絶した私に、ヒロは物凄く驚いたみたい。
そりゃあそうだよね。
私がヒロの立場でも慌てるもの。
「ごめっ、……なさ」
驚かせてごめんねってちゃんと謝りたいのに、喘ぎ過ぎた喉は声を掠れさせて、うまく言葉がつむげなかった。
「ごめんな、俺が調子に乗ってコトに無理させたから」
ヒロが、私を抱きしめる腕が震えている気がして、私は慌てて彼の腕の中で身じろぐと、ヒロを見上げた。
「そんな申し訳なさそ、な顔しなぃ、で? ――私が!! 無理、したかった、んだもん! ヒロと……ちゃ、んと初め、てを経験し、たくて……た、くさんたくさ、ん頑、張りたかった、の!」
出にくい声を何とか振り絞って、ヒロの腕をギュッと握ると、
「私、後悔、してない、よ? ――ヒロは……してる、の?」
そう言ってヒロの顔を睨むようにじっと見上げる。
ヒロは一瞬怒ったような顔をしてそんな私を見つめ返すと、「好きな女を抱いたこと、後悔するわけねぇだろっ」って抱きしめてくれた。
そこでお互いまだ裸のままだったのに気がついて、顔を見合わせてから、にわかに恥ずかしくなる。
「やべーな。このままだとまたしたくなる」
ボソッとこぼすなり、ヒロが私に肌掛け布団を被せてくれる。
その際、私のそばのシーツをふと見て、何でもないみたいに「明日……。コインランドリー、空いてっかな」とつぶやいて。
ヒロの言葉につられるように視線を落とした私は、シーツをところどころ赤く染めたシミができていることに気が付いて、ぶわりと顔が熱くなった。
これ、きっと今座っているお尻の下にも――。
「み、見ちゃ、ダメっ……」
被せられた布団をバサリと広げて、ベッド全体を覆い隠すようにしてその中で丸くなったら、ヒロが
「コト、シャワー、先に浴びてくる?」
って、布団からちょっぴり出ている私の頭をふんわり撫でてきた。
敢えて、破瓜の出血のことには触れずにいてくれるのを有難く思いながら、私は少し考えて「ヒロが先に」って布団の中から答える。
「分かった」
素直に従ってくれるヒロに感謝しつつ。
――よし! ヒロがシャワーを浴びている間に汚れたシーツを剥がして洗濯機に放り込んで……それからそれから。
と布団の中で頭をフル回転させているのは内緒。
先日洗ったばかりのシーツだけれど、まさかこんなことになるとは思っていなかった。
#極道
鷹槻れん

12,146
#シングルマザー
水羽凛
183
月詠 涼
696
鷹槻れん

32,346
――やっぱり代えのシーツ、買わなきゃ。
血は結構落ちにくいし、本当は汚れた箇所を丁寧にもみ洗いした方がいいと思う。
でも、さすがに今はそんな悠長なこと言っていられそうにない。
だって……。きっとヒロは気付いているけれど……なるべくなら彼に見られないようこっそり処理しちゃいたいんだもん。
ヒロが脱衣所に引っ込んだ気配にベッドから急いで降りようとして――。
「ぁ、えっ……?」
肌掛け布団にくるまったまま床に足を下ろして立ち上がったら、思いのほか全身に力が入らなくてふらりとよろめいた。
下腹部にまだ何かが挟まっているような違和感に、私、さっきまでヒロをここに受け入れて……って思い出して一人その場で転げ回りそうなくらい恥ずかしくなる。
ふと視線を下ろしたら、胸の膨らみにポツンと数カ所、仄紅にキスマークが刻まれていて。
ヒロが私のことを〝俺のだ〟って主張してくれているみたいに思えて、照れの中じんわりと身体が幸せな温かさに包まれた。
とりあえず、布団にくるまったまま汚れたシーツをいそいそと剥がして脱衣所に向かうと、
「ヒロ、タオル、出しておくね」
さもタオルを用意しに来ました!みたいな体でバスルームのヒロに声を掛けながら今しがた外したばかりのシーツを洗濯機に放り込んだ。
そうしてふと視線を上げて――。
「――ッ!!」
曇りガラス越し、薄ぼんやりとヒロの裸体らしきシルエットが目に入って真っ赤になる。
お風呂の扉は磨りガラス仕様になっているから、双方ともにぼんやりとお互いの姿形が見える程度だけど、裸のヒロが扉一枚隔てた向こうにいるんだと思ったら凄くドキドキして。
――私を見下ろすヒロ、男らしくてカッコよかったな。
さっき、大好きな彼と恥ずかしいことをたくさん経験したんだという記憶と相まって、彼の逞しい二の腕や、私を切なく呼ぶ甘い声までもが脳裏に蘇ってきた私は、慌てて首を振ってそれらを頭から追い出した。
「あんがとな」
不意にシャワーの水音が止んで、ヒロが私の呼びかけに答える声が返ってきた。
それと同時、扉越しの彼の気配が濃くなった気がして心臓がトクン!と音を立てて跳ねた。
このままここにいたらダメだと思って、洗濯機に洗剤などをセットするのは後にしようって思う。
――自分がシャワーを浴びるときにしたらいいよね。
馬鹿みたいに踊り騒ぐ心臓に言い聞かせるようにそんなことを思いながら、脱衣かごのそばに真新しいバスタオルを出して、逃げるように脱衣所を後にした。
ヒロがお風呂から出てきたとき、私、ちゃんと彼と向き合えるかな。
ヒロのことを考えただけで、何とも言えない照れ臭さに包まれる自分に一抹の不安を覚えつつ、ふんわりとした幸せな気持ちとともにそんなことを思った。
***
ヒロと入れ替わるように、肌掛け布団と一緒にベッドに置かれていたタオルケットにくるまってお風呂に向かおうとして。
極力普通に歩いたつもりだったけれど、足の間の違和感は未だ健在中のため動きがぎこちなかったみたい。
ヒロに、
「コト、……えっと……ひ、ひとりで平気か?」
そんな風に声を掛けられて、肩がビクッと跳ねた。
振り向けないままに「だ、だいじょーぶ」と応えたら、不意にタオルケットごと背後からギュッと抱きしめられた。
「ひゃっ」
ヒロ、お風呂上がりはパンツとTシャツは身に付けてくれていたから、平気。
「私の背後のヒロは裸じゃない、裸じゃない、裸じゃないぞ!」と念仏のように心の中で唱えて平常心を保とうと頑張ってみる。
あ! けどどうしよう!
考えてみたら、私のほうがタオルケットの下、まだ全裸で……ほぼ裸でしたっ!
タオルケット、心許なーいっ。
さっきヒロに被せてもらった肌掛け布団のほうを纏っとくべきだったー!
なんてことをグルグルと考えながら、私、予期せぬ事態に頭がショート寸前です。
「ヒロ……。えっと……どっ、どうしちゃった、の、かな?」
かろうじて、しどろもどろになりながらもそう言ったら、ヒロが私を抱きしめたまま言うの。
コメント
2件
可愛いな、コトちゃん♥
鷹槻れんさん、このエピソードめっちゃ良かったです…!コトちゃんの「無理したかったんだもん」って台詞、胸熱すぎます。お互いを想い合ってるのが細かい仕草や会話の節々から伝わってきて、シーツの処理とかタオルケットにくるまるところとか、照れと幸せが混ざった空気感がリアルで惚れました。次が気になります🔥