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渚『ふわぁ……ッ』
朝、二段ベットで一緒に寝ている弟の湊を起こさないように、静かにリビングへ移動する。
大体誰も起きていないけれど、偶に海兄や
碧兄が起きている。 普段家で会わないように気をつけているから、会った時少し気まずい。
渚(俺の事なんて見てないだろうけど、)
小さい頃から病弱な湊に兄たちはかかりきりで、兄から俺に話しかけられたことなんてほとんどない。心なしか兄達から嫌われている気もする。
海『おはよ、渚』
渚『ぁ…、おはよ海兄、』
食卓に着くと、エプロンを着た海兄が少し焦げたトーストを俺の前に置いて、弁当におかずを詰め始める。
渚『いただきます、』
なんだか冷ややかな目線を送られている気がする。焦ってトーストを口に放り込み、自室で学校へ行く準備を進めた。
湊『ふわぁ…ッ、おはよ渚、』
渚『おはよ、』
湊『もう学校行くの、?』
目を擦りながら寝ぼけた口調で話しかけてくる。
渚『うん、』
湊『いってらっしゃい、』
理緒『渚おっはー!』
渚『おはよ、朝から元気だな』
理緒『お前が元気なさすぎなんだよ〜!』
幼稚園から幼馴染の理緒。腐れ縁というべきか、年少から中学一年生までの十年間、ずっと同じクラスだ。
理緒『そうだ!昨日の新刊読んだ!?マジ激アツ!』
渚『小遣い足りなくて買えてなくてさぁ、』
理緒『そうなのか?明日持ってきて貸してやるよ!』
渚『ありがと、借りるわ』
四時間授業を受け、やっと昼休み。俺が通っている中学校は弁当や購買で買った昼食を取るスタイルで、毎日購買へパンを買いに行っている。
女子『夕月くん!弟くん呼んでるよ!』
渚『あー…、ありがと』
教室の手前側のドアの方へ向かうと、窓の外を見つめている湊がいた。湊の肩に手を置いて、話しかけた。
渚『なんの用事?』
湊『お前弁当忘れてただろ?届けにきた』
渚『…俺いつも購買で買ってるから』
湊『弁当いらないの?海にぃが作ったけど』
渚『…いらない、俺戻るから』
特に会釈もせず、俺は理緒がいる窓際の席へ戻った。ちらっと見たら、湊も教室へ戻っていたようだ。
理緒と他愛もない会話をしながら昼食を食べ、そのまま授業を受けて家へ帰った。
渚『ただいま、』
奥の畳の部屋が騒がしい。何かあったのだろうか。自分の部屋へ向かおうとすると、碧兄が焦った様子で話しかけてきた。
碧『あ、渚!湊が熱出してさ、薬買ってきて!』
渚『海兄は?』
碧『湊の看病してる』
渚『…碧兄が行けばいいじゃん、俺用事あるし』
そう言って部屋へカバンを置きに行こうとした。しかし引き止められ、碧兄に鋭い目つきで言われた。
碧『友達より湊優先だろ。お前湊の兄ちゃんだし。』
渚『わかったよ、買ってくる』
俺はカバンから財布を取り出して、ドラッグストアへ向かった。
渚(今日は理緒と遊ぶ約束してたのに。理緒になんて言おう、…)
湊はスマホを持っているけれど、俺は持っていないから、理緒に連絡する手段がない。普段は家の電話を使っているが、今日は公園で遊ぶ予定だったから繋がらないだろう。
渚『さっさと買って遊びに行こ…、』
俺は財布を握りしめて、ドラッグストアへ走った。
コメント
1件
ちぃさん。さん、第3話読ませていただきました! 渚くんの「気づかれないように静かに動く」朝の描写から、もう胸がぎゅっとなりました。兄たちが湊くんにかかりきりで、自分は話しかけられもしない…その距離感がすごくリアルで、渚くんの持つ寂しさがひしひしと伝わってきます。 理緒くんとのやりとりで一瞬ほっとするけど、やっぱり帰宅後の「湊優先だろ」の一言が重くて。自分の予定より弟が優先される日常、悔しいですよね。 碧兄の「お前湊の兄ちゃんだし」の台詞、すごく刺さりました。渚くんの気持ちが痛いほどわかる回でした。続きがすごく気になります!